第3話 現状
早くも俺の赤ちゃん生活が始まって早くも2ヶ月がたった。その間に起こったことを話そう。
まず、育てる予定だったヴァンへルミア大陸共通語はなんとかレベル1まで上がった。レベル1では簡単な単語が理解出来るだけだった。
具体的に言うと『食べる』『替える』とか簡単な動詞位だ。名詞関係はほぼ理解出来ないと言ってもいいだろう。
それでも、オシメの交換や、ご飯のタイミングが分かる様になっただけでも十分な進歩だ。
……今までは急にオシメテロが行われて、毎回死にたくなってたからな(ーー;)
まあ、十分な進歩はあった訳だ。
まだ、次のレベルになる気配は無いが地道に続けて行こう。
最近は寝物語的な物?――まだ言葉がわからないから確かじゃないが――も聞かせてくれるようになってきたから上がるのも近いのではないかと密かに期待している。
あと、前回サポート妖精使えないとか言ってたけど……嘘!あれ嘘!めっちゃ有能でした。アイシャ使えないとか思ってごめんなさい。
何があったかというと、俺以外誰からも見えないという特性を利用してこの近辺を偵察してくれました。これによって自分がどう言う立ち位置なのかが若干理解出来ました。
まず、俺はこの家の一人息子らしい。夜になっても俺以外子供がいなかったから確定でいいだろう。
また、この世界は1日は20時間、1月が25日で1年は8ヶ月で1年は200日で4000時間で一周するらしい。
この暦は地味に重大情報だった。この情報があったからこそ、転生して来てから1月たったことがわかったんだからな。
因みにこの情報は基礎情報だったらしく、普通にアイシャこ教えてくれた。
次にこの家だが、そこまで大きくないことが分かった。
自分の体が赤ちゃんサイズだったから分かり辛かったが、大体3ldkの平屋の一軒家で周囲の家と同じ様な大きさの極めて平均的な一軒家みたいだ。
そして、この場所はどうやら農村らしく、朝になるとパピーが仕事に行く。
また、マミーも共働きらしく、パピーには遅れるものの、家事を粗方済ませると働きに出る。
その間俺はどうしてるかって?放ったらかしですよー当たり前じゃないですか!一応、安全確認の意味も込めて数時間に一度はマミーが確認しに来ますが、基本放ったらかしです。
中世の子育ての凄まじさを感じましたねーあれは。
まあ、そんなパピーマミーですが顔は普通で特別綺麗でも不細工でもない。本当に極普通の夫婦って事は分かった。
まあ、年齢が18と17って事を除けばだが。
……でも現代の常識から考えると年齢ご若すぎる様な気はするが、この時代的に考えるとそこまで不思議では無いのかな?まあ、現代でもその位ででき婚するやつはいるが……
因みに、アイシャ曰く「この家はまあ当たりの部類ですね」らしい、何故ならば普通に生きられるからのようだ。
どうやら、この世界には奴隷制が普通にまだ残っているらしく、奴隷の子供は自動的に奴隷身分になるらしい。確かにそれを考えると十分に当たりだろう。
……って言うか自動的に奴隷って救いがなさすぎだろう!?
まあ、俺の日常は朝マミーとパピーが仕事に行くのを見送り、アイシャが偵察に行くのを見送り、マミーが俺のご飯の為に帰って来るのを待ち、帰ってきたら出来るだけコミュニケーションを取り、また仕事に行くのを見送り、夜出来るだけコミュニケーションを取り、アイシャからの報告を聞く。
その繰り返しだ。
そして、丁度2カ月が経った今日俺の我慢の限界が訪れた。日中の一人の時間に耐えられなくなったのだ。
さっきまでの言い方だと順調そうだった?確かに順調だったさ。俺以外の活動はな!さっきまでの情報は全部アイシャからの情報だ。
つまり、親がいない間俺はずっとぼーっとしてなきゃいけないんだよ!
さすがにもう疲れた。アイシャに話し相手になって貰うのも考えた……でも、そうすると情報収集が滞るんだよ!
さて、どうするか。早急に何か出来ることを見つけないと暇すぎて発狂する。
他のスキルはどうしたかって?勿論試しましたとも。何も起きなかったけどな!
