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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ドラゴンのクッキー対決編

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90 村でクッキー売り上げ対決

 私が迷っているうちに、二人の顔はやけに自信にあふれたものになっていた。一言で言うと、ドヤ顔だった。

 いよいよ言いづらい……。

 しょうがない、裏技を使うか。

 私はその場に立ち上がった。

「この勝負――――おいしいので二人とも勝ちです!」

 どっちの勝ちにもしづらいから私は全力で逃げる! しょうがない! 私はズルくない! だって、どっちかを傷つけるのわかるし、本当に判断に迷うし!

「アズサ様、それは……」
「ご主人様、ここは無慈悲にやっていただいてけっこうです」
 やっぱり、二人にとったら不満なのか。いやいや、無慈悲にやるわけにはいかないだろ。

「しょうがないじゃん。これ、コンセプトが違うお菓子なんだもん。オムレツとチキンノフライ、どっちがおいしいか決めるようなものだって」

 とはいえ、不満があるのもわかるので、対策は考えていた。

「そこで、このクッキーをフラタ村で売って、その売り上げで決めるっていうのはどうかな?」

 私の提案が予想外だったのか、二人ともきょとんとしている。

「ほら、味の方向性が違うから個人で決めるのは難しいけど、人気なら判断ができるでしょ? それで勝負つけることにしない?」

「ご主人様がそう言うなら、相違ありません」
「我が圧勝して、実力の差を見せつけます!」

 しめしめ、これで私が悪者にならなくてすんだぞ。
 それと、ほかにも、これにはいい意味がある。

 フラットルテが家族に増えたので、フラタ村に紹介する機会がほしかった。
 クッキーを焼いて売れば、ファーストコンタクトとしてはなかなかいいだろう。



 その日の昼、私は村に行って、村長に空き家を使わせてもらう許可を得た。
 ただし、村だと午前に買い物して午後は出歩かない人も多いので、勝負は翌日ということにした。
 売り物用に追加で作る必要もいるし、日程としては妥当だろう。

 ちなみに煎った豆の入った甘いせんべいっぽいクッキーのほうが、ライカのほうだった。もともとは火山のある温泉あたりで作っているもののようだ。じゃあ、マジで日本の炭酸水を入れて焼いたせいべいと同じ由来だ。

 そして翌日。
 フラタ村で「クッキーショップ 魔女の家」がオープンした。
 ただ、店名は一つだけど、クッキーは別会計だ。二人とも、袋に入れたクッキーを売っている。

「はーい、横のクッキーよりはるかにおいしいクッキーだぞ~!」
「横のクッキーと比べるのもバカらしいぐらいおいしいクッキーですよ!」

 二人とも宣伝に相手へのディスを入れるのやめようか。
 これなら私に責任もないので、気を抜いて様子を見ていられた。

 ちなみに審判役として、幽霊のロザリーが売ってるあたりを漂って、ズルがないかどうか確認している。

「本当にどっちもおいしいですけどね。ばりばり、ばりばり」
 ハルカラはどっちのクッキーも一袋ずつ購入していた。

 ファルファとシャルシャもその袋からクッキーを取って、ばりばり食べている。
「ファルファは、おやつが増えてラッキーだよ」
「そうだね。これからもたくさん作ってもらおっか」

 最初は人もまばらだったが、何か話題になることがあるとすぐに飛びつくフラタ村の人なので、じわじわと人だかりができてきた。

「おっ、魔女様の家で今度はクッキー作りかね?」「どれどれ、一つずつ買わせてもらおう」「よし、こちらも一つずつもらおうかな」

 どちらのクッキーも順調に売れているようだ。
 あと、クッキーを売ってる割に男客の数が多い気がする。

「ライカちゃんのほうがかわいいだろ」「新しいあの子のほうがお姉さんぽくていい」「お、やるか?」「お前、そもそもハルカラさん狙いだろ!」

 なるほど、そういうアイドル的な人気もあるのか。うちの家、女子しか住んでないからな。

 でも、同じような空気をまとった女子も列に並んでいた。
「妹にするならライカちゃんでしょ」「あの子はあざとすぎるわ。新しい子ぐらいのほうがいいの」「尻尾なんてあざとさそのものじゃない」「そういう記号はいいの。お姉さんとして、あの尻尾をなでるのがいいんじゃない」

 なんか、世の中にはいろんな性癖の人がいるんだな。
 たしかに二人とも、かわいいので、人気が出ること自体はおかしくない。

 ライカは見た目的には中学生にあがったばかりといった感じの容姿。
 一方、フラットルテはそれよりもうちょっと上の高校と中学の間ぐらいの容姿。
 私から見ると、長女の私を、二人の妹が取り合ってるような感じで、これはこれで悪くない。

「あっ、お師匠様、今、ちょっとだけゲスい顔をしてましたね」
 ハルカラに指摘された。余計なところを見られたかもしれないな……。
「わたしがその月の売り上げを計算する時と同じ顔をしていました」
「あなたもしてるのかよ」

「いやあ、でも、ライカさんとしてもフラットルテさんの加入はいい刺激になっていいんじゃないですかね?」
 ハルカラが二人がクッキーを売っている様子を見ながら言った。
 たしかに、勝負をしているからというのもあるけど、ライカの表情がいつもより生き生きしているようにも見えた。

「あなた、地味によく観察してるね」
「あそこに薬草を練りこんだら、健康にいいおやつとして健康志向の層に売れるなと考えてましたから」
「商売ありきかよ!」

 でも、競い合う相手ができたのは本当にいいことかもしれない。自分との戦いという表現があるが、なかなか人間は自分と戦うことはできない。敵は外側にいたほうがやりやすいのだ。
 さっき、二人を姉妹にたとえてみたけど、あながち間違いでもないのかもしれないな。

 ちなみにクッキーの評判も上々のようだ。

「さっき買ったクッキーがおいしかったから、子供にもう一度買ってきてと言われちゃったよ」「試食してみたけど、これは購入決定だね!」

 私が昨日食べた時点でこれは絶対にいけるとわかってたけどね。

 ちょうど、ハルカラが持っていたクッキーの袋が空になった。
「じゃあ、もう一袋ずつ、並んで購入してきます」
「ハルカラのお姉さん、二袋ずつにして~」
 自分の家だけでけっこう消費されてるな……。

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