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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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53 幽霊退治

 ハルカラは不動産屋と交渉した結果、町の郊外にある土地を買い取って、そこに工場を作り出した。

 工場といっても、日本にあるような巨大な配管が何本も走ってるようなものでも、最新のロボットがラインを動かしているものでもなく、基本的には普通の店舗と変わらない。家内工業のちょっとした拡大版といった感じで、ビンのラベルも手作業で行う。

 なお、工場を作るのにあたっては、ライカが知り合いのドラゴンにまで声をかけて手伝ってくれたおかげで、建物自体はわずか五日でほぼ完璧にできた。

 ハルカラいわく「工費が大幅に浮いたので、高いお酒買い取ります」とのことだったが、そういうのは別に気にしなくていい。ただし、利益が上がったら、また何かおごってね。

 ただ、ハコモノが完成しただけで、工場は立ち上がらない。必要な材料を運んでくるシステムやら備品の準備やらで、しばらくハルカラは大忙しで朝イチで深夜近くまで働いて、くたくたになっていた。

 なお、送り迎えなどはライカがドラゴンになって往復してくれていた。とくに夜道をハルカラのわがままボディで数キロ歩くというのはかなり危険である。

「あの、働き過ぎじゃない? 過労死とかしないでね……」
「いえいえ、疲れても『栄養酒』一本飲めばしばらくは戦えますから。ただ、最近、ちょっと『栄養酒』の一日の消費本数が増えてるんですよね……」

「それ、明らかにまずいやつだよ! 今度から夜八時には絶対帰ってくること!」
「え~と……。それだと、作業が遅れてしまって……」
「じゃあ、人を雇って、どうにかしなさい! 無理して一人で抱え込むと本当にぶっ倒れるよ! 倒れるだけならいいけど、それで死んだらおしまいだよ!」

「お師匠様、ここは譲りませんね……」
 私がかなり気合入れて発言していたので、ハルカラも目を見張っていた。
「いい? あなたは工場の社長になるかもしれないけど、この家では私の弟子だから。あなたの監督はあくまでも私がします。過剰な労働は認めないので、そのつもりで」

 こうして、ブラックな労働状態はなかば強引に改善させて、あとは問題なく工場も稼働するだろうと思っていたのだが――

「社員がまったく集まりません……」
 朝からハルカラはお通夜みたいな顔をしていた。

「なんで? そんなに給料ケチってるの?」
「そんなことないですよ! むしろ、町の一般的な給与からしても明らかに高いものを提示してます。かといって、専門知識をある人しか採用する気がないとかいうわけでもないですよ。基本は流れ作業ですから、ちゃんと学習すれば誰でもできます」

 そしたらほかに何の理由があるんだろう。
 職業が特殊だから敬遠されてるとか? このへんの人はどちらかといえば、保守的だからな。

「出るんです。有名な場所だったらしいんです……」
「出る? 湧き水が?」
「いえ、それも出てくれないと困るんですが。幽霊ですよ」
 ハルカラはわざと怖そうな声を出して言った。

「幽霊ねえ。そんなもの、本当にいるの?」
「はっきり言って、私は半信半疑だ」
「私も本当かよと思っていました。ですが、私も昨日、見てしまったんですよ。夜に作業をしていたら、十五歳ぐらいのショートボブの子が……」

 ハルカラが言うには――
 数百年前、その土地には没落した商人が住んでいたらしい。商人は十五歳の娘を娼館に売って金を得ようとしたらしい。娘は直前まで、裕福な貴族のところに嫁げると聞かされていて浮かれていたらしいが、当日になって娼館に売られることがわかってしまった。彼女は悲観して、首を吊って死んだという。
 その結果、そこで建物を作っても、娘の霊が出てきて邪魔をしてくるのだということらしい。

 やたらと「らしい」が多いが、こういう話って明確な情報が入ってこないものなので、そこはしょうがない。
 そして、最低でもナスクーテの町では有名な話で、そこで働くというだけでみんな嫌がってしまうのだという。

「変にその土地、安かったから変だと思ったんですよね……」
「一種の事故物件をつかまされたのか……」

「つまり、その幽霊がいなくなれば万事解決するんですよ!」
「論としてはそういうことになるよね」
「なので、お師匠様、手伝っていただけませんか?」

「え?」

 私はけっこう嫌そうな声で言った。

「私、そういうの苦手なんだよね……。こう、呪われそうなやつ……」
「魔女なんだからいいじゃないですか! それにお師匠様ぐらい強ければ幽霊だって逃げていきますよ! 除霊してください!」

 簡単に言ってくれるなあ……。

 私の魔法に除霊に関するものなんてないぞ。そういうの聖職者の仕事なんじゃないのか?

 こういうのは詳しそうな人に聞いてみよう。
 ということで、シャルシャに幽霊とは何か伺ってみた。

「幽霊というのは、専門用語では、遊離霊魂と呼ばれている。肉体などから出ていってしまった霊魂の総称と言っていい」
「専門的すぎてわかりづらいから、もうちょっと噛み砕いて」

「この遊離霊魂には二種類がある。一つは自分が死んだ場所からほぼ移動することができずにとどまっているもの」
 これはある種の地縛霊だな。
「そして、もう一つは移動が比較的自由で各地を自分の意思で飛び回っているもの。今回のケースは死んだ場所でばかり目撃されるので前者に当たると思われる」
「つまり、地縛霊ってことだね。対処策はあるの?」

「聖職者のアイテムで強制的に排除することは不可能ではないが、人間に明確な敵意を持っていない限り、聖職者はこういったことは行わない決まりになっている。これは霊魂に対する冒涜とも言える行為だから」

 ならば、私達でどうにかするしかないということか。

 私はハルカラのところに戻って、こう告げた。
「わかった。夜に見に行ってみようか」
「ありがとうございます、お師匠様!」
「ただし……助っ人が来る場合に限る」
「助っ人?」
「ベルゼブブを呼ぶの」

 上級魔族からしたら、幽霊なんて絶対怖くないだろう。
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