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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の土地訪問編

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76 かわいい魔王様

「え、魔王?」
 そんな怖そうな人と会うかもなんてことはすっぽり抜け落ちていた。

「そりゃ、褒章は国家元首が授与するものであるからの。魔王様が出てくるのは当たり前じゃろうが。大丈夫じゃ、心やさしい方であるからの」

「ま、魔王……どうしましょう……」
 ハルカラが魔王という言葉を聞いてから、明らかに暑さ以外の理由での汗をかきだしていた。
「もし、粗相があったら、殺されます……。皮をはがれたあとに火の中に投げ入れられます……」
「そんなことはなさらんわ! おぬし、魔王様を侮辱すると火の中に投げ入れるぞ!」
 結局、投げ入れるのかよ。

 しかし、たしかに普通の人なら問題なくても、ハルカラが何かやらかして怒りを買うという可能性は、ぶっちゃけありうる。
「ハルカラ、行儀よくするんだよ。お酒は控えておいたほうがいいかもね。魔王様に向かって吐くとかそういうことしそうだから……」
「わかりました……。育ちの良さを見せたいと思います……。語尾を全部『ございますわ』にしますですわ」
「気持ち悪いからやめて」

 ライカも魔王と聞いて、少し背筋がぴしっとしたし、みんな緊張はするらしい。王に会うのでも緊張するだろうに、魔王だからな。それで平常心を保てるほうがおかしい。

「なんか、みんな神妙に顔になってきたのう。魔王様はフレンドリーな方じゃから、いつもどおりの態度でいけばよいのじゃぞ?」
 そんなこと言われても、自分の身内にはフレンドリーだけど、外の人間には冷たい人とかもいるから、油断はできない。

 そして、ぴりぴりした空気を作った私達は、馬車を降りて城の中に入っていった。堅牢な石造りの建物だ。

 ただ、城の中はけっこう複雑な構造だった。
 一回外に出て、もう一度違うところから入って、さらに地下に入って、どんどん階段を上っていって……。なんだ、これ……。

「どうして、こんなに迷路みたいになってるの……?」
「敵が攻めてきても迷わせてその間に殲滅するためじゃ。昔の名残じゃのう」
 そういうところは、魔族っぽいな。
 そのまま、合計で二キロぐらい歩かされた。みんな体力的には問題はないが、かなりだるい。
 そして緊張感がゆるんできたあたりだった。

「さあ、この先が魔王様のいらっしゃるところじゃ」

 また背筋が伸びた。
「いよいよか……。礼儀正しく、礼儀正しく……」

 あんまりしゃべると、ボロが出るかもしれないし、できるだけ黙っていよう。そしたら誤魔化しもきくだろう……。

「あの、すいません……わたしハルカラはおなかが痛くなってきたので、辞退してよいでしょうか……?」
 ハルカラがおずおずと手を上げた。
「おぬし、確実に仮病であろう。心配せんでよいぞ。魔王様は寛大な心を持っておられるからな。さあ、ちゃんと来い!」
 ベルゼブブはハルカラを引っ張っていった。大丈夫かな……。

 いよいよ、魔王の間に私達は入ることになった。ここは扉だけでも四メートルぐらいある。担当の魔族四人がかりで押して開けていた。

「ようこそ、魔族の城、ヴァンゼルド城へ」
 入ったらいきなり横から声をかけられた。
 きれいな羊みたいな角を両側から生やしている魔族さんだ。年齢は中学生ぐらいの娘さんだ。あくまで見た目の年齢だけど。

「あっ、こんにちは。このたびはお招きにあずかり、光栄です」
「いえいえ。こちらこそお会いできてうれしいです。あなたが魔女のアズサさんですね?」
「はい、そうです」
「わー! 本物だー! 握手してください!」
 ぎゅっと手を握られた。よほどテンションが高いのか、後ろの尻尾が動いている。これも三本に別れていて、妙な動きをしていた。

 私が立ち止まっているので、列もそこで止まる。
「お師匠様、あんまりここで長話すると、魔王様を待たせるんじゃないですかね……? 一分遅刻するごとに串刺しの本数が増えるとかになったら困りますよ」
 ハルカラが不安げに言ってきた。とにかく、魔王への好感度を気にしている。
「あっ、あなたがエルフのハルカラさんですね! 『栄養酒』おいしくいただいてますよ! 握手してください!」

 今度はその子はハルカラと手を握っていた。フランクな人柄の子らしい。
「いたたた……握力強すぎますよ……!」
「あっ、すいません、ちょっと力の調節を間違えちゃいました……。ごめんなさいね。はい、回復魔法」
 すぐにその子は回復魔法の光をハルカラに当てる。機転のきく子ではあるな。
「ありがとうございます。あの……悪いんですけどそろそろ解放してもらえますか? 魔王様とあいさつしないとイライラさせちゃよくないんで……。もし、そのエルフの首を撥ねよとか言われたら大変ですからね……」

「そんなひどいこと言いませんよ」
「いや~、でもわたしたちエルフと比べると価値観が違いますからね。やさしいと言っても話半分ぐらいで考えてます。だからこそ、キャラを偽る勢いで、おしとやかに無難に対応するつもりなんです。悪く言うと、魔王様を騙しちゃうわけですね」
「騙しちゃうんですか?」
「もちろん悪意はないですよ。でも、人間関係ってそういう儀礼的な部分が大事ですからしょうがないですよね。相手がわからないのに真心の関係なんて結べませんからね。最初はなんだって様子見です」
「あのね、ハルカラ……。ここにいる人も魔王様と近い人でしょ……。偽るとか騙すとか言っちゃダメでしょ……」
 こういうところがハルカラは軽いし、詰めが甘いのだ。

「おっと、そうでした。すいませんが、魔王様にはくれぐれもないしょにしておいてくださいね。そしたら、『栄養酒』を三箱あげますから」
 ちらっと、ハルカラは先にある玉座のほうを見た。
 しかし、私もその時はじめて気づいたが――玉座は空だった。

 なんか、ものすごく嫌な予感がした。

「あの……ベルゼブブ、魔王様がいないんだけど」
「おぬしらの目の前にいらっしゃるではないか」

 やっぱり、そうか……。

 ドレスのスカート部分の両端を持って、ぺこりと羊の角がついてる少女がおじぎをした。

「魔王のプロヴァト・ペコラ・アリエースです。高いところからのあいさつはあまり好きじゃないので、降りてきてました」

 ですよね~。この子が魔王様ですよね~。
 あらためて周囲を見ると、ベルゼブブ以外の魔族はほとんどが跪いていた。
新キャラの魔王様登場しました! 次回もよろしくお願いします!

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