テンタクルス!
今回は少し短くなってしまいました。すみません。
タコっていいですよね。
「よしっ!続き始めるよ!」
ゴーグルを額にかけ、白衣をきた女性が張り切りながら話し始める。
「…えっと、どこまで話したっけ?
「札が四つのクラスに分かれてるとか、穂村さんの専門が生物学ということとかです」
「そーだったね。わすれてた」
「穂村さん忘れすぎっすよ」
「ごめんね。じゃ、『印』のことから始めるね。はいこれ見て。この札の表にはその動物の絵が書かれているんだけど、裏は何があるか」
「え!白紙じゃないんすか!?」
「湊ちゃん残念!裏には一番大事な『印』がありまーす!すごいっしょ、ってあれ?反応薄くない?」
「だって白黒で漢字とよくわかんない絵が書かれているだけですもん」
「君、わかってないねぇ。この印があるから札が使えんの。そしてわけわかんない絵じゃないから、よく見て。」
穂村が差し出した「太刀魚」の札の裏を見るとそこには、太刀魚の漢字の周りに刀と刀のような魚が放射状に描かれている。
「この印はその生き物をモチーフにした絵がかかれていて、札によって一つ一つ違うんだよ。すごくない?」
「…すごいです」
「でしょ!彗君ならわかってくれると思ったんだよ!」
「穂村さん!私もわかります!」
「おぉ君もわかってくれるの〜?お姉さん泣いちゃうよ!」
「…次、行きません?」
「あ、そだね。まだ続きあるし。って、これが最後なんだけど、最後はミステリーなお話…」
穂村はそういうと会議室の電気を消しに行く。
パチッ!
電気が消えて暗くなった部屋の中で穂村はもともと準備してあったのか懐中電灯を取り出し、それを顔の下から当てる。暗闇に浮かぶ穂村の顔はこちらを怖がらそうとしているのか、はたまた彼女自身が楽しいからなのか笑みを浮かべていた。
「君達さぁ…今日話を聞いて、なんでこんなオーバーテクノロジーなものがあるんだろうって思わなかった?…」
「そういえばそうっすね!」
湊はこういう類が平気なのか変わらず答える。
「じつはさぁ…この獣札はさぁ江戸時代に突如、文献や書物に現れているんだよ。不思議じゃない?…それに、今でもオーバーテクノロジーな物を江戸時代に作れるわけないよね。そうだよね。もしかしたら江戸時代にUFOがきて高度な技術を授けたとか、フフフフフフ…」
穂村の薄気味悪い笑い声が部屋に響く。穂村は髪が長いため、まるであの『きっと来る白い服の怨霊』みたいだ。
「…それで、それでですよ!私達技術班は日夜、研究に研究を重ねているわけですよ!」
「…お、おぉ!」
「でも全然成果が出ないんだよね、どうしようこのままじゃクビになっちゃう!そうしたら私、生きてけないよー!やばい、ガチでヤバい!今すぐにでも成果を出さなくちゃ!あ、君達、そういうことだから。あとは解散!」
穂村はそういうと資料を抱えて急いで出て行ってしまった。
「…どうします?」
「さぁ…」
困り果てている二人のもとへ穂村と入れ替わりで鳥籠が入ってくる。
「…どうだ、説明会は?」
「説明会は良かったんですけど、穂村さん大丈夫っすか?」
「あぁ。あいつのことは気にしなくていい。あいつ、新人への説明会が終わるといつもああいう風になってるからな」
「そうなんすか。で、課長さんはなんでここに?」
「そろそろ終わる頃だろうと思ってな。ほらついてこい」
鳥籠の後ろについて、会議室を後にする。ポケットに手を突っ込んで歩く鳥籠は少し行ったところで止まった。後ろをついてきていた二人は鳥籠の背中にぶつかりそうになる。
鳥籠は今まで手を突っ込んでいたポケットからカードキーを出すと、それを使って大きな鉄の扉の鍵を開けた。
その瞬間、ヴィィーン!!と、音を立てて鉄の扉が開いた。その光景だけでも十分驚いたが、その奥に広がっていた光景の方がすごかった。説明会の時に穂村が持っていた札の入った金属のフレームのガラスケースが棚一面に広がっていたのだ。しかもその棚が何個も。
