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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の土地訪問編

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85 褒章授与式

 翌日、私たちはドレスを着て、式典の会場に移動した。
 一日前にあれだけ激しいバトルまであったというのに、式典会場は何事もなかったかのように花で飾られていた。
 私たち以外にも魔族ではないらしい一般人の人がいる。どうやら話を横から聞くに学者さんらしい。魔族がいろんな人を讃える式というのは本当らしい。

「緊張するけど、それ以上にやりづらいな……」
 昨日、戦った相手とかも会場の中にはいるのだ。どちらからともなく、ぎこちなく「昨日は失礼いたしました」「いえいえ、こちらこそ……」とあいさつする。

 そこで、ベルゼブブとヴァーニアの姿が見えた時は、ちょっとほっとした。
「いや~、一時はどうなるかと思ったよ」
「こっちのセリフじゃ。わらわも過去最大級のピンチじゃったぞ……。お前とおると、退屈することはないと思っておったが、こういうのは勘弁してほしい」
 まだベルゼブブはしんどい顔をしていた。羽がぱたぱた動いているところからも、それがわかる。

「自分も死ぬかと思いました……。むしろ、死ぬ覚悟でした……」
 ヴァーニアも名誉ある式典にはふさわしくない青い顔をしていた。
 その横にヴァーニアに似た顔の魔族がもう一人いた。

「こっちの方は?」
「リヴァイアサンのファートラです。皆様にお乗りいただいていた者です」
「あっ、その節はお世話になりました!」
「今日はこの式典のスタッフとして働いております。個人的には空を飛んでるほうが楽なんですけどね。ほら、接客って気をつかうじゃないですか。空を飛ぶのは安全運転だけ気をつければいいんで」

 その気持ち、わからなくもない。仕事先まで社用車で移動すること自体は割と楽なんだよな。上司いなければ雑談していいし、コンビニ寄ってお菓子食べてもいいし。

「ということで、本日はよろしくお願いいたします。こちらは式典までのドリンクです」
 ファートラがお酒の入ったグラスを勧めてきた。このあたりは万国共通なのかもしれない。

 私の次にライカがグラスをとった。ただ、ヴァーニアが途中で割り込んだ。
「ええとですね……お酒に酔うと前後不覚になる方、お酒が苦手な方は、お水でお願いしますね……」
 明らかにヴァーニアの視線がハルカラに注がれていた。
「わかりました……。わたしも自重します……」
 ハルカラが気を付けているなら、問題なく事も運ぶだろう。ペコラ気絶事件は不運な事故だ。

「ファルファとシャルシャも水にしなさいね」
 スライムはどうやらアルコールの分解が苦手らしいのだ。見た目と一致しているので、ある意味わかりやすい。

「魔族の式典というから、どういうものかと思いましたが、なかなか洗練されておりますね、アズサ様」
 ライカはいかにもお嬢様という雰囲気を出して、会場を見回していた。
「さすが、ライカは式典慣れしてるね」
「ええ。ドラゴンの式典と大差もありません。このまま何のトラブルもなく終わることでしょう」

 ライカ、そういうのはフラグになるからやめてほしいな……。

 ――と、そこに兵士たちが「魔王様のおーなーりー!」と声を上げた。

 ペコラが少し高くなっている段上にある壇に現れた。

「皆様、本日はお忙しいなか、ご出席くださいましてありがとうございます。魔王のプロヴァト・ペコラ・アリエースです。早速ですが、魔族褒章を順番に授与いたしたいと思います。まず、魔法部門ですね。防御力強化魔法の水準を大幅に上げたマントーヤさん」

 いかにも魔法使いという人が出てきて、メダルのようなものをペコラから渡された。
 このあたりも常識どおりだな。

「続いて、自然部門ですね。青いバラの栽培に成功したノルエールさん」
 次に出てきたのは、なんでこんなところに呼ばれることになったんだろうという表情の初老の男性だった。いきなり魔族から褒章授けるから来いと言われたのだと容易に想像できる。

 そのあとも、いろんな部門の表彰が続いた。多分、ペコラの性格によるものだと思うが、式典もラフな感じで肩もこらない。

「では、次は平和部門ですね。高原の魔女アズサさん、どうぞ」
 拍手を受けて、私は壇の前に出る。このメダルを受け取るためだけにいろいろ大変だった。

「アズサさんは」

 しかし、そこでペコラはいたずらっぽく笑った。

「実は、アズサさんだけじゃないんですね」
 むっ? どういう意味だろう。

「アズサさんはレッドドラゴンとブルードラゴンの長年にわたる抗争を止めたわけですが、せっかくなのでドラゴンの方にも褒章を差し上げたいと思います」
 ペコラの視線がライカに向く。

「えっ? 我もですか……?」
 自分の顔を指差しているライカ。そこに拍手が来て、ライカも壇上に登らざるをえなくなる。

「そっか。これはなかなかいい趣向じゃない」
 たしかにライカの協力もなければ抗争を中止することだってできなかった。
 けれど、まだペコラが企んでるような笑みを浮かべてるのが気になるんだよな……。

「レッドドラゴンのライカさんに来ていただきました。さらに、もう一名、ブルードラゴンのフラットルテさんもどうぞ!」

「「えっ!?」」
 私とライカが声を合わせた。
 角とドラゴンの尻尾が生えた女の子が扉を開けて入ってくる。
 間違いない、人間形態のフラットルテだ。

「フラットルテさんもブルードラゴンをまとめて、また抗争が起きないように気を付けてらっしゃいますからね。同じように表彰されるべきかなと思いました」
「あなた、人を驚かすの好きだね」
 フラットルテもおずおずと壇上に来る。ライカと並ぶとやっぱり居づらそうだ。それはライカも同じだけど。

「ひ、久しぶりだな……ライカ……」
「そうですね……。抗争の場で顔を合わすことにならなくてよかったです……」

「それじゃ、一人ずつ褒章をお渡ししますね~」
 順番にメダルをかけていくところは、けっこうペコラは雑だった。

「これでドラゴン同士が平和にやっていくことが証明されましたね。もし、抗争を再燃させるようなら、魔王であるわたくしの顔に泥を塗ったと見なしますので、よろしくお願いしますね」
 にっこりとペコラは笑った。
 そっか、こうやって絶対に争いが起きないように釘差すというアイディアか。

「わ、わかってい……います……ブルードラゴンは何もしませんから……」
 フラットルテはかなりふるえていた。ドラゴンでも魔王は怖いよね。

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