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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ逮捕疑惑編

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66 おつとめご苦労様

 事件は無事に解決して、ハルカラも無罪ということで、すぐに釈放された。

「た、助かりました……怖かったです……」
 私の顔を見ると、ハルカラはすぐに涙をにじませた。長い時間、一人で耐えていたんだもんな。不安も大きかっただろう。

 ハルカラの肩をぽんぽんと抱いてやった。
「もう安心だからね。悪い奴もいないからね」
「ありがとうございます……お師匠様……」

 私の後ろではほかの家族がハルカラのほうを心配そうに見ている。
「ほら、ハルカラ、私だけじゃないよ。みんなも協力してハルカラを助けたの」

 今回はそれぞれが役割を果たした。たとえばシャルシャは学者に当たってくれたし、ライカはみんなの移動をドラゴンになって対応してくれた。ロザリーは裁判官に入って、州知事の悪行を公開して、ファルファはハルカラに面会に行って勇気付けてくれた。
 まさに家族のチームプレーによる勝利だ。

「皆さんも本当にありがとうございます……社会の厳しさを知りましたぁ……」
 何か意味が違う気がするが……。

 今度は、ハルカラはライカのほうに抱きついていった。
 普段はライカはあまりボディタッチみたいなのは好きじゃないのだけど、こういうケースは特例らしく、素直にハルカラを受け入れていた。
「悪には制裁を与えました。もう、ハルカラさんを狙う者はいませんからね」
「皆さん、大好きです! 家族って大事ですね……」

 ファルファとシャルシャのほうにも、ぎゅっと抱きついていく。右腕と左腕に一人ずつだ。
「ハルカラのお姉さん、よく頑張ったね!」
「ファルファちゃんもありがとう! 差し入れのパンケーキおいしかったです!」
「無事に会えて、よかった……」
「シャルシャちゃんもご協力ありがとうございました!」

 うんうん、家族水入らずの時間だ。大変だったけど、すべて終わってみれば、私達の結束が証明されたいい機会だったと言える。
 ――と、もう一つ、人の気配を感じた。

「姉貴……つらかったですよね」
 そこには謎のおっちゃんがいた。
 誰? それなりに身分は高そうだけど。
 ああ、さっきいた裁判官の一人か。けど、ハルカラを姉貴ってどういうことだ? あっ……わかった。

「あの……? あなたはどこのどなたですかね?」
 ハルカラはまだ、ぽかんとしていた。
 そのおっちゃん、入りっぱなしのロザリーだ……。それ以外に可能性はない。

「ご無事で何よりですっ! よかったですぜ!」
 そのおっちゃんに入ったまま、ロザリーもハルカラに抱きつきに行った。
「うわ! ちょっと待ってください! 男の人に抱きつかれるのは心の準備が必要で! うわ、臭い……独特の加齢臭が漂ってきます……」
 体は裁判官のままだもんな……。

「ロザリー、待って、待って! まだ、抜けてないから! それ、ほかの人の体だから!」
 私もあわてて止めようとするが、ロザリー、興奮して聞いてないな。むしろ、ロザリーのほうがハルカラより涙もろいのか、目をうるませている。この子、人情みたいなのに厚そうだもんな……。

「助かってよかったです……。アタシ、ちょっと前にも迷惑かけたばっかりだったんで、気になって、気になって……本当によかったですぜ!」
「痛い、痛い! ヒゲがじょりじょりして痛いですっ! これ、何ですか、新手の精神攻撃ですかっ!?」

 たしかによくわからないおっちゃんが抱きついてくるというのは男女ともにダメージになるのではないだろうか。そんなこと言ってる場合じゃないな……。

「あれ……変だな……。妙な気分になるぞ……」
「あの、ロザリーさん、どうしました……?」
「こう……ハルカラの姉貴にひっついてると体があったかくなるっていうか…………もっと生々しく言うと、すごく興奮する。まるで自分の体じゃないみたいなんです」
 まさに自分の体ではない。

「これって恋なんですかね……? いや、女同士だし、そんなことはねえか……。でも、何時間でも姉貴とこうして引っ付いていたいって気にはなるんでさ……」
「それ、多分ですけど、男の体だからですよ! 男の本能ですよ! もう、寄らないでくださいー!」
「男……? あっ、まだ裁判官に入ったままだった……。姉貴すいませんでした!」

 そのあと、ロザリーは井戸の水を頭にかぶることで、脱出に成功した。

 ハルカラはしばらく頬のあたりを押さえていた。
「うぅ……じょりじょりはヤバいです……。あの拷問を受けたら、あることないこと自白してしまいそうです……」
「ハルカラの姉貴、本当にごめんなさい……。あとでぶん殴ってください!」
 上下関係にうるさいロザリーはぺこぺこ頭を下げている。
「そもそも幽霊だから殴れませんし、殴れたとしてもそんなことしませんよ。ロザリーさんもすごく貢献してくれたんですし」

 裁判官までグルならそれを強引にこちらの味方にしてしまえばいいということで、ロザリーに一肌脱いでもらったのだ。
 州知事に関する記録はごっそり持ち出しておいたから、もし、明白な不正に関する証拠があれば、裁判官とかほかの連中も処罰されるだろう。州知事の敵である政治家たちもたくさんにらみを利かせているから、今から隠蔽というのは難しいはずだ。

「さてと、じゃあ、この裁判所からもとっととオサラバしよっか。みんなで帰るよ」
 わざわざ裁判のために州都に来ちゃってるからな。
「ですね……。収監中のベッドは硬かったです……」
 ハルカラは劣悪な環境を思い出して、げんなりしていた。
「だけど、もう一度、ありがとうって言わないといけないんだよね」
「誰にですか?」
「一言で言うと、『みんな』だよ」

 裁判所の外に出ると、今日のために駆けつけた村や町の人がたくさん集まっていた。
「ハルカラさんは無罪だ」とか「州知事は不正をしている」とか書いた布を広げている人もいる。

「ほら、私達の味方は家族だけじゃないの。もっとたくさんの人が信じてくれてたんだよ」
「あぁ……これは泣ける光景ですね……」
 ハルカラもすがすがしい顔で支援者の人たちを見つめていた。

 それから支援者の人たちが声を揃えて言った。

「「ハルカラさん、おつとめご苦労様でした!」」

「…………いや、わたしは無実ですからね!? そこは間違えないでくださいね!?」

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