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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ファルファ、スライムに戻る編

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94 魔族の城で迷う

 ベルゼブブはお風呂場から水をしたたらせながらやってきた。

「あのなあ……発音が微妙にずれておるから、出現場所がずれるのじゃ……。それはまだ百歩譲っていいとして、せめて風呂の湯を抜いておけ……。前回と同じ轍を踏ませおって……」

 悪いけど、そういう苦情は後回しだ。

「ベルゼブブ、大変なの! ファルファがスライムになっちゃったの!」
 ベルゼブブの顔色が急変した。

 そして、すぐにスライム状のファルファに抱きついていた。

「あぁ……ファルファよ、こんな変わり果てた姿に……。なんでじゃ、いったい誰がこのようなことを……」
「多分、誰のせいでもないの。朝起きたら、いきなりこうなってたの。元に戻せる方法ってない?」

 ファルファらしきスライムはベルゼブブに抱きつかれながら、うにょうにょ動いていた。意思表示としてどういう意味かは、ちょっとわからない……。

「そんなこと言われてもファルファとシャルシャは例外中の例外の存在じゃからな……。前例があるとも思えぬのじゃよな……」
「それでも、スライムもモンスターなんだから、人間よりはそっちの管轄でしょ? どうにかならない……?」

 シャルシャのほうで、スライム研究者に当たってもらうつもりではいるけど、それこそ前例がないから解決策は提示できないと思う。ベルゼブブが頼みの綱なのだ。

 ベルゼブブはファルファに顔を埋めながら(おそらく)考え事をしていた。呼吸できるのか謎だけど。

「うむ。パンはパン屋というしのう」
 餅は餅屋みたいな諺が出た。

「スライムのことはスライムに聞くとしよう」
「スライムに聞くって、スライムに聞いてわかるの……?」
 近所のスライムを何匹捕まえても何の情報も入らないと思うけど。

「特別なスライムがおるのじゃ。ヴァンゼルド城には、賢いスライムがおる」
「へえ……。さすが魔族の城……。ちなみにそのスライムの名前は?」

「『賢いスライム』が固有名詞じゃ。利口なスライムなどめったにおらんからのう」
「なんか、そんなに頭がいい気がしない名前だね……」

 不安はあるが、ワンチャン行ってみるしかないね。



 私とスライムのファルファはドラゴン形態のライカに乗って、ヴァンゼルド城に向かった。
 まさか、こんなすぐに再訪することになるとは……。

 また迷路みたいな城の中をうねうねと歩く。よく、これで迷子にならないなと思っていたが、途中からベルゼブブの表情が曇ってきた。

「あれ……地下三階にこんな道あったじゃろうか……?」
「あなたも迷うんだね……」
「仕事で使わない通路はわらわでもダメなのじゃ……。じゃが、大丈夫。パン屑を落としながら進んできたので引き返すことだけなら容易じゃ」

 だが、ファルファは床に落ちているパン屑をひとつずつ取り込んで歩いていた。

「ちょっと! ファルファ! 落ちてるもの拾って食べたらダメでしょ! いつからそんなに行儀悪くなったの?」
「アズサ様、落ち着きましょう! 今はマナーのことを言ってる場合ではないです!」

 たしかにそうだ。道に迷っていることのほうが問題だ。
 しかも、地下三階だけあって、道もかなり暗い。肝試しで使えそうな廊下が続いている。

「心配するでない。いくら迷ったとはいえ、城内じゃ。そのうち、どうにかなる」
「それもそうですね。あっ、壁に地図が貼っていますよ」
 ライカがいいものを見つけてくれた。これで目的にもちゃんとたどりつける。

「ああ、その地図は侵入者を撹乱させるためのブラフじゃ。実際の道とは大幅に異なっておる」
「そんなところにダンジョンらしさを出すな!」

 ファルファが疲れたのか、ぴょんと私に飛び乗ってきた。

「何? おんぶしろってこと?」
 ファルファが体を上下に動かすのがわかった。おそらく、うなずいていると考えていいんだろう。

「もし、おんぶで肩がこったらわらわに代われ。ファルファのためなら何時間でも背負ってやるのじゃ」
 ベルゼブブもなかなか頼もしいことを言ってくれた。

 ファルファもその体を動かしているから、喜んでいるんだろう。

「『賢いスライム』は静かな環境を求めて、城でも最下層の部屋におるという。このまま潜っていけばたどりつけるはずじゃ」
「そうだね。モンスターエンカウントがあるわけじゃないし、急がば回れでこつこつ行こうか」

 こうして私たちは再び、ダンジョン攻略を続けた。

 ――二時間後。
 なぜか私たちは地上に出ていた。

「ああ! もう! 下っていると思ったら上りの階段ばかりになったり、ややこしい城じゃのう!」
 ベルゼブブが自分の勤務先にキレていた。
 そうなのだ。この城は上の階に行くために一度下りてまた上に行くというような面倒な道をとらないといけなかった。バカ正直に上や下だけ目指して進むという発想では変なところに出る。

「やっぱり魔族もこの構造、混乱してたんだね……」
 きっと、敵が攻めてきた時を前提にした設計なんだろうけど、迷うほうはかなりイライラしてくる。

「くそう……。まさかヒントをくれる人物のところにすらたどりつけぬとは……。最初の下り階段を間違えておったのかのう……」

 そこに、優雅な雰囲気をまとった子がゆっくりとやってきた。

「あらあら、皆さん、何をお探しですかあ?」
 魔王のペコラだ。

「また、お姉様にお会いできるだなんて、わたくし感激です。ほっぺにあいさつのキスをください」
 何のはばかりもなくキスを要求してくるな。

 私は事の経緯を説明した。

「――だから、『賢いスライム』の居場所を教えてほしいの。教えてくれたら……そうだね、ほっぺにキスぐらいならいいよ」
 私は交換条件を出してみた。

「じゃあ、前払いでお願いできますか?」
 魔王だけあって、強気だな。

「まあ、減るものじゃないし、いっか……」
 私はほっぺに軽くキスをした。

 なぜかライカがうらやましそうな顔をしてる気がしたけど、勘違いだよね?

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