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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ逮捕疑惑編

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62 幽霊町おこし

 すぐに、ロザリーは暇を見つけては村や森に出かけるようになった。
 これまで籠もっていたからこそ、何から何まで珍しくて新鮮に映るらしい。

 ちなみに、ロザリーがいきなり料理当番というのは無理があるので、私達が当番する時の補助をしてもらうことになった。
 最初はおおざっぱにしか野菜を切れなかったけど、だんだんと細かく切る技術も向上してきた。
 自在にナイフを操るってそれはそれでなかなか戦闘的にも強力なスペックだな……。

「うん、細かい、細かい! これならもうちょっと上達すればタマネギサラダも作れるね」

「姐さんのご指導のおかげです! 押忍オスッ!」
 なんだ、押忍って……。まだ不良文化になじめていない。というか、ずっと一人だったのにどこで不良文化を学んだんだろう。不良文化って一人で自動的に身につくものなのか?

「あとで天井裏の掃除をしますから! 濡れ雑巾を操作して、キレイにします!」
「その能力は本当に助かるよ。これからもよろしくね!」

 ロザリーのおかげで衛生面はかなりのパワーアップがはかれた。
 魔女の屋敷というと、薄暗い森の中にあって、おどろおどろしいイメージがあるが、私としてはとことん清潔で開放的なぐらいがいいと思っている。

 喫茶店でテラス席みたいなのも試したし、お昼にテラスでお茶会というのもいいな。QOLを高くしていきたい。テラスでお茶会するだけで、セレブっぽくなれるなら悪いことじゃないし。

 そんな調子でロザリーが我が家になじもうとしていた頃。
 新しい環境でハルカラも戦っていた。
 ナスクーテの町で工場のオープニングスタッフを集めていたのだ。
 ただ、これがまだ上手くいってないらしい。その日も肩を落として、家に帰ってきた。帰るなりお酒を飲んでいたので、これは自棄酒やけざけのつもりだろう。

「ああ、前途多難です……」
「なんで、ロザリーの件が片付いたのに上手くいってないの?」
「もちろん幽霊問題は解決しましたと言ってますよ。でも、そもそもはっきり幽霊の存在を見た人なんて市民にほぼいないわけですよ。なので、私が口で言ってもいまいち信用してもらえないらしくて……」

 それは、かなり厄介な問題だな……。
 道の真ん中に大きな石があるなら、それをどかした時点で解決したと誰だってわかる。
 しかし、幽霊が出るらしいと思われてる土地で、出なくなったと理解されるというのは難しい。誰も毎日幽霊が出る調査などしてないのだから。

「じゃあさ、逆にロザリーを見せちゃえばいいんじゃない? 見えれば怖さも減るし、あそこにいないってわかるでしょ」
「それです!!!」
 やけに威勢のいい声をハルカラは出した。

「わかりやした! アタシも町に凱旋します!」
 ロザリーも乗り気だ。ただ、凱旋というのとはちょっと違うと思うが……。
 心配だから私も行くことにしよう……。

 こうして、ナスクーテの町で幽霊のお披露目式が行われた。

「ちわーす! あっちの通りで昔、自殺したロザリーです! 今は高原の魔女の姐さんところで暮らしてます! ここには住んでないんで夜露死苦!」

「はーい、正真正銘、あの工場の土地で自殺した幽霊さんですよ! こんなにキュートなんだから怖くなんてないですよ! むしろ、ほかの幽霊がいないの確認済みなわけだから、ほかの店で働くより安全とすら言えます! さあ、工場で働きましょう!」

 ロザリーとハルカラが声を張り上げて、町を練り歩いている。
 かなり異様なことを言っているので、芸人か何かと勘違いした人がかなり集まってきた。

「おっ、なんだ、なんだ?」「幽霊らしいですよ」「そういえば、透けてるような」

「ノってきましたね。ロザリーさん、お触りは大丈夫ですか?」
「触れませんけどね」
「いえ、それで構いませんので!」
 何かハルカラが思いついたらしい。

「さあ、幽霊さんに触りたいという方はどうぞ! 正真正銘透き通ってますよ! 並んでください!」
 そこに、女児がおじいちゃんに連れられて、触りに来た。

「あっ、すり抜けた~!」
 不思議体験に女児のテンションが高くなる。
「だろ? 嬢ちゃんは死んじゃダメだぜ。元気に生きろよ?」
「うん! 幽霊のお姉ちゃん!」

 女児効果なのか、周囲からも温かな視線が注がれた。いい幽霊だと認識されはじめたらしい。

「ちっとも怖くないな」「全然悪霊じゃないんですね」
 支持率がアップしている。

 今度はロザリーのほうが何か思いついたらしい。老夫婦に目をつけて、ふわふわそっちに飛んでいく。
「お二人さん、掃除ができなくて困ってる場所ないですかい?」
「ああ、窓の高いところが届かなくてねえ……。椅子に登っても背が縮んで届かないんだよ」
「じゃあ、その窓、アタシが雑巾動かして拭いてやるよ!」
 老夫婦の顔もぱっと明るくなった。
「それは助かるよ! ありがとう!」
「早速、家の番地教えてくれよ! すぐにやってくるからよ!」

 そんなロザリーに「うちもお願いできない?」「俺の家も天井にクモの巣が張っちまって……」といった声が届く。
「わかった、わかった! 順番に行くから待っといてくれよな!」

 ロザリーの顔もすごく生き生きとしていた。
 その顔は本当にまぶしかった。

「ハルカラ、幽霊になっても人のために生きるってできるんだね」
「お師匠様、幽霊だから生きてはいませんよ」
「揚げ足とるな。幽霊だけど、人のためになることができて、ロザリーすごく楽しそうじゃん」
「そりゃ、そうですよ。忌み嫌われて存在するより、ありがたがられるほうが楽しいに決まってますから。わたしも町のためになる企業経営を目指してますよ」
 まともな企業家っぽいことをハルカラは言った。

 ハルカラの工場のおかげで、幸せになる人が一人生まれたな。

 この日からナスクーテの町は、かわいくて気立てのいい幽霊がいる町として知られるようになった。
 週に一回はロザリーが町に出かけていって、町の観光資源としても貢献しているらしい。

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