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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ逮捕疑惑編

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67 食事会の準備

 ハルカラの事件は州知事が失脚したこともあって、かなり話題性の高いものになった。

 私がフラタ村に出た時に「大変でしたね」と声をかけられるのは当然のこととして、ハルカラもナスクーテの町で何度も声をかけられているらしい。まあ、まさに工場があったと場所だから当然だが。

 そのほか、州全体でハルカラ事件は語られるようになっているようだ。私はわざわざ行って確認していないが、シャルシャもそう言っているし、本当なのだろう。

「協力してくれた研究者や大学教授に礼状を送ってるの。そしたらまた返事が来て、ハルカラさんの事件はよく話に出るって書いてるのが何通があった」
「なるほどね。たしかに、州全体に波及する政変みたいになっちゃったしね」

 これでまた「高原の魔女」に目をつける奴が出ると怖いけど、力で強引に解決したわけじゃないし、まだマシだろう。もし、無理矢理ハルカラを奪還していたら、全面戦争みたいなことになりかねなかった。

「シャルシャとしても利益があった。これまで連絡を取りたいと思ってたけど、恥ずかしいから距離を置いてた教授たちにも手紙を送れて、つながりができた」
「へえ、シャルシャ、よかったね」
 あまり顔には出さないが、母親なのでシャルシャがうれしそうなのがわかる。

「おかげで、シャルシャの論文を読んでもらえる機会も得た」
「論文?」
 シャルシャはテーブルに三十枚ほどの紙の束を置いた。

 一枚目に『スライム文化論 シャルシャ・アイザワ』と書いてある。
 なお、アイザワというのは私の姓が相沢だったことにちなむが、こっちの世界に来てからは高原の魔女様かアズサ様としか呼ばれないので、ほぼ呼ばれたことない。

「スライムという存在の文化史的な意義をひとつひとつ説明していった」
「すごいね……シャルシャ、こんなことやってたんだ……。本を読むだけじゃなくて、自分からも作るなんて……」

 内容があっているのかどうかはわからないが、見た目はちゃんとした研究論文ぽい。
「もし、これがわかればスライム研究の歴史が大きく前進する」
「へえ、ちなみにスライムを研究してる人ってどれぐらいいるの?」
「文化史方面ではシャルシャを入れて王国で二人」
「マニアックな分野すぎる!」

 こういう研究者ってほぼいないんだな。たしかにお金にならなそうだし、商売としては成立しないからやれる人も限られてるのかな。

「現在、各分野のスライム研究者の中ではスライム学会を行おうという機運も高まっている。もし、開催されればスライム研究史に大きな一歩となる。シャルシャも期待している」
「そっか……頑張ってね……」

 日本でもいろんな研究者がいたはずだが、それはこっちの世界でも同じなんだな。

 もしかしたらシャルシャの付き添いでそういう学会に行くこともあるかもしれないな。

「さてと、シャルシャ、今日はちょっと料理作るの、手伝ってくれない?」
 そろそろお昼だし、動きだしたほうがいいな。
「手伝う?」

「うん、ハルカラが『出所』してから二週間経つし、そろそろねぎらいの意味も込めて、『おつとめご苦労様』食事会をやろうかなって思ってるの」
 数日間とはいえ、ハルカラはこの家からも引き離されて、苦しい思いをしてただろうし、早くいい思い出で塗り替えてやろうと思うのだ。

「それは素晴らしい案。シャルシャも積極的に手伝いたい」
「うん、シャルシャには野菜を切る仕事を頼もうかな」

 しばらく下ごしらえをしていると、呼んでいた客もやってきた。

「やってきたのじゃ」
 ベルゼブブがやってきた。大きな箱を担ぎながら。
「その箱、何?」
「先にナスクーテに寄って、『栄養酒』を箱買いしてきた」
「大人買い! ヘビーユーザーにもほどがある!」

「これでしばらくはもつのじゃ。また、三日後ぐらいには買いにいくがのう。工場が量産体制に入ってうれしいのじゃ」

 これだけ熱心なファンがついてるなら、工場がつぶれることはないだろう。

「魔族随一の『栄養酒』好きのわらわを呼ぶとはなかなか殊勝な心がけじゃの。ハルカラが逮捕された時も呼んでくれれば、悪い州知事ぐらいすぐに八つ裂きにしてやったのに」
「だから、呼ばなかったんだよ」
 やりすぎて、魔族怖い、魔族とつるんでる魔女怖いと思われるほうが問題としてはデカいからな。ただでさえベルゼブブは『栄養酒』フリークなので、その工場を罪をでっちあげて止めた奴なんて者を許すとは思えない。

「せっかくじゃから、わらわも魔族料理を披露しようではないか。まず、このイモを蒸してつぶすのじゃ」
 こうして順調に『おつとめご苦労様』食事会の準備が進められた。

 途中からライカとファルファも加わり、ロザリーはナイフを動かして野菜を切っていった。今回はシチューとか鍋料理が多い。とにかく、煮込んでいくスタイル。

「わらわの作る料理は『地獄の鍋』という魔族の家庭料理なのじゃ」
 名前が家庭的じゃないし、からそう。
「かなり、からい香辛料をぶちこむので、舌が麻痺するぞ」
「本当にからいのか!」
「これを食べれば、体があったまって、健康によいのじゃ。ただし、翌日は腹をこわす」
 そんなん、各家庭で作るなよ。
 ベルゼブブが持参した食材を鍋に入れていくと、どんどん鍋が赤くなっていった。これも誰も食べなかったらそれはそれで気まずくなるし、もうちょっとオーソドックスなものを作ってほしい。

 そんな危惧もありつつも時間は過ぎていき――
「アズサ様、お迎えの時間なので出てまいります」
 ライカがハルカラのところに向かう時間になった。
「うん、よろしくね。料理はもう完成してるから!」

 あとはハルカラが料理の数々を見て感動するだけだな。

 しかし――
 ハルカラは待てど暮らせど戻ってこない。
 料理もじわじわ冷めてきた。再加熱するからいいけどね。

「なあ、アズサよ。また逮捕されたなんてことはないんじゃろうな?」
「まさか……。いくら、あのハルカラでも…………。あのハルカラだからありえないとは言い切れないな……」

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