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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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57 幽霊移送計画

「じゃあさ、ロザリー、ここに残ったら?」

 私はごく普通にそう言った。
 だって、消えるのが怖いなら、それぐらいしか選択肢はないだろう。

「の、残っていいのか、本当か……?」
 うれしいというよりは信じられないといった態度でロザリーは言ってきた。

「もちろん、ここでトラブルを起こしまくるなら、ちょっと待ってってことになるけど、いるだけなら害はないでしょ。食費も光熱費も税金もかからないわけだし。だったら、いいんじゃないかな?」
「ふむ。害はない、か。幽霊の心がけがしっかりしていれば、そういうことになるかもしれんのう」

 ベルゼブブもとくに異論はないようだ。
「えっ……幽霊さんが仕事場にいるんですか……」
 ハルカラは露骨にふるえている。まだ恐怖心を克服できてないらしい。私のほうは相手の姿が見えた時点で、そういう気持ちはかなり薄らいでいる。

「いいじゃない。むしろ、夜とか泥棒とかが入っても追い出してくれるかもしれないしさ」
「それは、そうかもしれませんけど……。いるのかいないのかよくわからないのって落ち着かないんですよね……」
「じゃあ、ずっと実体化しててもらえば?」
「それもちょっと変ですよ! そ・れ・に! 普通の人は幽霊がいるってだけで拒否反応示しちゃって、働きに来てくれないですよ!」

 あっ、言われてみればそうだ。
 幽霊のいる楽しい職場です、働きに来てくださいね――っていうのは無理がある。ここは工場だから幽霊問題自体が解決しないと、営業することができないのだ。ハルカラが慣れただけでは根本的な解決には至らない。

「やっぱ、アタシがいると迷惑みたいだな……。幽霊なんて厄介者だもんな……」
 ロザリーまでネガティブなことを言っている。そんなことないよと言いたいところだが、工場にとって厄介なのは事実だ。これを解決しないといけない。

「あれ、そういえば、あなたってこの工場以外から移動できないの?」
「無理だな……。アタシは自殺したこの家の敷地内から移動したことはねえな……」

 シャルシャが言っていたけど、地縛霊的な存在は動けないんだよな。

「方法はあるけどな」
 ベルゼブブが言った。
「だよね~、そんなにいい方法なんてないよね――――ってあるの!?」
「ある。霊魂に関する研究は魔族のほうが進んでおるからの」とベルゼブブがうなずく。

「ここから動けぬ霊魂を運んでやればいいのじゃ。そんなに小難しい方法は必要もないぞ」
 動けないのなら運べばいい――論としてはわかるが、問題はそれをどうやるかだ。
「教えてくれよ! いったいどうすりゃいいんだ!?」
 ロザリーも興味があるらしい。

「霊魂が生きている人間にりついて、その人間ごと他所へ行けばいいのじゃ。それで適当なところに移動したら、霊魂を引きはがせば、今度はそこから動けぬようになる。人を使った引っ越しじゃな」

「ふうん。憑りつけばいいのか~。あまり、憑りつかれたくはないけど……」

「憑依行動自体は霊魂なら誰でも出来はするはずじゃ。ただ、相手のあることじゃから、誰にでも憑依できるわけではない。たとえば、ほぼ確実にアズサ、お前には無理じゃ。試してみればわかる」

 ベルゼブブの目がロザリーのほうを向いた。

「憑依って、やったことなんてねえんだけど……」

「相手の頭に飛び込む感じじゃ。やってみろ。失敗しても死なんから」

「わかったよ。私のほうは準備OKだから……いつでも来て……」
 私は目を閉じて、それに備える。
「じゃ、じゃあ、行くぜ……」

 パシュン!
 なんか、頭にはじかれたような音がしたと思ったら、目の前でロザリーが荒い息をしていた。

「なんだ、これ……。すごく疲れた……」

「能力の優れた人間は一言で言えば憑依する隙がないんじゃ。自分が完成しておるというかな。あと、自分に絶対の自信があるような奴も難しい。ようは、意志薄弱ですぐに他人に流されるような奴でないと憑依は難しいということじゃな。つまり――」

 ベルゼブブの目がハルカラのほうを向いていた。

「あの……どうしてわたしをご覧になっているんでしょうか……?」
「お前だったら、ほぼ確実に憑依できると思う」
「えっ、え……!? なんか、遠回しに失礼なこと言われてませんか、わたし!?」
「遠回しではない。お前は意志薄弱っぽいから隙もあると思う。だから憑りつかれるのじゃ」
「いろいろと、ひどすぎませんか!」

 ロザリーがゆっくりとハルカラのほうに近寄っていく。
「申し訳ねえが、ちょっと頼むぜ」
「嫌です! わたし、こういう心霊現象みたいなの、ダメなんです! 夜、目が覚めてもトイレに行けなくなるんです!」
「じゃあ、アタシが憑りついてそのままトイレまで行ってやるぜ」
「そういう事態になってる時点で怖いじゃないですか!」

 そんなことを言っている間にロザリーがハルカラの頭にさあっと飛び込んでいった。
 ロザリーの姿がぱっと消えた。

 これって成功なのか?
「おっ、操作できるな。これ、上手くいったんじゃねえのか?」
 ハルカラの声で、だけど、いつもと全く違う口調。
 本当にロザリーが入ったらしい。

「成功したんだ! よかったね!」
「久しぶりの肉体って落ち着かねえな……。しかも、この体、とてつもなく胸が重いぜ……」
 ハルカラ? は自分の胸を下から持ち上げてみた。逆に言うと、持ちあげられるほどの胸があるのだ。

「よしよし、あとはそのまま工場から離れれば万事解決じゃな」
 うん、霊魂を運ぶことはできる。だが、万事解決ってわけじゃないぞ。
「それで、この子をどこに運んだらいいの?」

 それをまったく決めていなかった。

「…………お前の家しかないじゃろ。助ける提案を最初にしたのじゃから、責任持て」
「それもそうだよね……。柳の木の下にずっといてっていうのもひどい話だしね……」
 というわけで――
「ロザリー、私の家で住まない?」
「い、いいのか……? 迷惑じゃねえのか……?」
「歓迎するよ」
 私は手を差し出す。
 ロザリーはぎこちなくハルカラの手を動かして私と握手した。

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