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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の土地訪問編

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77 アズサ一家大ピンチ

 ハルカラが白くなっていた。
 そして、すぐに跪いた。というか、むしろ、これは日本の土下座に近いスタイルだ。

「魔王様、申し訳ありません! 騙すとか偽るとか、ああいうのはすべて言葉の綾です! 本当に本当に本当なんです! 信じてください!」

 けっこう失礼なこと言ってたからな……。あれはまずいよな……。

「あれ~、ハルカラのお姉さん、仮病使うって言ってたのに、本当にうずくまるほどおなか痛くなっちゃったの?」
「病は気からという言葉がある。仮病を意識して実際に腹痛が発生した可能性も考えられる」
 ファルファとシャルシャ、今、それは追い打ちでしかないよ。

「あらら、そんなことまで考えてらっしゃたんですか」
 魔王はにこやかな笑みを浮かべたままだが、それはそれで怖い。
「いえ……あくまで失礼をいたすのが心配だっただけです……。プロット・パコナ・エリアス様……」
「お前な、魔王様のお名前はプロヴァト・ペコラ・アリエースじゃ……」
 ベルゼブブがあきれていた。
 ハルカラは膠着していた。なんか、カエルみたいだ。

「アズサ様、こまめに失礼なことを積み重ねていっていますけど、いいんでしょうか?」
 後ろで見ていたライカもガチで心配になっているらしい。
 合わせ技一本の可能性は否定できないな。

 魔王がしゃがんで、ぽんぽんとハルカラの肩を叩いた。
「起き上がってください。あなたはわたくしの家臣ではないのですから、そんなに頭を下げる必要はありませんよ」
 よかった。許してもらえるらしい。
「はっ、はい! 了解いたしました!」
 今度はハルカラが軍人みたいに勢いよく頭を上げた。

 どがんっ。
 その頭が思いきり、魔王のあごあたりに直撃した。

 見事に不意打ちだったのか、魔王は背中からばたんとその場に倒れた。

 しーん……。

 空気があまりにも完璧に凍りついた。
 魔王相手に完璧な一撃……。

「魔王様、しっかりしてくだされ! あっ、意識が、意識がないのじゃ!」

 これ、脳震盪を起こしてるな……。脳が揺れると、どんなに強い人間でも気絶する時はするからな……。

 ハルカラより先にライカががたがたふるえていた。
「ハルカラさん、あなたという人は……。今度ばかりは本当に冗談ではすみませんよ……」

 ハルカラは反応がない。こっちは立ったまま気絶していた。考えることを心が拒んでいるらしい。

 異常に気づいた魔族たちが騒ぎ出した。
「魔王様がお倒れになられたぞ!」「すぐに医務室に運べ!」「なんということでしょう!」

 ロザリーが「霊魂が飛び出しそうになってる。やべえ……。うかつに出ると戻ってこれなくなるな……」と幽霊らしいコメントをしていた。

「ねえ、ライカ……あのさ、これってガチでよくないやつ……? ハルカラはどうなるの……?」
 ライカはしばらく黙っていたが、なぜか首を左右に振った。

「な、何それ? 不吉すぎるんだけど……」

 シャルシャがくいくいっと私の服を引っ張った。
「魔族の法典は細かく確認していないが、人間の法でも、王族を害した者は処刑されるのが一般的……。言い逃れは無理……」
「いや、でも、今のって、ほら、故意じゃなくて過失でしょ……。お情けが来るよね?」
「ハルカラさんだけでなく、シャルシャたちもみんな処刑されちゃうかも……。それだけのことはやっちゃった……」
「うぇ~ん! ファルファ、死にたくないよ~!」
 ファルファが泣き出した。

 これはアズサ一家最大の危機なのでは……?

 そうだ、ベルゼブブに聞いてみよう! そうすれば、打開策を教えてくれるはず!

 そのベルゼブブも青ざめた顔をしていた。

「こんなことなら、本当に仮病を聞き入れておくべきじゃったの。法的には確実にハルカラは殺されるぞ。州知事を怒らせたとかそんなチンケなものではないのじゃ。助かった前例はないのじゃ……」
「そ、そこをなんとか……」
 ベルゼブブは私の耳にぼそぼそと囁いた。

「今はとにかく静かにしておれ。抵抗しないのであれば、ハルカラ以外は形の上は客人として部屋に通す。ガチガチに見張りはつくがの。賓客を共犯の疑いがあるとしてすぐに牢に入れるわけにもいかんから、軟禁するわけじゃ」
「そこまではわかった」
「それでハルカラを救う方法なんじゃが、一つだけある」
「いったい何?」

 可能性があるということで、少し光明が見えた。
「法を止め、覆す権限を持つのは魔王様だけじゃ。その魔王様が今は意識がない。このままでは法に則り、ハルカラの有罪が確定して、串刺しにされたあとに火をかけられて、多分じゃがあいつの故郷であるエルフの村も最悪、滅ぼされる」
「そこは具体的に言わなくていいよ……。でも、何をすればいいかはだいたいわかった」
 つまり、魔王の口からストップがかかればいいわけだ。
「魔王の意識を回復させろってことだね?」

 ゆっくりとベルゼブブはうなずいた。
「人間なら、ちょっとゆすれば意識が戻るのかもしれぬが、長命な魔族は数日は意識がない場合もありうる。それでは遅すぎる。なんとか強制的にでも意識を戻さねばならぬ」
「うん、わかった」
「しかし、部屋から表向き、出すことはできん。それでは共犯者であるかのようにおぬしらも疑われる。一応、部屋の中にいるという状態を維持しつつ、どうにかせよ」
「わ、わかった……」
 ほかに選択肢はないのだ。

「時間はどれぐらいありそう?」
「実質、現行犯逮捕じゃからの……。そう時間はない。明日の朝にハルカラが変わり果てた姿になっておってもおかしくはないと心得よ……。魔王様の意識が戻ればよいが、いつ戻るかはさっぱりわからん」

 そこに屈強な男の魔族たちがやってきた。さすまたのようなものを持っている。

「こいつが犯人だ。連れていけ!」
 そいつらにハルカラはどこかに連行された。
 私たちのところにもほかの魔族が来る。
「ひとまず、来賓用のお部屋にご案内いたします。念のため、お外には出られませんように」

 私は神妙な顔でうなずいた。

 必ずこの危機を脱出してみせる。

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