「ここが獣札保管室だ。ここには今まで回収した獣札が保管してある。相手が札を使ってくるなら、こっちも札を使って対処する。そのために、お前らにはどれか一つ札を携帯してもらう。だが、Bクラスまでだ」
「やったー!どれがいいっすかね!」
湊ははしゃぎながら奥の方へ行ってしまった。
「そうだ、お前持ってきたかあれ」
「あ、はい。持ってきました」
彗は模造刀を取り出す。
「お前、こんなんでいいのか?でかくて携帯しにくいぞ、これ」
「いいんです。それに獣札を貼り付けるには、愛着のあるものではないといけないんですよね?これ、剣道の県大会に行ったお祝いで祖父から買ってもらった物なんです」
「そうか。ま、本人がいいならいいんだが。ところで湊どこいった?」
彗と鳥籠が少し待っていると湊が帰ってきた。三つほどガラスケースを抱えて帰ってきた湊はどれにしようか迷っていたが、どうにか決めたようだった。
「先に大槻、お前からするぞ。まず何を溶媒にするかだ。何にするんだ」
「自分はですね、やっぱ拳銃っすね。かっこいいですもん」
「大丈夫か?対策課は常時、拳銃を携帯できるが、お前拳銃使えんのか?」
「はい!にがてっす!」
「…別のにしろ。特殊警棒とか対策課技術班特製の射撃精度重視の模造拳銃とか色々あんだろ」
「模造拳銃あるんすか?じゃ、自分そっちにします」
「…で、貼る札は?」
「なんか鳥っぽいんすけどよくわかんないんすよね。でも、かっこいいからいっか、みたいな感じで」
「これは鶚だな。あとは技術班にやらせておくから戻ってもいいぞ。あと水上、お前のも」
「お願いします」
「大槻、残りの札返しておけよ」
「りょうかいです!」
彗と湊は鳥籠に札と貼る物を渡し対策課に戻った。そのあとは仕事の確認をしたり単純な仕事をしたりした。初日から濃厚な日程だったがどれも楽しかった。そんなこんなで警察官初日は終わりを告げたのだった。
ちょうど彗達が警視庁を出た頃、そことは別の区内で宝石店を見つめる人影があった。その目は人の目とは違う。人のものよりも大きかったり隠れていたりさまざまだ。
「そろそろ時間だ。準備はいいな」
赤い頭の男らしき人物が確認すると残りの三人がアイコンタクトで返す。月の光が全く当たらないビルとビルの間に怪しい目が光る。
そして彼らは実行に移す。ビルとビルの間を走り抜けるとその姿が月の光に照らされあらわになる。人のものよりも大きな目は彼らが被っている被り物の目だった。先頭を走る人影が被っていたのは回転寿司などの解体ショーでよく見るマグロだ。
よく見ると他の者達もクラゲやサザエの被り物をかぶっている。先程赤い頭だと思っていたのはタコの被り物だ。
先頭を走るマグロがそのままの勢いで宝石店の強化ガラスをタックルで突き破った。ガラスが割れたせいなのか店内に警報が鳴り響き、その警報を聞きつけ店の奥から警備員が出てくる。
「お前たちここで何をしている!」
しかし警備員が叫んだのもつかの間、警備員の首に激痛が走り、同時に体が痺れ始める。警備員が激痛の走った首の方を見るとそこにはひらひらとした細長いものがくっついている。
「アンタは数時間は動けないから。まあ、せいぜい私らが宝石持ってくのそこで指咥えてみてな」
その女性らしき声の人物が被っているクラゲの被り物から触手が伸び、それが警備員の首に激痛を与えていたのだ。
「おい、早くしろ!他の警備員があと五分で来る。それまでに金目のもん、持ってにげるぞ」
「タコ」はそういうと被り物の触手を使い、何個もの宝石の入ったガラスケースの鍵を開ける。中には指輪、ネックレス、大きなダイヤのはまったティアラまであった。それらをあらかた持ってきていた袋に詰めた四人は入ってきた割れ目から出て行く。
「結構値打ちのありそうなもんがあったな」
「そうね。全ては『風間さん』のためよ」
「そうだ『風間』のためだ。そして貧困に苦しむ人々を解放するため」
魚達は闇夜をかける。全ては苦しむ人々を救うためと信じて。
前回、次回はもう少し長く書くといいましたが、短くなってしまいすみません。
次回こそ、次回こそは長く書きます!