⑥見やぶられて
見やぶられて
ふっさりとした黄金色のシッポを、これ見よがしにふりながら、キツネのご主人は得意げに言いました。
「さて、これがなにに見えますか? タヌキのご夫婦」
夫とわたしは、思わず顔を見合わせました。
正体を見やぶられていたのです。
先方は、わたしたちがタヌキの夫婦であることなど、とっくにお見通しだったのです。
「ははあ……やっぱり、こういう力は、われわれの方が一枚うわてですな。
さあ、タヌキさん、あなたがたも本来の姿にもどってください。証拠となる、シッポを比べてみようじゃありませんか!」
夫は、観念したようにわたしをうながしました。
くちびるをかみしめながら、わたしは落ち葉を一枚頭にのせて、くるりっと宙返りしました。続いて夫も。なんて古くさいやり方! 着るものはイメージで出すことができるのに、変身するときは、いまだにこんなふうなのです。
またたくうちに、もとの姿に返ったわたしたちを見て、野ギツネ夫婦は、ニヤニヤとうす笑いを浮かべました。
「いかがです? わたしどものシッポとおたくらのシッポ、どっちが稲穂に近いと思われますかね?」
そんなことは、言われずとも一目瞭然。
木もれ日に映える、キツネ夫婦のシッポ。それはまさに、たわわに実った稲穂そのものでした。
ことばをなくしたまま、わたしたちは、その場につったっていました。
「どうです? お稲荷さまは、稲穂のようなシッポを持つキツネこそ、自分たちの使いだと認められたのです。ただし……お稲荷さまに直接お仕えできるのは、白キツネだけなのです。ですから、白キツネにはいつも憧れていましてね。同族であるということは、何よりの誇りですよ。いや、あなた方にも、十分ご理解いただけたのではないでしょうか」
キツネのご主人は、ベラベラとしゃべったあとで、再びつむじ風を巻き起こし、人間の姿にもどりました。
「せっかく、ここまで来たのですから……」
初めて、奥さんが口を開きました。
「あちらの石段を、下っていくと、小さな食堂がありますよ。名物のいなりずしが評判です。稲荷大神さまの大好物だといううわさですから、ぜひ立ち寄ってみたらいかが?」
親切に教えてくれたのですが、その引き締まった目もとは、意地悪く笑っているようでした。
「それはいい。さぞやおなかもすいたことでしょうからな。タヌキのご夫婦。では、これで失礼いたします」
してやったりという顔つきで、野ギツネの夫婦は去って行き、あとにはタヌキのままの、みじめなわたしたちが残されたのでした。




