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⑯大神様の御前に

  大神様の御前に


 ふと気がつくと……。

ほかのキツネたちは、それぞれが、持ってきたいなりずしを、大神さまにお供えしているところでした。


 大神様に差し上げ候。

 ウカノミタマの神様に差し上げ候。


 一列に並んだキツネたちは、口々にそう唱え、うやうやしくいなりずしを供えて、拝礼すると、次のキツネと入れかわっていくのでした。


「さあ、タヌキさんもいっしょに、お供えに行きましょう」

白キツネの娘が、わたしの手をとり、誘ってくれましたが、わたしは強く首をよこにふりました。

「わたしは……わたしは、とてもお供えできそうにないわ」

 お重箱をもとのように包み直し、白キツネの娘と向かいあいました。

「わたしは、このいなりずしをお供えする資格なんてないのよ。大神さまに対して、とっても、とっても失礼だと思うから。今度、はずかしくないものを作り直してくる。笑顔で、いっぱい作り直してくる」


まさに、そう言い終えたとき。


 ザワザワッと境内の木々が大きくうねり、何百というろうそくの炎が、いっせいに消えそうになりました。

―大神様の御前じゃー

 ひときわ年をとった白キツネが、仲間たちを制するように、しわがれた声をあげました。

「長老さま!」

 ひと言さけび、、娘はその場にひれふしました。

 お参りにきていたキツネたちもみんな、いっせいにひれふしました。


 すぐとなりで、野ギツネの夫婦が小声でささやきあっているのが聞こえてきました。

「タヌキに、はたして見えるだろうかね」

「見えるものですか。心でしか拝見できないお方なのよ。ワタクシたちだって、まだお目にかかれていないのに……」

 ちらりと、こちらの様子をうかがいながら、夫婦は深々と頭を下げています。

 なんのことやら、よくわかりませんが、とりあえず、キツネたちにならって、わたしもその場にひれふしたのでした。



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