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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の土地訪問編

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88 ご主人様からママに昇格?

 私はフラットルテを連れて、空き部屋に入った。
「いったい、何でしょうか? ご主人様? 何かまずい点がありましたか?」

「あのね、あなたは命令をされないと何もやらない、というか、できないってことなの……?」
「それが主従関係というものですので。かつて人間の騎士がブルードラゴンに乗って戦っていた時期もありましたが、その時、ドラゴンが命令なしに動くと、大きな事件になってしまいますから、命令があるまで何もしないのは絶対でした」

 なるほど……。軍人的な発想の服従なのか……。

「じゃあ、あなた、死ねって言われたら死ぬの? それはおかしいでしょ?」
「死ねとおおせがあれば、死にます……。それがブルードラゴンの矜持ですので……」
 困ったぞ。
 自分と異なった価値観と私は今、ぶつかっている。

 私はフラットルテの両肩に手を置いた。
「フラットルテ、あなたは死にたくはないんでしょ?」
「そ、それはそうですが、ブルードラゴンとして守るべきものが……」
「死ねと言われて死ぬのが矜持なの? そんなの、ただ自分を捨ててるだけでしょ? 別にあなたたちが服従することだけを美徳にしてないのは私も知ってるよ」

 どうにかして、フラットルテの考え方をまともなものに修正していかないと。

「はい。ブルードラゴンの価値観は『強者がすべてを得る』というものです。つまり……敗れて角まで触られた敗者は強者に絶対服従して、残りの人生を終えて当然なのです……」
 そう話しているフラットルテの目には涙がにじんでいた。彼女もそんな理不尽をすべて受け入れたわけじゃないのだ。

「親からもこう教わりました……。角を触られるような者はすべてを失って、生きるのがしかるべきであると……。それが弱き者の罰だと……」
「それじゃ、まるで奴隷じゃない」
「古文書には、『竜騎士はブルードラゴンの奴隷を使役して戦う者』と説明してあるものもあるようです」

 おいおい、奴隷なんてほしくないぞ。すでにそれなりに家族で楽しく暮らしてるし。何か足りてないってものもないし。

「わかった。じゃあ、フラットルテ、あなたに一つ命令をします」
「はい、ご主人様……」
「私の命令を待たずに、服従なんて気持ちを捨てて自由に生きなさい」

 フラットルテは何を言われたのかわかってないようだったが、すぐに焦った顔になった。
「ご主人様、それではどう生きたらいいかわからなくなります!」

「なんで? 私の命令は絶対なんでしょ? じゃあ、命令を聞きなさい。あなたは自主的に生きなきゃダメなの。私はアドバイスぐらいはいくらでもするけど、何かを命令するのは好きじゃないの」

 フラットルテは私を涙目で見つめていた。
 どうやら、私の言いたいことは少しは伝わったらしい。
「ご主人様は本当におやさしいんですね……」
「どっちかというと、あなたが苛烈すぎるの。もっと気楽に生きなさい。ある意味、ハルカラを目指すぐらいでちょうどいいんじゃないかな」

「ご主人様、では……お願いをしてよいですか?」
「やれる範囲でやってあげるよ。いったい、何?」
「角と頭をなでてくださいませんか?」

 えっ? また、角なでるの?
「とくに害があることでもないからいっか」
 私はフラットルテを抱き締めながら、角と頭を右手でなでた。
「あぁ……。フラットルテは、御主人様のものですぅ……」
 幸せそうな声を出すフラットルテ。ひとまず一件落着と考えていいのかな。

「フラットルテはずっとブルードラゴンの中で弱味を見せないように生きてきたので……甘えられる人がいなくて……うれしいです……」
 そういえば、この子、襲撃をしてた時、リーダー的役割だったな。
 ペコラと同じように偉い人はマゾが多いっていうのと近いのかもしれない。

「ご主人様、ママ、ママ……」
「えっ? ママ……?」
 たしかに母親は甘えさせてくれる究極の存在だけど……。
 これは推測だけど、親に角をなでられることに関しては服従とかとノーカウントなんだろう。親は子供の頭ぐらいなでるだろうしな。だとすると、角をなでるのは支配者か親だけということになって、母親でも思い出したんじゃないか。

「ママの中、気持ちいいよぅ……。あったかいお部屋で横になってる時みたいだよう……」
 やっぱり記憶が幼少期に戻ってる感じがある。これがいわゆるバブみを感じているというやつなのだろうか。こっちは「ママみ」の状態なので、フラットルテの感情の機微まではわからないけど。

 今更一人、ちょっと変な子が増えても、育てられるかな。
 と、部屋の扉が開いた。入ってきたのはライカだ。ちょっと厳しい顔をしている。

 そして、フラットルテの背中を引っ張った。
「アズサ様のご迷惑になりますので、そろそろ離れましょうか!」
 あっさり引き離されるフラットルテ。ただ、ライカを見ると烈火のごとく、怒り出した。さっきの幼児退行は消えうせたらしい。

「なんで邪魔をする! どこまでもレッドドラゴンはつまらぬことばかりするな!」
「あなたが変なことをしているので、静止したまでです!」
「やはり、お前とはどこかで決着をつけないといけないようだな! 決闘を申しこむ!」

 魔王のところで誓ったことはいったい何だったんだ! もう戦争状態に戻るの!?

「ダメだよ、二人とも! 魔王の顔に泥を塗ったら、大変なことになるから!」
「ご主人様、戦争状態と認識されないような戦いなら問題ありません」
「アズサ様、さようです。種目を安全なものにすれば大丈夫かと」

 ほっとはしたが、じゃあ、いったい何をするつもりなんだろう?

「ご、ご主人様によくご奉仕できたほうが勝ちというのはどうだ……?」
 何だ、その種目!

「わ、わかりました……。それでよいでしょう……」
 しかも、ライカも受け入れてるし!

「ご、ご主人様……肩こってませんか……?」
「アズサ様、我が背中をおもみいたします……」

「いや、別にどっちも大丈夫だから!」

 私はその部屋から出た。そんな並々ならぬ覚悟でこられると、かえって肩がこるよ!

「高原の家に着いたら、料理対決ですよ!」
「よし……ご主人様がおいしいと思えるスウィーツを作って見せるからな!」

 また、家が騒がしくなりそうだなあ……。
魔族の土地編はこれにておしまいです。また、次回から新展開になりますが、今後とも、スライム倒して300年をよろしくお願いいたします!

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