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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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55 幽霊<魔族

 言ったらバカかと思われるぐらい当たり前なことだが、中は静まり返っていた。

 当たり前だから何も怖がることなどないはずなのに、その静けさが逆に怖いのだ。
 真っ暗な中を進む勇気はないから、明かりはいくつもカンテラを用意して、対処する。
 そういえば、室内の闇を照らす魔法ってあったはずだよな。今度、勉強しておこうか……。こういうところでは必須だ。

「うぅ、何か出そう……」
「あほか。出るからわらわが呼ばれたのではないのか? 何も出なかったら解決に至らんではないか」
 この魔族、合理主義者だな。

「ねえ、ベルゼブブ、手つないでいい?」
「勝手にせい」
 そう言ってベルゼブブは右手を後ろに差し出してきた。やっぱり頼りになる姉キャラだ。

「お師匠様、わたしも手つながせてください!」
 ハルカラも私の右手を取ってきたので、三人、手をつないで進むという妙な格好になった。横一列になったら邪魔なので、体を半身にして奥に進んでいく。

「こんなに連なるとやけに重くなってきたの……。ムカデ人間という魔族にでもなった気分じゃ……。体と体が接続しておる魔族での、初見で見るとだいたい恐怖するぞ」
「こ、怖い話はやめてよ!」
「ほいほい、わかったわ。幽霊ごときが出てきても不覚などとらんから心配せんでよい」

 私は下を向いているからわからないが、ベルゼブブは周囲を見渡しながら歩いているらしい。

「ハルカラよ。ちなみにどのあたりに出るのじゃ?」
「わたしはこの先の部屋で仕事していた時に出ましたね……。明かりはつけていたのですが……」 
「そうか、そうか。じゃあ、そこを重点的に調べるとするかの」
「あの、そこは怖いから、やめにしませんか……?」

「お前ら、いいかげんにせえよ! 調べるために呼んでおいてなんで中止勧告してくるんじゃ! 何がしたいんじゃ!」
 論理的にはまったくもってベルゼブブの言う通りなのだが、こういうのは理屈ではないのだ。なのでハルカラを責めないでやってほしい。

「奥の部屋まで行って見てくる」
「や、やめてください! せめてそこは最後にしましょう! ねっ! ねっ!」
「ハルカラの言うとおりかも……。ここはしりとりでもして場があったまってから行くっていうのはどうかな……」
「お前ら、あほじゃろう……。だいたい、しりとりで場があったまるか。それ、女子同士で話題が何もない時にやるやつじゃ……」

 先頭のベルゼブブはバーサーカーのごとく前に突撃していく。これだったら、もうベルゼブブ一人に任せてもよかったかもしれないが、今更引き返すのも怖いのでどうすることもできない。

 そして、いわくつきの「出る」部屋に私たちは足を踏み入れた。
 その途端、カンテラの火がなぜかふっと消えた。
「きゃああああああああああああああ!!!!!!」
「ひゃああああああああ!!!! ご主人様、助けてくださあああああああああああああああいいいい!」
 私とハルカラが同時に絶叫した。

「うるさいのう! 幽霊よりお前らのほうが迷惑じゃ!」
 ベルゼブブも怒鳴ったのでまた声が増した。

「あっ、でも、幽霊もおるのう」

 さらっと、ベルゼブブが言った。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!! 幽霊いるんだああああああああああああああああ!!!」
「ひええええええええええええ!!!!!!!!!!!! いろいろちびっちゃいますうううううううううううううううううううう! もれますううううううううううううう!!!!!」

「お前ら、うるさすぎるわ! ちょっとは頭を冷やせ! 幽霊じゃぞ! 死んだ女の霊魂じゃぞ! どのへんが怖いのじゃ!」
「いや、それが怖いんだって! むしろなんでそんなに平気なのよ!」

 イラっとしたのか、ベルゼブブが私の手を振り払った。やめて! 余計に怖くなるからやめて!

「見えんから怖いのじゃろう。じゃから、どうにかしてやる。待っとれ」

 こうなったら、このゴーストハンターに頼るしかない。

「おい、女の霊魂! 姿をここに現せ! それぐらいできるんじゃろ!? ずっとここに留まっておるぐらいじゃからできぬとは言わせんぞ! おい! こら! 返事するのじゃ!」
 闇に向かってベルゼブブが叫びだした。

「わらわは上級魔族ベルゼブブじゃ。なお、農相をやっておる。農相の権力を持ってすれば、おぬしの墓を馬糞置き場にすることも可能なのじゃぞ!? お前の思い出の場所もことごとく馬糞置き場にしてしまうぞ!?」
 地味にものすごいイヤガラセだ!

「それに、霊魂にダメージを与えることぐらい、上級魔族には訳のないことじゃからのう。死ぬ時より苦しい思いを味わうことになるぞ? それでもよいのか? 十数えるまでに姿を見せんとぶっ殺すぞ!」
 幽霊にぶっ殺すと脅しかけてる!

「じゅう、きゅう、さん、にい、いち、ぜろじゃ!」
 無茶苦茶はしょった! 十も数えなかった!

 すると、部屋にある机らしきものがガタガタと動く音がした。
「きゃあああ! 幽霊が怒ってる!」
「ほう、机が動くのか。じゃから? 机が動くことの何が怖いのじゃ? それがどういう影響を与えるのじゃ? おい、こら、幽霊よ、言うてみよ」

 ベルゼブブがドスの利いた声で言った。
「何か言いたいことでもあるなら、やってきて要求してみよ。お前の過去にも不幸にも興味などないわ。身勝手に来た人間を怖がらせるならただの害虫と同じじゃ。一切の躊躇なく、駆除してやるぞ?」
 ベルゼブブ、強すぎるだろ。本当に連れてきてよかった。だんだんとこっちの恐怖も落ち着いてきた気がする。

 ちなみにハルカラは私に思い切り抱き着いて、「神様神様助けてください……なんでもしますから、なんでもしますから……」とふるえていた。頼りになってるのは神様じゃなくて魔族だが。

「なんじゃ? 不服か? じゃったら呪ってみるか? 無駄じゃぞ。上級魔族を呪うことなど女の霊魂ごときではかなわんぞ? むしろ、こっちが魔族魔法で呪ってやるがよいか?」
 幽霊に困ってる皆さん、ぜひ上級魔族を連れてきましょう。多分だけど、幽霊にとって最悪の敵だ、これ。
ベルゼブブは幽霊は怖くなかったようです。次回に続きます!

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