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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ逮捕疑惑編

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61 幽霊のいる生活

 その夜はロザリーを祝うパーティーを本格的にやった。
 ハルカラのためにやったパーティーでいろいろと買い込んでいたので、もう一度パーティーを開くことぐらいは簡単だった。
 ただ、主賓が食事をできないので、料理に関してはシンプルなものにしたが。そんなに作りこむ時間もなかったし。

「人間だと手や目の届きづらい場所ってあるじゃないですか。アタシはそういうところも雑巾がけができますよ!」
 ロザリーは幽霊が役に立つところをかなり積極的にアピールしていた。たしかにこれはありがたい。

 それからロザリーはハルカラのほうに行って、とことん丁重に頭を下げていた。
「ハルカラの姉貴にはとことんご迷惑おかけしました! 本当に、本当に、すいませんでしたっ!」
「あ、そのぐらいでいいですよ……。わたしも意識なくて何をされたかよく覚えてないですし……。やたらシャルシャちゃんに叩かれる夢とか、空から落とされる夢とか、変な夢は見ましたけど」

 それ、本当にあったやつだ。

「あの、ハルカラの姉貴……アタシのこと気がすむまで叩いてください……。でなきゃ、筋が通らねえ……」
「ちょっと、ちょっと! 叩くとかわたし、そういう趣味はないんですよ……。いいですよ……」
 ハルカラが困っていた。基本的にロザリーって不良体質みたいなところがあるな……。幽霊一人でそういう性格に変わるのかという気もするが、本当にそうなってるみたいだしな……。

「さあ、叩いてください、姉貴!」
「だから、わたしはそういう趣味は持ち合わせないんですって! どっちかというと、叩かれるほうがまだいいかもしれないです」
 何言ってるの、この子!?
「いえ、そんなこと考えたの、人生で五回ぐらいですから! 誤差ですけどね!」
 微妙な回数だな……。

「あと、そもそも論ですけど、幽霊だから叩けないですよね。なので、この話はここでおしまいってことで」
 ハルカラがクレバーにまとめた。うん、その締め方が一番きれいだ。

「それに償い的なやつなら、もっとこっちが得することにしてほしいですね。ほら、ロザリーさん、幽霊だから人が見られないところにも目が届きますよね?」
「はい、そういうことなら、いくらでもやれます」
「じゃあ、薬草採取の時とか手伝ってくださいよ。森の中だとわたしがすぐに気付けない場所もたくさんあるんで、もしかしたらまだ見ぬ薬草が眠ってるかもしれないんですよね」
「わかりました! お手伝いさせていただきますっ!」

 おお! グッジョブだ、ハルカラ! ちゃんとロザリーの特性を理解しているじゃないか!

 そこにファルファとシャルシャがやってきた。自然とロザリーのところに人が集まってくる。

「ねえ、幽霊さんって、どこか行きたいところある? ファルファが案内してあげるよ!」
 そういえば、ロザリーってずっとあの屋敷にいたわけだから、長らく外側の景色は知らないんだよな。
「そうですね~。ずっと閉じこもってたから、景色のきれいなところに行きたいですね。旅がしたいって気分もあります」
「うんうん! じゃあ、ファルファたちと一緒に旅行に行こっか!」
 内気と言うべきかはわからないけど、ロザリーみたいに籠もってた子には外交的なファルファがちょうど合うのかもしれない。

「幽霊から見た世界観をまた詳しく教えてほしい。とても興味・関心がある」
 シャルシャとしては、そこが気になるんだろうな。本物の幽霊とこうやって話し合える機会なんてないものな。
「むしろ、幽霊の世界に行ってみたい気持ちまである」
「それは怖いから、もうちょっと慎重になって!」

 怖いので私も話に割って入った。
「シャルシャ、興味を持つのはいいけど、ちゃんとここに帰ってきてね!? 行きっぱなしはダメだからね!」
「うん、母さんのところにはちゃんと帰るから。安心して」
 なら、いいんだけど、研究者肌の人って行くところまで行くことがあるな。

「どっちみち、アタシはほかの幽霊のことなんて知らないんで、あまり紹介はできないですけどね。ずっと家の跡地に一人でいたんで、わからないんです」
 勝手にキーワードを作ったらダメかもしれないけど、ロザリーはとことん孤独だったんだよな。

 だったら、人にたくさん会わせてあげるべきなんじゃないかな。

「よし! 今度、フラタ村に連れていってあげるよ!」



 翌日、私はロザリーを連れてフラタ村に行った。
 でも、不安がないかと言えばウソになる。
 だって、幽霊を見たことのない人のほうが多いんだし、怯えてしまうのもやむをえない。ロザリーが避けられて嫌な思いをする危険もあるのだ。

 それでも、ロザリーをこのまま日の目を見ないままにしておくのはよくないと思った。それだったら、少しずつロザリーのことをわかってもらえるように早く動いたほうがいい。十年後に急に幽霊に対する人々の意識がやわらぐなんてこともないだろうし。

 ロザリーもそういうことはわかっていたからか、緊張気味だった。
「姐さん、アタシって受け入れてもらえますかね……?」

「正直、それはわからない。わからないこそ、やるしかないかなって思う。だって、籠もってる場所が高原の家に移っただけじゃ寂しいでしょ?」
「いえ、それでもダチが多い環境に変わったんで、地から天にのぼったぐらいの違いがあるんですけど」
「なるほど……。でも、せっかくだから地域社会にも受け入れてもらえるようにしようか」

 結果から言うと、私の悩みは杞憂で終わった。

「あっ、今度は幽霊さんが家族に加わったんですか」
「こんにちは、フラタ村にほかにもいい幽霊がいたら教えてくださいね」
「お~、またべっぴんさんじゃないか」

 ごく自然に村の人には応対された。
 そのあと、村長のところにあいさつに行って、そういうことを報告したが、「ははは、そりゃそうですよ」と笑って返された。

「だって、皆さん、最初から普通の人間じゃないじゃないですか。今更、幽霊だ怖いぞってならないですよ。我々、普通の人間からしたら、皆さん、同類ですって」
「すいません、自分が特異な存在だってことを忘れてました……」

 何の問題もなく、ロザリーは村に溶け込めそうです。

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