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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の土地訪問編

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87 妹リヴァイアサンの運転

 というわけで、私たちの魔族の城、ヴァンゼルド城巡りは終わった。
 現在、またリヴァイアサンに乗って、帰宅中だ。

 食事用のスペースでくつろいでいると、魔族が入ってきた。

「お帰りのアテンダントをつとめさせていただきます。ファートラです。往路は妹のヴァーニアがいろいろとご迷惑をおかけいたしました」

 そう、この姉妹は交互に巨体のリヴァイアサンの姿になって、観光バスみたいなことをしているのだ。添乗員役は運転? をしていないほうがつとめるわけだ。

「いえいえ、ヴァーニアも頑張っていたと思うので、気にしないで」
「本当に大丈夫でしたか? 私から見るとリヴァイアサンの恥さらしもいいところなんですが」
 やけに妹に対して毒舌だな。

「まあ、私はしっかりとご案内をいたしますので、ご安心くださいませ。お飲み物も用意していますので、今、持ってきますね」
 三分ほど後、ファートラはトレーに冷たい飲み物を持ってやってきた。

「ハチミツを湧き水で溶かした飲み物です。長旅で疲れている体にちょうどいいはずです」
「やっぱり、こういう歓待はまともなんだよね」
 魔王ペコラがもうちょっとまともな性格で、かつ、トラブルがなければ、普通の旅行ですんだんだろうな。私たちらしいと言えばらしいんだけど。

 しかし、まだアクシデントは残っていた。

 急に床がぐらぐらと揺れたのだ。
「地震? でも、ここ、地上じゃないよね!?」
「これは……ヴァーニアが、きっと思い出し笑いでもしているせいで揺れているようです! あのバカ!」

 そうか、正常な精神状態を保っていないと、上に乗せているものも揺れるんだな……。

 そして、揺れがさらに大きくなって、

「わっ、わっ! こんなに揺れると、トレーが上手く維持できなっ……」

 ファートラが――ひっくり返った。
 バーシャンとトレーの上のハチミツ水がファートラにかかった。

「わ、私はドジっ子じゃないのに……ドジっ子なんかじゃないのに……」
 尻餅をついているファートラはそのまま涙目になった。できる人間がトラブルでミスをやってしまい、かなりショックだったらしい。
「ずっと、仕事はよくできてるってベルゼブブ様にも褒めてもらってたのに……いきなり最悪です……! もう、ヴァーニアはあとで絶対にぶちのめします!!!」

「ほら、落ち着いて! こっちには全然かかってないから問題ないよ! あっ、誰か、タオル持ってない?」
 ハルカラにタオルを持ってきてもらって、ひとまずファートラを拭いた。
 拭いている最中、アナウンスみたいなのが部屋全体に響いた。

『運転中のヴァーニアです。さっきは申し訳ありませんでした……。去年の飲み会のこと思い出して、思い出し笑いをしちゃって……』

 マジで思い出し笑いだったのか。
「絶対、絶対、許しませんからね!」
 ファートラが完全にキレた。
 まあ、姉妹の問題は姉妹でどうにかしてもらうことにしようか……。

 十五分後、ファートラは新しいハチミツ水をすました顔で持ってきた。
 ファートラは微妙に湯上りっぽく、ほくほくしていた。

「こほん……ハチミツでべとべとになったので、お風呂に入りました……。新しいハチミツ水です……」
「あなたも苦労してるんだね……」
「本当に大変ですよ……」

 ハチミツ水は甘すぎることもなく、絶妙の味かげんだった。飲むと、体がすうぅっと浄化されるような感じがする。

 娘二人も「おいしいね、シャルシャ!」「うん、おいしいよ、姉さん」と言っているので、子供にも好評なようだ。
 ハルカラは「二杯目ください」とお代わりを注文していた。
「これ、商品化したら、けっこう売れると思うんですよね。水とハチミツだけだったら準備も簡単そうですし。もうちょっと飲んで、味を覚えておきます」
「商魂たくましいな!」

「また、ご迷惑おかけしてしまったので、稼いで、何か皆さんにプレゼントできればなと……」
 なんだかんだで、ハルカラも反省しているらしい。
「ハルカラさん、そういう気のつかい方はいらないです」
 ライカがハツミツ水を飲みながら言った。

「むしろ、今回の失敗を活かして成長していってくれることをアズサ様も望んでいるはずですよ。もので返したいなら、エルフ料理を高原の家で振る舞ってくれればいいです」
 幽霊のロザリーもその横を漂いながら、うなずいていた。そういうことだ。大事なのは気持ちだ。

「わかりました、ありがとうございます……。でも、商売にはなりそうなので、ハチミツ水の商品化は考えときます」
 本当に商魂たくましいな……。ハルカラに商才があるのは間違いないけど。
 ある意味、ハルカラらしいし、これからもハルカラらしく生きてほしいと思いつつ、残りのハチミツ水を口に流しこんだ。

 けど、テーブルの上で一つだけまったく手がつけられてないグラスがあった。

「あのさ……フラットルテ? どうして、飲まないの……? もしかして嫌いなの……?」
 そう、一緒に高原の家に帰ることになったフラットルテも同席しているのだけど、さっきから一言も発してないし、何も口にしてないのだ。

「もしかして、抗議のつもりとか……?」
 ハンガーストライキ的なやつだろうか。

「いえ」
 フラットルテは首を横に振った。ただ、ハチミツ水に視線は注がれている。
「ご主人様から飲んでいいという許可を得ていないので、飲まずにいました」

 さらりと、けっこう衝撃的な理由を言われた。
 ハルカラとライカ、ロザリーもまあまあ引いていた。
「……飲んでいいよ、フラットルテ」
 許可を出すと、フラットルテはごく普通にドリンクを飲んで「おいしいですね」と笑った。

 この子がヤバいのか、ブルードラゴンの服従っていうのが極端なのか、とにかくまずい。
「フラットルテ、ちょっとこっちまで来なさい」

 私はフラットルテを連れて、空き部屋に入った。

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