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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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56 幽霊捕縛

「おっ? 逃げるつもりか? そうはさせんぞ! 逃がさんぞ!」

 どうやら、ベルゼブブの言葉からすると、幽霊は怯えているみたいだ。そりゃ、こんなに好戦的な奴が来たら、これはヤバいぞと思うだろう
 さらに付け加えると、ベルゼブブは幽霊をこのまま見逃してやる意識はないらしい。このまま捕縛するぐらいの意図は持っていそうだ。

「待たんか!」
 いきなり、ベルゼブブが羽を伸ばして、ばさばさと天井のほうに飛んだらしい。暗くてよく見えないが、そうみたいだ。
「何!? 戦闘がはじまるの!?」
「違う! こちらからの一方的な虐殺が行われるだけじゃ!」
 悪魔みたいなこと言い出したぞ! あっ……もともと悪魔だった。

「さあ、つまらぬ霊魂よ、わらわをコケにしてくれた罪、あがなってもらうぞ」
 なんでだろう、だんだんと幽霊を応援したくなってきた。そうしないとこの幽霊が悲惨なことになるのではないか……。

「あの、呪われるようなことはしないでほしいんだけど……」
「心配するでない! 呪いというのは霊魂が存在するから起こるのじゃ。それを消滅させてやれば、呪われることだって絶対に起きぬ!」
 ああ! やっぱりこれは人殺しな気がする!

「よし、逃がさぬぞ! 捕まえたのじゃ! カンテラに灯かりをつけよ!」
 私もハルカラも言われたとおりにした。

「うわ! なんかいる!」
 ベルゼブブの隣に新たな人間が存在していた。
 もっとも、人間と表現して正しいのかはわからないが。確実なのは、その人物が十五、六歳の少女で、長い金色の髪をしていて、半泣きだということだ。

「た、助けてくれ……。こんな悪魔が来るだなんて思ってなかったんだ……」
 少女がふるえた声で言っている。
「助けを訴える前に、自分の非礼を詫びるべきじゃろうが! カンテラを消したり、机を動かしたりしたことが攻撃の意思ではないとでも言うつもりか? あぁん?」

 どうやら、ベルゼブブに幽霊が捕縛されたらしい。

「お師匠様、わたし、なぜか見えないはずのものが見えるのですが……」
 ハルカラが呆然としたままで言う。
「もしかして、お酒の飲みすぎで幻覚が見えてきているんですかね……?」
 そんな懸念するぐらい飲んでる自覚あるのか。
「私も見えるから、それはないと思うよ」

「ご主人様もお酒を飲みすぎているんですか……?」
 アルコールを犯人とするところから離れろ。
「おそらくだけど、ベルゼブブに捕まると、隠れることができないんじゃないかな……?」

「正解じゃ」
 ベルゼブブが幽霊をはがいじめにしたまま、降りてきた。
「霊魂は普通は人間どもの目には見えぬが、本人のほうから見えるようにすることぐらいはできる。こやつは助けを求めたほうが得策であると判断したのじゃろう」

「あの、ベルゼブブさん、そしたらその方がくだんの幽霊だということですか……?」
 実体が見えてもハルカラは私の後ろに隠れている。
「詳しくは本人に聞け」

 幽霊に幽霊ですかと問いただすというのは、何かおかしい気もするが、それをしないとはじまらんだろうな。

 私たちはとりあえず幽霊を椅子に座らせた。
 時々、光の加減で半透明になることもあるが、それは幽霊だからだろう。

「あなた、名前は?」
「ロザリーだよ……。昔、ここに立ってた家で自殺した娘の霊だ……」
 ぶっきらぼうな口調でその子は言った。
 話によると、娼館に売り飛ばされそうになって自殺したという噂は本当だったらしい。

「アタシはちゃんとした貴族のところに嫁げるって聞かされてたんだ……。それは庶民の目からしたら、幸せなことだったんだよ……。アタシは町の中ではかわいくておしとやかな娘として評判だったし、そんな夢みたいな話もあるのかなって信じてた……。けど、クソ親父もクソババアも全部騙してやがった……」

 かわいそうに。この子は親にまで裏切られたんだ……。

「町の男に言い寄られたことも何度もあったのにさ……。とっとと誰かと駆け落ちでもしてりゃあ、幸せだったのかねー? まあ、過ぎたことだけどさ」

「話はわかったけど、あなた、本当におしとやかだったの?」
 言葉遣いは荒いし、今もすごく足を広げて座っているのだが。

「あぁ、それは……幽霊として時間が経つうちに、グレた……」
 自分からグレると言うのは、ちょっと恥ずかしいらしく、ロザリーは顔をそらした。
「ありうる話じゃな。年頃の娘が親に裏切られたら、それぐらいの変化はあるじゃろ」
 ベルゼブブからすると、ありえない話でもないらしい。

「ここはアタシのシマなんだ。余所者は入ってくんじゃねーよって、ずっと守ってた……。そこにあんたらがやってきたってわけだ……」

 それでひととおりの話は終わった。幽霊の正体もわかったし、その幽霊も屈服してるわけだし、事件としてはほぼ解決したはずだ。

「それで、ロザリーだっけ、あなたはこれからどうしたいの?」
「えっ……。どうするって……?」

 まだ、この子の未来についての話は聞けていない。一貫して過去のことだけだ。

「ああ、それならわらわが苦しまぬように一瞬で消してやるぞ?」
「それは却下!」
 さらっと、ひどいこと言ってくるな、この助っ人!

「なんでじゃ? 魂があるから苦痛も感じて留まっておるのじゃ。存在を消滅させれば一切の苦痛から逃れることもできるのじゃぞ」
 なんか、仏教の思想みたいな発言だな。でも、消すのはひどいだろ。

「だったら、教会にでも言って聖職者に鎮魂の祈りでも捧げてもらえばよいじゃろう。浄化されて、この世に留まることもなくなるはずじゃ」
 つまり成仏させるってことか。それは一見、正しいようにも聞こえるんだけど……。

 ロザリーは自分の体を腕でかき抱くようにした。

「嫌だ……」
 しぼり出すように彼女は言った。
「アタシ、まだ消えたくねえ……」
 ロザリーの声は幽霊に怯えていた私たちなんかよりはるかにふるえていた。

 だよね。
 消えるのなんて嫌だよね。

「霊魂がこの世に留まっている時点で不合理なのに、わがままを言う奴じゃの」
 ベルゼブブは合理主義的すぎる。物事はそんなに簡単に割り切れないのだ。

「じゃあさ、ロザリー、ここに残ったら?」

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