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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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60 新しい家族は幽霊

 結論から言うと、ロザリーのほうの意識を眠らせて、ハルカラの側が出てきた時に、そのハルカラの意識が強くなるように仕向けるという方法が功を奏した。

 泥酔や睡眠で前にいた霊魂の意識が後退して、後ろのものと入れ替わるので、そこでもう一方がいられない状態を作ってやればいいということだ。
 もともとハルカラの体なのだから、ハルカラの霊魂が追い出されることはさすがになくて、後退していたロザリーが飛び出る形になった。

 一回理屈がわかってくれば、そんなに驚きもしないが、方法がわからないからかなり焦った。まず、ロザリーの意識を後ろにやるという発想が取れなかったのだ。

「もう一度試す前に少なくとも調べておきたいけど、もしかするととっととロザリーに布団で寝てもらったらハルカラのほうが起き出してきて、対処もできたのかもしれないね。やっぱり徹夜作業はダメなんだ。能率落ちるし」
「けど、わらわがこっちに召喚された時、風呂場に出てきてなかったら、最後の案は出てこんかったかもしれんぞ。ケガの功名というやつじゃの」

 ベルゼブブはものすごいドヤ顔をしていた。ドヤ顔をするだけの功績を残しているので、別にそれでいい。

 これで事件は無事にすべて解決したわけだが――
「みんな、眠いと思うので、夕方五時までは寝よう。すべてはその後で……」

 私の意見は通って、私達は素直に自分のベッドに入り、夕方になって、またむくりと起きだしてきた。

「え~、あらためて、紹介をいたしたいと思います。今日からこの家に住むことになった幽霊のロザリーです」

 全員がテーブルを囲んで自己紹介タイムをやる。
 ロザリーは幽霊なのに律儀に椅子に座っていた。本人の意志で見えるようにもできるので、今は誰からも見える状態だ。

「ロザリーです。先ほどはご迷惑おかけしました! 仲良くしてやってください!」

 みんなが拍手でロザリーを出迎えた。なんだかんだで、この家のメンバーは適応能力が高いので、すぐにロザリーも違和感なく生活できるようになるだろう。

「ちなみに、この屋敷の中は移動できるの?」
「はい、敷地内なら庭も含めて動けますね。むしろ、庭の外にも出れました。多分ですが、もうどこまででも行けそうです」
 あれ? 建物から動けないんじゃなかったっけ?
「自分が死んだ土地に対する執着が移動によって無効化されたんじゃろう。今のそいつは恨みと関係ない、ただの霊魂というわけじゃ」

 たしかにこの建物とロザリーの恨みとは何の関係もないもんな。
「じゃあ、便利になったわけだね。ええと、部屋だけど、ログハウスエリアの二階空き部屋を使って。使うといっても幽霊なわけだけど、あなたの好みに応じて物置いたりどけたりはするから」
「わかりました! 姐さん、ありがとうございます! このご恩、一生忘れませんぜ!」
 すでに死んでる人間の「一生忘れない」ってどこまで機能するのか謎だが、まあ、言葉の綾だろう。

「あの、差し出がましいですが……料理当番などに変更はあるんでしょうか?」
 ライカは真面目だな。学級委員長タイプだ。
「料理当番って、そもそも調理できないでしょ」
「実はできなくもないですぜ」

 テーブルの上にあるコップがふわふわ浮き上がった。

「こういうふうにナイフや皿を動かせば調理は事実上やれますんで。味は保証できないですけど……」


「そっか。作ってもらえるとありがたくはあるんだけど……う~ん、それって義務として必要なのかな?」
 これにはちょっと私はひっかかりがある。

「母さん、料理当番や掃除当番が求められるのは、人が食事をして部屋も生活の中で汚すから。ロザリーさんは幽霊だから、食事もせず、部屋も汚さない。よって、彼女に義務が発生するのはおかしい」
 堅苦しい表現でシャルシャが言ったが、まさにそういう理由で私は悩んでいたのだ。やれるからといってロザリーはやらないといけないのか?

「姐さん、それじゃ筋が通らねえ! アタシにも当番云々のことは全部やらせてくれ!」

 ロザリーが立ち上がった。正確には浮き上がった。

「アタシはこの屋敷に住むことになったんだ。幽霊だろうと住んでることには変わりはねえ! だったら住まわせてる分にたいする恩義は返さなきゃなんねえ!」

 ロザリーの瞳は一種の情熱みたいなもので燃えていた。

「ごめんね、ロザリー。私が思い違いをしていた。そしたら、やれることはやってもらうね」
 あなたに義務はいらないですって言ったら、うれしい以前に落ち着かないよな。後ろめたいよな。同居人を後ろめたくさせてどうするんだ。

「はい、姐さん、よろしくお願いします! ほかの先輩方も何かあったらおっしゃってくだせえ! 幽霊だからこそできることもあるかもしれねえ!」

「うん、よろしくね~!」
「また、霊魂ならではの意見なども伺いたい」
 シャルシャは本格的に幽霊を研究対象にして何か書くつもりなのではないだろうか。

「ロザリーさんこそ、わからないことがあれば我らに聞いてくださいね」
「あの……あんまり、わたしには憑かないようにしてくださいね……」
 ハルカラにとったら、命に関わることだからな……。でも、幽霊っていうのは見えないからこそ怖いのであって、姿が見えるロザリーは受け入れられていくだろう。

「わらわもまた霊魂に関する資料があったら調べて持ってきてやろう。ま、当面は問題もないじゃろう」
「今回もベルゼブブにはお世話になったね。忙しいのにごめんね~」
「わらわのおかげで解決したのじゃから、お前が呼んだのは正しかったというわけじゃ」
 今度、ベルゼブブに何か贈り物でもしたほうがいいな。かなりお世話になりっぱなしだ。

「よ~し、一段落したし、新しい家族が増えた記念でパーティーをやろうか!」
 けど、席を立つ前に私はロザリーに気を取られた。

 ロザリーが泣いていた。それも号泣と言っていいレベルで。

「親に裏切られたアタシが、血のつながりも何もない皆さんに構ってもらえるなんて……感動してます……」
 ああ、実はこの家って変わり者を受け入れる空間なのかもな。
「長く生きてると……こんな幸せなこともあるんですね……うれしい……」

「そりゃ、長く死んでおるとの間違いじゃろ」
 ベルゼブブがきっちりツッコミを入れた。

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