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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ドラゴンのクッキー対決編

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91 クッキー勝負の行方は

 二人は自信があったのか、かなり大量に作っていたようで、売れ行きがいい割には夕方ぐらいまで商品が残っていた。

 そして、ついに日暮れ前。
 最後のお客さんが一袋ずつ購入して、勝負は終わった。

「売り切ったタイミングとしては同じですね」
「どっちみち売上額で勝負しないと意味がないから、そこはどっちでもいい。売り切れた速度だったら、少量しか作ってないほうが有利だからな」

 二人のクッキーはどっちも三百ゴールド。日本円でだいたい三百円だ。値段が一緒なので、売った個数が多いほうが金額でも上回ることになる。

「販売時の不正は何もありやせんでした。このロザリーがたしかに見届けましたぜ」

 ルール上、問題がなかったと審判のロザリーが言ったので、売上額の計算に入る。

「勘定はわたしが一番速いと思いますから、やらせてもらいますね」
 ハルカラが銅貨や銀貨の数を素早く並べて数えていく。このあたりの動きはかなり速い。

 勝負した二人は固唾を呑んでその様子を見守っている。

「我が負けるわけがありません。フラタ村の方にも信頼してもらっていますし」
「別にお前がクッキー職人と認識されてたわけではないだろ。クオリティで、フラットルテ様が圧勝したはずだ」
「ところで、これ、勝ったほうの特典とかってあるんですか?」
「そういえば、とくに決めてなかったな……。今、決めるか……」

 二人は何か話をしはじめた。
 せいぜい、負けたほうがデコピン一回的なことじゃなかろうか。

 ちなみに、お店のそばでは、なぜか村の人が大量に集まってきていた。どっちが勝つか、みんな興味があるらしい。
 中には、「フラットルテがんばれ」とか「ライカちゃん栄光をつかめ」とか書いた旗までできていた。ここの人はお祭りに便乗できそうなものがあると、すぐに便乗するところがあるな……。

「はい、売上額が出ました。売値が一緒なので、個数で発表しますね」
 ハルカラの言葉に二人だけじゃなく、みんなの注目が集まる。

「まず、ライカさん、個数三百個!」
 村人からも「おおっ!」という声が上がる。わたしも驚いた。村の人口、絶対に三百人もいないはずなんだよね。複数個買った人すらけっこういたということだ。
 あと、三百個も用意したライカもすごい。よほど、売れる自信があったんだろう。

「そんなに作ってましたか。我も数を意識してませんでした」
 ライカが真相を告白した。一般的に考えれば作りすぎだもんな。
「フラットルテ様も数なんて考えてなかったな。いいものは売れると思って、信じてやった」
 どっちも結果オーライだったようだ。

「続きまして、フラットルテさん」
 みんなの視線がハルカラに集まる。
 当事者の二人は、さすがに余裕の表情というわけにはいかないようで、祈るような顔をしていた。

 さあ、勝つのはどっちだ?

 なぜか、答える直前、ハルカラが楽しそうに笑った。

「なんと、個数三百個! ということで、両者引き分けですっ!」

 まさかの結末! 観客としては一番面白い展開らしく、「うおおおっ!」と盛り上がっている。
 一方、二人は顔を見合わせていた。

「これはどうしたらいいんですかね……?」
「文字通り、引き分けだ。ひとまず、持ち越しだな……」

 ある意味、勝負がつけられないと言った私の面目躍如と言ってもいいんじゃないかな。
 私は二人の間に割って入り、二人の腕を片方ずつ持ち上げた。

「この勝負、二人とも勝利です! みんな、熱い声援と拍手をお願いします!」
 私の声に合わせて、拍手が巻き起こる。管楽器を用意して吹いてる人までいた。

「そして、この子が新たに高原の家に住むことになったブルードラゴンのフラットルテです! 皆さん、かわいがってあげてくださいねー!」
 さらに歓声が上がる。
「ようこそー!」「フラタ村はいいとこだよー!」なんて声も出た。

「あっ、ご主人様、これはもしかして、こういうことまで計画されてたのですか……?」
 フラットルテもやっと私の計略がわかったらしい。
「そうそう。フラットルテがフラタ村に受け入れてもらうのに、ちょうどよかったでしょ?」

 計画というほどに細かいことは考えてないが、私とフラタ村の関係はまさに三百年にわたって続いているのだ。その信頼関係みたいなものは強い。だから、あてずっぽうでやっても、たいてい上手くいく。

 ちょっとフラットルテは涙ぐんでいた。
「新生活に不安もあったんですけど……やっぱり、ご主人様は偉大です……。偉大すぎます!」
 フラットルテはそのまま私に抱き着いてきた。相手はブルードラゴンだから、かなりの勢いだったけど、こっちもチートなステータスの人間だから、なんとかこらえる。

「ほらほら、泣くことないでしょ」
「ご主人様に一生ついていきます!」

 思ったより、この子、甘えん坊体質だな。これまで肩肘張って生きすぎてきたのかもしれない。

「あなた、それはルール違反ですよ! ずるいですよ!」
 なぜか、ライカが抗議していた。ここはフラットルテが不安だったのは事実だろうし、ライカも先輩として譲ってあげて。
 ただ、気になる言葉ではあった。

「ルール違反ってどういうこと?」
「この勝負に勝ったほうが、アズサ様に十分間、抱き着いていいというものでした」
 何それ、初耳……。無許諾……。
 それと、長い。

 けど、ライカが努力してたのも間違いないわけだしね。



 その夜、私の寝室の人口密度はちょっと高くなった。それと、ベッドも狭くなったけど、しょうがないか。
 私の両側にライカとフラットルテがいるのだ。

「はい、三人仲良く、川の字で寝ようね」
「かわのじって何ですか?」「我もわかりません」
 そういえば、漢字の発想だった。しかも、川の字だと中央が子供で一番小さいからむしろ逆だ。小の字ぐらいの感じだ。

「こうやって一つのベッドで寝たら三人姉妹っぽいでしょ。身長的に、私が長女、フラットルテが次女、ライカが三女、三人とも仲良くすること。いいね?」
「わかりました……」「アズサ様に従います……」
「じゃあ、今日は一緒に寝よう!」

 私は両手に花だなと思いながら、ぐっすり眠った。
 三人姉妹で、カフェでお茶を楽しんでる夢を見ました。

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