⑭タヌキの作ったいなりずし
タヌキのつくったいなりずし
「ほほう、タヌキのいなりずしというのは、初めてですなあ。じゃあ、ちょっと拝見させていただきましょうかね」
キツネたちを見返す、願ってもないチャンスが、ついにやってきたのです。
わたしは風呂敷づつみをそっとひざに下ろし、ゆっくりとつつみをほどきました。
そんなわたしたちのやりとりに気づいた、まわりのキツネたちが、好奇心いっぱいの目つきで、そろそろと近づいてきます。
キツネたちは、くいいるようにわたしの手もとを見つめていました。
やがて、黒塗りのお重箱があらわれました。
このお重箱も、わたしには自慢の品でした。
母がわたしのお嫁入りに持たせてくれた、大切な宝物なのです。大きく、つややかで、ふたには金と銀で御所車のもようが、描かれているのでした。
あたりから、ほうっというどよめきが、いくつも聞こえてきます。
「まあ……」
キツネの奥さんも、つぶらな目を大きく見開いて、うっとりとしたような、ためいきをもらしました。
びっくりするのは、これからよ。
わたしは、もったいぶって、そうっとそうっとお重箱のふたをとったのでした。
中には、黄金色のこぶりのいなりずしが、行儀よく並べてありました。
ざっと三十個はこしらえたはずです。
どう? わたしのつくったいなりずしは? きれいでしょう?
わたしは得意げに、キツネの夫婦を見やりました。
キツネの夫婦は、じっとわたしのいなりずしを見ていましたが、そのうちに、奥さんがわれに返ったように口を開きました。
「見た目はともかく、なんとなく甘そうじゃありません?」
「ええ。甘いですよ。わたしのいなりずしは、甘めに作りますから」
今度は、ご主人が言いました。
「どれも小さすぎるよ。これじゃあ食べても、腹に入った気がしないだろう」
「いいえ。小さい方が上品で、食べやすいんですよ」
わたしも、負けずに言い返しました。
「稲荷大神さまのお好きといういなりずしは、もっと大ぶりで甘みが少ないのですよ。だから、何個でも食べられるのですけどね」
キツネの夫婦は、かなり挑戦的な態度でした。
タヌキの作ったいなりずしなんて、どうせおいしくないに決まっていると、いかにもそう言いたげな目をしているのがわかりました。