そんなことを考えながら手足をバタつかせていると。マミーが部屋に入ってきた。そして、俺が泣いているのかと勘違いしたのか、俺を抱っこしあやし始めた。
違うんだよマミー。別に泣いてる訳ではないんだ辛いだけなんだよ。何時も何時も泣いてると思ったらあやして貰って悪いねいつか恩返しするから。
そんな事を考えている俺に正に天啓が降った。
そうか!畑に付いて行けばいいんだ!
なんでそんな簡単なことに今まで気づかなかったのだろう。要は、俺が余り泣かない良い子ちゃんだから、マミーとパピーは安心して家に置いている訳だ。
なら、二人が居なくなるときに大泣きすればどうなるか!そう!連れて行かざる負えなくなる!
いやー俺天才だなー!そうすれば、少なくとも何かしらの言葉は聴こえて来るし、今よりは暇じゃないだろう。
そうと決まれば、明日決行だ。
翌朝いつも通り夜明けとともに起きた我が一家はいつも通り朝食を食べた。
因みに、俺はまだおっぱいだよ。他意はない。
そして、パピーが先に出て、マミーが朝食の後片付けをし、朝の家事を終えて仕事に出ようとしていた時、俺は作戦を実行した。
「おぎゃあおぎゃああぎゃあああああああ」
もはや泣き声っていうか叫び声だったかもしれない。そんな俺の絶叫にマミーはかなり驚いたようだった。
今まではトイレとご飯の時マミーを呼ぶために少し泣くぐらいだったからな。しかもこっちに来たらすぐ泣きやんだし。
そんな子がいきなり絶叫レベルで泣き出したんだからそりゃ驚くだろう。
マミーは急いでこっちに来て俺をあやし始めた。
それを感じた俺は一度泣き止む。
そんな俺の様子にホッとしたマミーは俺をそうっとベビーベッドに戻そうとする。
しかし、そうは問屋が卸さない。
ベッドに降ろされた瞬間、俺は音波攻撃を繰り出した。
「おぎゃあおぎゃあおっきゃああああああ」
赤ちゃんってぎゃあぎゃあ泣くだけじゃなくて、偶に飛んでも無く高い声で超音波攻撃する時あるよな。他の泣き声は耐えられてもあれだけは耐えられないと思うんだ。
マミーもそうだったのか急いで俺をあやし始める。
そして、俺はまた泣き止んだ。
そしてマミーは又もやベッドに俺を寝かす事に果敢にもチャレンジした。
だが、その試みはまたしても不意に終わる。
そう!また泣き出したのだ!
そして、泣いてあやして泣いてあやしてを3回程繰り返すとマミーは観念したのか抱っこ紐を取り出して俺を背中に背負った。
俺が勝利した瞬間だった。
マミーは慣れない手付きで俺を背負うと、家から出た。
そして、ドアから一歩外に出るとそこには現代の日本では見ることが出来ない中世ヨーロッパの長閑な農村の風景が広がっていた。
「うーきゃあー」
おっと余りの光景に思わずかんたんの声を上げてしまったぜ。
しかし、外は空気がいい。しかも両親以外にも人がいる。
やはり、村社会だからか皆顔見知りらしく、誰かに会えば必ず挨拶すり。これは、スキルレベル上げが捗りますわー。
畑に着くと既にパピーが働いていた。
「$@^&$$#ジント@$^&$#@&来た?」
おっ、何か俺に関して話してるぞ
「@%&#^%#ジント@$##&#@&泣く#%&&来た」
多分だが『何でジント連れて来たんだ?』『珍しく大泣きしちゃって連れてきたのよ』的な話をしてる気がする!
その後もなんだかんだ話合って、結局俺は二人が交代で背負いながら面倒見ることになった様だ。
やはり、子供がいるってのは普段と違うのか二人共度々俺に話しかけながら仕事している。
やはり俺の考えは間違っていなかった!
この調子でレベル上げ頑張るぞ。俺の前途は明るいな。
しかし、この時の俺は未来の明るい展望しか見えていなかった。
この先には悲劇が待っていると言うのに。