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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ドラゴンのクッキー対決編

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92 クッキーが繁盛しすぎる

「ふあ~、よく寝た」
 翌日、私は快眠した。ただ、両側はそうなっていなかった。

「フラットルテは一睡もできませんでした……」
「我も同じく……」
 二人とも、寝つけなかったらしい。

「もしかして、ベッドが狭かったせいかな……? だとしたら、ごめんね」

「いえ……ご主人様と同じベッドと思うと、落ち着くことができなくて……しかも、ご主人様、いい香りがしますし……」
「我はうれしくて、うれしくて、眠るのがもったいなくて、ずっと起きていました……」

 二人とも、やけにおおげさな反応だなあ。

「こんなのでよかったら、月に一回ぐらいならいいよ」

 正直、フラットルテが加入して、そういうのがしやすくなった。
 これまでだと、ライカと二人で寝るというのは、自分が年頃の女性だし、同性同士とはいえ、もうちょっと切り分けたほうがいいかなという気持ちがあった。
 でも、三人になっちゃうと、逆に女子会感覚になるので抵抗が薄れたのだ。

「ほ、本当ですか! 今の話は本当ですか!」
「フラットルテ、過剰反応だよ……」
 尻尾、やけに振ってるし……。
「そうですよ、あなたはもうちょっと、こう、おしとしやかに…………」
 そう言うライカも顔、真っ赤っかだけどね……。

 やっぱり三人姉妹のお姉さんは妹に慕われるものなのだろうか。

「あとでまた明日の準備をして寝ましょうか……」
「そうだな……。そこはライカに賛成するぞ……」

「あれ? 明日の準備って何?」
 今日の食事当番なら私のはずだし。

「アズサ様、クッキーの人気が出すぎたので、一日置きにしばらく作ることになったんです」
 そこまでか!
「ちなみに明日は町のほうで売るみたいですね。それの仕込みを今日しないと。寝不足ですが、フラットルテは努力しま……ふあ~あ!」
 私も責任を感じて、売り子や作業などを手伝うことにした。

 町にクッキーを持っていった日は村よりもさらに売れた。
 正直、これ、クッキーだけで生活できるぐらいに儲かってはいる。
 ハルカラが「これ、大量生産して、全国で売ればすごいことになりますよ!」といかにも社長らしい発言をしていた。

「ダメですよ。一枚一枚愛を込めて作らないと、いいクッキーにはなりませんから」
「フラットルテ様のクッキーはフラットルテ様しか作れないのだ。職人が変わると味が落ちるからな」
 二人とも一丁前なことを言っていた。

「お師匠様、これ、お二人、変なスイッチ入ってませんか? クッキーのプロみたいな気分になってますよね……?」
「たしかにこの道三十年のベテランみたいな顔つきになってるかも……」

 それから先も、クッキーは順調に各地で売れていった。というか売れすぎた。
 州都ヴィタメイでも出店依頼が来たりして、次第に「ドラゴンっていうとクッキーだよね」と私たちの州では認識されるようになってきた。

 そして、またフラタ村に戻って、クッキーを売っていた日のこと。

「お師匠様、やっぱりおかしなことになってますよ……」
 ハルカラも視線の先には開店前からできている行列がある。

「だよね。いくらなんでも加熱しすぎてるよね……」
 連日の労働のせいで、ドラゴンの二人も少し疲れがたまっている様子だった。けど、作れば作るだけ売れてしまうので、ついつい作ってしまうのだ。

「これ、どっかで止めないと倒れちゃいますよ……。ドラゴンが過労死することはないと思いますけど……」
「そうだね……。いいかげん、どうにかしたほうがいいかも……」

 だが、発売開始からしばらくして、村の空気がおかしなことになった。
 しかも、晴れていたはずの空がすっぽり暗くなる。

「あれ、ぞっとするような悪寒がします……」
 ハルカラがぶるぶるとふるえ出した。

 たしかに何かまがまがしい気配を感じるぞ。

「お姉様、お久しぶりですね」
 その羊の角が生えているような女の子は魔王ペコラだ。
 そのペコラの横で日傘を差す役目をしているのはベルゼブブだ。
 さらにベルゼブブにヴァーニアが日傘を差していて、マトリョーシカ構造になっていた。

「うわっ! なんで、こんなところにまで来たの!?」
「ここに話題のクッキーが売っているとお聞きしまして、食べに来たんです。リヴァイアサンの方に乗って」

 あっ! 空が曇ってると思ったら、リヴァイアサンだ!

「魔王様が移動すると騒動になるからやめてほしいのじゃ……」
「ぶ、無事に終わりますように……」
 ベルゼブブはため息をついていて、ヴァーニアは魔王に同行しているせいか怖がっている。

「ふふふ、ここに並べばいいんですよね。たまには庶民らしく並んでみましょうか」
 そこは行儀よくペコラは最後尾に並んだ。

 ただ、一般の村人でも、魔王の恐ろしさはわかるらしい。

「お、おい……魔族が後ろにいるぞ!」「空に何かあると思ったら、あれ、巨大な魔族じゃないのか!」「伝説のリヴァイアサンだ!」

 村人たちが怯えだした。ベルゼブブに関しては面識ある人もいるかもしれないけど、リヴァイアサンのインパクトが大きいらしい。

 すると、ペコラがにっこりと村人たちに言った。

「ごきげんよう。わたくし、魔王をやっております」

「魔王だ!」「世界の終わりだ!」「もうダメだ!」「高原の魔女様、魔王を倒してください!」

 列に並んでいた人たちが青ざめた顔で逃げていった。
 あっという間に列は十人ぐらいになった。
 逆に言うと、十人ぐらいは逃げないのか。

「あっ、これはすぐに買えそうですね。よかったです」

 ペコラはラッキーだなんて顔をしているが、これ、わかったぞ。
「あなた、村人、ビビらせて、列の前に出るつもりだったでしょ……。リヴァイアサンで来たのもそのせいでしょ……」
「何を言ってるかよくわかりませんねえ、お姉様」

 一方、フラットルテとライカは客が減って、呆然としていた。
「これ、在庫抱えそうだけど、どうしようか、ライカ……」
「困りましたね……」

 その日の在庫はペコラがすべて買い取ったものの、魔王が来るという評判でクッキーを作ってくれという声はだいぶ収まった。

 ペコラが来たのは迷惑だったけど、二人が長時間労働から解放されたので、その点はよしとしよう。
 今後は月に一回ぐらい、村でのんびり売るそうです。
ドラゴン、クッキー対決編はこれでおしまいです!

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