⑬お稲荷まつり
お稲荷まつり
お稲荷さまの境内は、たくさんのろうそくの光がゆらめいて、あたりをほんのり照らし出していました。
石段を登り終わると、そこにはもうキツネたちが、風呂敷づつみを抱え、仲間同士でにぎやかにおしゃべりをしたり、笑ったりしていました。
知り合いのタヌキはいないかしら。そう思って、あたりを見まわしましたが、そこいらじゅうにいるのは、白キツネと野ギツネばかり。あたりまえのことかもしれません。ここは、キツネのお宮なのですから。
そこへ……。
「あら、またお会いしましたわね」
いきなり声をかけられて、ギョッとしました。
なんと、この前のキツネの夫婦ではありませんか。
奥さんは、淡い紅色の着物を身にまとい、ひきしまった目もとは、キツネのままでも十分チャーミングでした。
ご主人も、へりくだったように言いました。
「これは、これは、タヌキのご夫婦も、ご参加くださるとは光栄です」
けれども、とても本気のことばとは思えません。
きっと、ひとりきりのわたしを、からかっているにちがいないのです。
「今夜は、わたしひとりで参りました。主人がいなくても、別にかまいませんよね?」
すかさずそうこたえると、キツネの夫婦は意外な顔をしました。
「それはまた、ご苦労さまです。わざわざおひとりで、お供えに来られたのですな。失礼ですが、まさかタヌキさんも、いなりずしが作れるとは思っておりませんでした」
なんですって!
そのことばを聞いたとたん、しおれかかっていた気持ちが、シャキッとよみがえったのです。
「作れますとも! なんならお見せしましょうか」
わたしは、垂れた目を思い切り見開き、キツネの夫婦に対して、きっぱりとそう言いました。




