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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ファルファ、スライムに戻る編

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97 魔法使いスライム

 しばらくすると、がちゃりとドアが開き、「人」が出てきた。

 ブロンドの髪をきれいに編み上げた十五歳ぐらいの美少女だ。

「あら? どちら様でしょうか? ここに人が来るのはすごく珍しいんですが」

 少女にそう言われて私はびっくりした。
 なにせスライムが出てくると思っていたのに、人が出てきたからだ。」

「あの……ここって魔法使いスライムの工房じゃないんでしょうか……?」
 人気がないところだし、ほかの魔法使いが工房を構えていてもおかしくはないが。

「ああ、なるほど、なるほど。混乱させてしまいましたね」
 少女はほがらかに笑った。
「ワタシ、スライムなんです。この姿は変化に関する魔法を使った結果です」

「スライム!?」
 私は目を疑った。当たり前だが、どこにもスライムの要素はない。
 こう思ったのは私だけではないようで、ベルゼブブもライカも狐につままれたような顔をしていた。

「おぬし、わらわたちをたばかっているのではなかろうな……?」
「そんなことはありませんよ。スライムとしてこれまで三百年ほど生きてきましたが、人の姿をしているほうが生活はしやすいので、百五十年ほど前からこの姿をとることにしています」

 三百歳……。ほぼ私とタメなのか……。

「そういや、スライムの寿命って意識したことなかったな……」
 老いたスライムも赤ちゃんのスライムも見たことがないので、さっぱりそういうのがわからない。ファルファとシャルシャはあくまでも精霊だから、また例外だろうし。

「大半のスライムにはまともな知能がないので、生も死もあまりないんですよね。勝手に分裂して増えていきます。そのうち、ごく一部がワタシのように知能を持つんです」

「初耳なことばかりで検証のしようがないけど、基本的にすべて事実だとして信じることにするよ……」
 私たちにウソをつくメリットも何もないと思うし。

「立ち話もなんですし、入りませんか? とはいっても、スライムはほぼ食事をしないので、お茶の用意もないうえに、座る椅子の数すら足りてないんですが」

 私たちはお言葉に甘えて、中に入ることにした。
 ぶっちゃけ、山の中なので、そこそこ寒かったので、室内に入るのはありがたかった。



 椅子はたしかに一つしかなかったので、彼女に座ってもらって、私たちは立っていることにした。部屋自体はいかにも魔法使いの工房といった感じで、書物みたいなものが本棚に並んでいる。

 トイレもダイニングもベッドすらなくて、ただ、本棚とテーブルの部屋があるだけというシンプルな仕様だった。スライムにはすべて不要なのだろう。

 その人は自分のことを「魔法使いスライムです」と名乗った。
 賢スラの時もそうだったけど、スライムは固有名詞を持つという発想がないらしい。

「ワタシのところを訪ねてくる人なんて、ほぼ皆無ですし、魔法使いのスライムなんていないと思うので、それ以上の名前はいらないんですよね」
 言いたいことはわかるけど、こっちとしては名前があるほうがしっくりくるんだよね。

「じゃあ、魔法使いスライムを略して、魔スラ……よし、マースラって呼びます」
 微妙にますっぽいネーミングかもしれないけど、許容範囲だろう。

「わかりました。では、マースラとお呼びください。それで皆さんのご用件は?」
 マースラはファルファのほうに目をやった。
「そのスライムさんと関わりがあることというのは、察しがつきはしますけど」

 そうです。そうなんです。

 私はスライムの精霊であるファルファが、ある日突然スライムになってしまったことを伝えた。

「――というわけで、解決方法を探しているんですが、何かないですか?」
「そうですねえ。そのスライムさんをお貸しいただけますか?」

 ファルファのほうからマースラのそばに寄っていった。
 やはり、ファルファの姿が変わったとはいえ、言葉は理解しているらしい。

 マースラはファルファを抱き上げると、やたらとその体を押した。
 こういうのも、触診と言えばいいのだろうか。

「ふむふむ、なるほど。普通のスライムと比べると弾力性がまったく違いますし、特別なスライムということがすぐわかりますね」
「そんなことわかるものなのですか!?」
 ライカがびっくりしていた。

「はい。わかります。スライムやって長いですからね。端的に言うと、一般的なスライムがレベル1とすると、このスライムはレベル35ぐらいはあるんです。並みの冒険者の方では倒すことは難しいでしょう」

 そう言われると、よくわかる。

 たしかにファルファやシャルシャがスライムと互角の勝負をしているところは想像できないし、実際、楽勝で倒していた。

 そのあとも、マースラはファルファをぷにぷに触っていた。
「ああ、なるほど。なるほど。そうですか、ふんふん、そっちですか。そっちだったか~」

 どっちなんだよとツッコミ入れたくなったが、スライムにしかわからないこともあるんだろう……。

 ベルゼブブが「長く生きておったが、まだまだ世界は未知の事柄で満ちておるの」とあきれたように言った。独特の経験であることは間違いないだろう。

 結局、十五分ほどマースラはファルファを触り、メモらしきものを大きな葉っぱを乾燥したものに書き込んでいった。これが紙の代わりであるらしい。

「答えが出ました」

 マースラがファルファを離すと、こっちにファルファが跳ねてきた。
 私はそれを両手で受け止める。

「教えてください! お願いします!」
 私たちはかしこまる。

「なぜ、このスライムさんが今の姿になったかというと――寝違えですね」

「「寝違え!?」」
 こっち側陣営が声を揃えて、聞き返した。

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