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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ逮捕疑惑編

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68 大口の顧客

「まさか……。いくら、あのハルカラでも…………。あのハルカラだからありえないとは言い切れないな……」
 トラブルといえばハルカラ、ハルカラといえばトラブルといっても、過言ではない。大きな事件に見舞われてなきゃいいけど……。

「ところでなのじゃが、州知事が罷免されて、その次の州知事はどんな奴なのじゃ? 前の州知事と仲がよかったような奴が来たら見せしめに何かされるかもしれぬぞ。前任者からしても高原の魔女の仲間に罪をふっかけるような命知らずというか、魔女の怖さを知らぬ奴じゃ。同じ轍を踏むということも……」
「どうしよう! ハルカラが殺されてたりしてたらどうしよう!」

「考えすぎと言いたいところじゃがの……」
 急に華やかだった空気が重いものに変わってくる。
「落ち着いて、ママ! ライカお姉さんが行ってるんだよ。何かあったらすぐに戻ってくるよ」
 ファルファの言葉で少し気持ちがやわらいだ。

「だよね……。ライカを待とう。今はそれしかない……」

 といっても、主賓がいないわけだし、しょうもない雑談をする気分でもないので、家の空気はけっこう重かった。

 ついにいつものハルカラの帰宅時間から二時間が経過。
「ふあ~あ……」
 ファルファがあくびをしだした。どうしよう……眠くなってきちゃったか……。

「あの、今いるメンバーだけで先に食べない? 料理はたくさんあるからさ……」
「シャルシャは待つ……」
 真面目なシャルシャは同意しなかった。
「わらわもハルカラに『地獄の鍋』を腹いっぱい食べてもらいたいので、待っておる」
 これを腹いっぱい食べたら、絶対に腹こわすんじゃ……。
「なお、待てば待つほど、具にからさが染みこむので、むしろ完成度は上がるのじゃ。問題ない」
 ハルカラ……あなたが帰宅しても文字通り地獄が待ってます……。

 そして、いつもの帰宅時刻から三時間。
「すぅ……くぅ……」
 ファルファが眠りだした。
 しょうがないのでタオルケットをかけてあげた。部屋に連れていって寝かせるか迷ったけど、これでパーティーが遅れてそっちに参加できなかったとなるとファルファも悲しむだろうし。ハルカラが帰宅した時点で起こす方向で。
「それにしても遅いですね。アタシが見てきましょうか?」
 ロザリーが提案する。
「う~ん……でも幽霊ってこの空間を高速で移動できるわけじゃないよね? 行き違いになっちゃうとよくないしなあ……」

「わらわは『地獄の鍋』をさらにバージョンアップさせてくる」
 そういってベルゼブブはキッチンのほうに向かった。ハルカラ、早く帰ってこないと取り返しがつかないことになるよ……。

 けど、さすがに遅すぎるよな……。さらに一時間も帰ってこないとなると、安否の確認ぐらいはしたほうがいいな……。ライカがいて負けるということはないと思うけど、この世界に恐ろしい存在がいないという証拠はないのだ。

 そんなことを考えていた時――
 ドラゴンの翼が動く、バッサバッサという音が聞こえた気がした。

 あわてて、外に飛び出した。
 ドラゴン姿のライカに乗ったハルカラが帰宅していた。

「遅くなりました……すいません……」
 ふらふらになりながら、ハルカラがライカの背から降りる。

「いったい何があったの……? やけに疲弊してるみたいだけど」
「ほら、州知事が別の人に代わったじゃないですか」
 まさか、本当に報復みたいなことを受けたのか?
「それで、新しい州知事が『栄養酒』その他を気に入って、王国に持っていったら、王様も気に入ったとかで……国から正式に受注依頼が来たんです……」
「国から!?」
「それの会議が長引いてしまって……国の依頼なのでまた明日にしようってあっさり言うことも難しくて……それで大幅な残業になりました……」

「これだけ遅くなるとわかってるなら、一度、我が家に戻ってくればよかったんですが、どれだけ遅くなるかわからなかったもので……。すいません……我の判断ミスです」
 人に戻ったライカが頭を下げる。別にライカのミスじゃないから、そこは気にしてない。

「なんだ、じゃあ、基本的にうれしい悲鳴なんだね」
 心配して損した。
「いや~、くたくたですよ……。もう、今日は夕飯はいらないんで、すぐに寝たいです……」
「いや、それは困る」

 私はハルカラを会場に連れていった。
 料理がずらっと並んでいる。

「あれ、これは……?」
「あなた、かなり苦労したでしょ。だから、ねぎらいの会を催すことにしたの。予定よりかなり遅くなってるけど」
「ありがとうございます! お師匠様!」
 ハルカラにぎゅっと抱きつかれた。慣れてきてはいるけど胸の弾力がやっぱり強い。

 そのハルカラの声にファルファも目を覚ました。
「あれ? ハルカラのお姉さん、帰ってきたの?」
「よし、全員揃ったね! じゃあ、ハルカラのこれまでの苦労と仕事の発展を祝してお祝いしよう!」

 全員にグラスがいきわたる。

「「お疲れ様、ハルカラ! これからも頑張って」」

 ハルカラはうっすらと目に涙をためていた。
 その顔は美しくて大人びていて、いつもの残念キャラのものとはちょっと違っていた。

「皆さんのおかげで、わたしは社長としてやっていけます……。本当に、本当に……ありがとうございました……」
「さあ、どんどん食べて、飲んで! 社長なんだから明日は社長出勤しても許されるでしょ!」
「はい! わたいしゃ残さず食べますよ!」

 そこに、やけにぐつぐつ煮えたぎる鍋がやってきた。

十辛じゅうからにしてきたのじゃ」
 不穏なことをベルゼブブが言った。

「あの……ベルゼブブさん、この料理は……?」
「『地獄の鍋』という魔族の家庭料理じゃ。ぜひ、食べてほしいのじゃ。『栄養酒』ファンとしてのプレゼントじゃ」
 深紅の鍋料理をベルゼブブが皿に入れる。

「これ、からいやつじゃないですか……?」
「大丈夫じゃ。致死量ではない」
 それ、料理で出てきていい言葉じゃない。
 恐る恐る、ハルカラはそれを口に入れた。

「あっ、そこまでからくな――――ぶわーっ! あとから来た! あとからものすごく来たーっ!」
「まだまだた~んとあるぞ。残さず食べると言っておったし、たのもしいことじゃ」
「ちょっ! あれはその場の勢いなんですって! こんなのあるって知らないですよ!」
「まさか、わらわの作った料理が食えぬと言うのか?」

 あっ、これは面倒くさいパターンだ。
「私、おなかいっぱいだし、そろそろいいかな……」
「我も……」
「アタシは幽霊なんで食えないのが残念です」
「ファルファ、眠いからあまり食べられない……」
「寝る前に食べるのは控える、シャルシャはそう学んだ」

「全員でさりげなくエスケープしようとしてませんか!? た、助けてください!」

 翌日、ハルカラはおなかを壊して、工場を休みました。
ハルカラが逮捕された編はこれにておしまいです。次回から新章に入ります!

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