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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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58 出し方がわからない

 ロザリーはぎこちなくハルカラの手を動かして私と握手した。

「これで交渉成立だね。よろしく!」
 私はできうる限りの笑顔でこたえてあげた。
 だって、ロザリーは絶対に不安だろうし、ものすごく長い時間、ずっと孤独だったはずなのだ。そのメンタルはとことん丁重に扱ってやってしかるべきだろう。

「あっ、ああ……ありがと……」
 照れながら、ロザリーも礼を言った。
「私の家なら部屋の数も多いし、幽霊でもちゃんと生活できるはずだからさ。ほかのメンバーにはまだ言ってないけど、みんなやさしいからどうにかなるよ」

 ――と、なぜかベルゼブブが、深い諦めたようなため息をついた。
「ったく、アズサよ、お前は本当に人たらしじゃのう……。しかも、それを無意識のうちにやっておるから始末が悪いわい」

「あれ、なんかよくわからないんだけど、私、あきれられてる……?」
「これでも、わらわなりに褒めておるのじゃぞ。もしかせんでも、アズサの最強の武器はそのチートな実力ではなくて、そっちなのかもしれんな」
「私、そんなに特別なことをしてきた感覚、何もないんだけど……」
「じゃから、怖いのじゃ。計算高い奴はそれが透けて見えるが、お前は計算しておらんからの」

 何のことかよくわからないが、ベルゼブブの話だとどのみち無意識に私がやっていることらしいから、私がわかるわけがないよな。

「あ、あの……アズサさん、だっけか……? あんたのこと、ねえさんって呼んでいいかな……?」
「見た目としては、こっちのほうが年上か。いいよ。好きなように呼んで」
「アタシ、姐さんにずっとついていきますんで……。姐さんに何かあったら命懸けて守ります!」
「守るって、すでにあなた、死んでるじゃん」

 私は冗談ぐらいにしか受け取ってなかったのだが――
「いえ、こうやって体借りれば動けますんで!」
 ロザリーはそう気合を入れて言った。
 それって、ハルカラが死ぬような気がするんだけど、いいんだろうか……。

 こうして私はハルカラに入ったロザリーを連れて、屋敷まで帰った。
 ハルカラは空を飛べないので、ベルゼブブがライカを呼んで、そのドラゴンの背中に乗せてもらうことにした。なお、ベルゼブブはライカを呼んだあと、眠いと言って、そのまま仮眠してしまった。

「あっ、幽霊のロザリーと言います。ライカの姉貴、よろしくお願いしますっ!」
「ハルカラさんの顔で言われると、違和感ありますね……。目つきが違うので……」
「入っているのは今だけなんで、屋敷についたら、ここから出ますんで」

 そして、すぐに屋敷まで戻ってきた。ライカの飛行能力は本当に助かる。
 ファルファとシャルシャもまだ寝てなかったので、ロザリーとあいさつさせた。
「お世話になります! 姐さんの娘さんですね!」
「うん、よろしくね!」
「幽霊と呼ばれる存在と出会うのは初めて。興味深い」

 この子たち、幽霊はまったく怖くないんだな。というか、ファルファもシャルシャも倒されたスライムの魂が蓄積したようなものだから、ある意味、存在としては幽霊の親戚みたいなものなのかもしれない。幽霊も精霊もどっちも「霊」ってつくしな。

「ロザリーさんの顔も見たいな~。出てきて~」
「この目で幽霊を確かめたい」

「わかりました! それじゃ、自分の姿をお披露目しま――――――――うっ……」

 ロザリーの顔色――厳密にはハルカラの顔色だが――がやけに青くなった。

「ねえ、ロザリー、何かあった? 顔からしてあまりよくない感じを受けるんだけど」
「姐さん、私って憑りつきはしたんですけど……これって、どうやって出ればいいんですかね?」

 ものすごく根本的な問題だった。

「へっ? そういうのってカギの開け閉めみたいな要領で簡単にできないの?」
「いや、なにせ、憑依したことがないもんで……。入ったはいいんだけど、出方はわからないんです……」

 蛸壺漁みたいなものだろうか。入るのはいいが、出られない。

 ただ、笑い話ではすまない。

「これ、このままだと、すごくよくないことになるんじゃない……?」
 ハルカラもずっと操られていたら怒るだろうし、明日の予定もあるだろう。

 私はすぐに寝ているベルゼブブを起こしにいった。
「う~む……なんじゃ? 寝はじめたばっかりじゃのに……」
「ロザリーをハルカラの体から出したいんだけど、どうすればいいの?」
 おそらくベルゼブブなら対処法も知ってるのではないかと踏んだのだ。

「なぬ? そういうのって、すぐに出てこれるものではないのか?」
 うわあ! 私と同じ認識じゃん!
「来て! 来て! 私と一緒に考えて!」
「そんなに引っ張るでない! 痛い、痛い!」

 私はとにかく、ベルゼブブをロザリー入りハルカラのほうに連れてきた。
「出れねえ……。すっぽり箱にはまったみたいに抜けられねえ……」
「これは相性が良すぎたのじゃろうかな……。出れないなんて話は聞いたことがないぞ……」
「あのさ、これってハルカラの健康に不具合とか起こるの……?」
「別の霊魂が丸一日とか入ってるとよくないことになるのう……。最悪、肉体のほうが死ぬぞ……」

 無茶苦茶ヤバい!

 私たちはすぐにテーブルにて家族会議を招集した。
「え~、どうやらハルカラが無事に生還するまでタイムリミット二十時間ぐらいみたいなんで……みんなで知恵を出し合って解決していきたいと思います……。ほんとによろしくお願いします……」

 ロザリーはさっきよりさらに青ざめている。そりゃ、人殺しになるかもしれないんだからな……。

「アタシ、世話になった人を殺すような真似はしたくねえ……。そんな恥知らずなことをするぐらいならもう一回首吊って死んでやるぜっ!」
「ダメだって! そんなことしたら、ハルカラが死ぬだけだから!」

 私はロザリーをなだめる。どうどうどう、どうどうどう。

 これは徹夜で考えることになりそうだぞ……。

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