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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の土地訪問編

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70 ドレスを着せる!

 どうしていいかわからないので、ライカとシャルシャに聞いてみた。この二人ならそういう知識も豊富そうだと思ったからだ。
「幽霊用の服を売ってる店ってあるのかな?」
「いえ、皆目見当もつきません……」
「そんなの、物語でも見たことがない」

 ダメか。かといって普段着で一人だけ行かせるというのもしのびない。何かないものか……。
 町の服屋さんなどにも当たってみた。
「幽霊用の服と言われても……幽霊ならお代を払えないから商売になりませんし……」
 そう言われた。なるほど。もっともな意見だ。対幽霊の服を作れたところでビジネスとして成立しないから誰も作らないだろう。

 今度はシャルシャのツテで幽霊について詳しそうな学者先生のところにも行った。
「幽霊というのは霊魂がこの世にとどまっていて、それが現世に近い姿を有しているものを言います。なので服に見えても、それも霊魂の一部なのです。霊魂を着替えることができないのは当然ですよね。なので、まともな方法で服を着替えさせることはできません」
 これも言われて、納得した。
 服に見えるのはロザリーの生前の記憶だ。生前にロザリーがドレスを着ていたら、もしかしたら、そっちの記憶が強くなったりしてドレス姿になるかもしれないが、ほぼありえない。だいたい、ドレスはよそ行きの服なのだから、普段着に記憶で勝つのは難しいだろう

 数日とはいえ、相当、真剣に探していたようで、ロザリー本人に止められた。
「姐さん、もうけっこうですよ……。無理なものは無理です……」
「ロザリー、あなたは我慢すればいいと思ってるよね。それはそれで正解なの。でも、私はあなたに我慢させるという解決策は嫌なの。だって、それは我慢だよね? どうせならみんなと同じようにおめかしして行きたいよね?」
 こう尋ねるとロザリーはしばらく迷っていたが、うなずいた。

「もし、着るチャンスがあるなら、それはそうですけど……」
「でしょ! じゃあ、やっぱり方法を探そう! すぐに諦めるのはやめよう!」
「けど……どうやって方法を探せばいいんですか? そんな変な魔法があるわけもないですし」

「それだ!」

 私は大きな声を上げた。
 名案をひらめいたのだ。

「魔法を使えばいいんだよ!」
「そんな魔法があるとは思えないんですけど……」
「ないならば作ってみせようホトトギス」
「ホトトギスって何ですか?」
「あっ、忘れて……。前世の影響だから……」

 私は早速、幽霊の服を変更する魔法を作ることにした。ない魔法をイチから作れる。チート魔女の本領発揮だ。

 しかし、これまでの魔法と比べると明らかに難易度が高かった。

 幽霊に効く魔法という時点でかなり特殊らしいのだ。
 しかも、幽霊を攻撃するものなら数も多いが、服を変えるというかなり特殊なものだ。似た魔法も皆無だった。

 そこまで希少性の高い魔法となると、作るのも楽じゃない。大失敗すると、ロザリーにダメージを与える恐れすらある。

 日数は瞬く間に過ぎていき、出発の日が近づいてきた。もう、二日後には家を出ることになっている。

 ただ、魔法のほうも進展はあった。
 おそらく、このやり方で上手くいくだろうという糸口は見つかっている。あとはそれを確実に実行に移すだけだ。

 私はロザリーにドレスを渡した。
 できるだけデザインがシンプルな白いドレスだ。
「はい、ロザリー」
「あの、姐さん、これをどうすればいいんですか? 見せられても着れませんよ……?」

「ロザリー、まずはこのドレスを徹底的に見て、頭に叩き込んで。そのあとに、このドレスを着ている自分をイメージしてみて。さも自分が本当に着て、パーティー会場を歩いているぐらいの感じで。イメージ・トレーニングだと思って」
 ロザリーはまだついていけてない感じだった。それもしょうがないと言えば、しょうがないが。
「姐さん、ついに信じる者は救われる的な神秘思想に走ったんですか……?」
 幽霊にオカルトだと思われるの、なんか納得いかないな。

「あなたのイメージを強化する魔法なら使えそうだって結論に至ったの。それで二日間ほどドレスを着ているイメージと置き換えることができたら、あなたの見た目も変わるはずよ」

 私の真剣な顔にロザリーもやる気になったらしい。

「わかりやした。姐さんの情熱にアタシも報いてみせます」
「その意気よ。信じる者は救われるんだから!」

 こうしてロザリーは四六時中、そのドレスを観察して、かなり硬派なイメトレを続けた。あらゆる角度からドレスを眺め、パーティー会場を歩いている設定で屋敷をうろついたりした。
 生身の人間がやっていると、かなり怖いが、幽霊なので、許容範囲ということにする。

 そして、いよいよ魔法を使う時が来た。

 私は庭にかなり奇妙な形の魔法陣を描いた。
 なにせ楕円なのだ。普通は真円であればあるほどいいのに。幽霊に干渉するにはこのほうがいいらしい。

 その魔法陣の外側すぐのところにロザリーがいる。
 その真ん前にはさらにドレスが地面に置いてある。直前までイメトレするためだ。

「行くよ」
「はい。姐さん、お願いします」

 私はオリジナルの魔法を詠唱する。

 そして詠唱が無事に終わった。

「決まって魔法! 変わってロザリー!」

 魔法とは直接関係ないが、目を閉じて、声を出して叫んだ!

 そして、恐る恐る目を開けると――

 そこにはドレスをちゃんと着ていたロザリーがいた。

「あっ、あっ……姐さん……成功しましたよ!」
 ロザリーは涙ぐんでいる。
 私ももらい泣きしている。
「よかったー! これでドレスで魔族の土地に行けるねー!」

 私達はぎゅっと抱き合う。ロザリーは幽霊なので、私の腕はすり抜けるが、細かいことは気にしない。あくまで、これが私たちの抱擁なのだ。

「あの、ところで……ふと思ったんですが……」
「うん、何?」
「魔族って幽霊は見えるんですかね……?」
 あっ、そういえば…………。

「ベルゼブブが見えたんだから、多分見えるよ……うん、おそらく……うん……」
 そうであることを祈ろう……。

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