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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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52 お別れ会終了

「あの、これは何なんですかね……。『ハルカラさん、これからも頑張ってください』とか書いてる紙も貼ってますし……」

 ハルカラは目が泳いでいる。サプライズは成功だな。
 よし、作戦第二だ。

 ファルファが手紙を持って、ハルカラの前にやってきた。

「ハルカラのお姉さんへ。お姉さんはファルファのためにいろんなおいしいジュースを作ってくれました。面白い植物の話もたくさんしてくれて、ファルファはキノコを見るのがすごく楽しくなりました。ちょっと抜けてるところはあるけど、その分、誰かを怒ることは絶対になくていつも優しくしてくれました。
そんなハルカラのお姉さんが引越していってしまうと知って、ファルファはとても悲しいです。できればここに残って、またいろんなお話を聞かせてほしいです。でも、新しいところでもっと活躍してほしいって気持もあります……。つらいことはいろいろあるかもしれないけど……これからも負けずに笑って生きていってくだ――うっ、うぅっ……行っちゃやだよう……」

 ファルファが感極まって泣いた。泣いてる娘にナイスと言うのもおかしいけど、これはきっとハルカラの心も動いたんじゃないだろうか。

「これ、あげる!」
「あっ、どうも……」
 ハルカラはその手紙を受け取った。

「あの、これはいったい……」

 続いて、シャルシャだ。

「これ、ハルカラさんのことを考えて、描いたよ」

 調薬用の部屋に座っている構図のハルカラの絵。相変わらず、無茶苦茶上手い。

「ええと、その……ありがとうございます……」
 ハルカラも戸惑いながらも絵も受け取った。

「さて、あまり湿った話はやめにして今日は楽しく飲もうか!」
 私は机にお酒を置く。
「三十万ゴールドの葡萄酒『女神の涙』と五十万ゴールドの蒸留酒『栄華』だよ! 大奮発して買ってきたんだから、酔う前にきっちり味わってね!」
「えええ! あのお師匠様、これは何かの間違いでは……」
「間違いじゃないよ! ナスクーテ町に引越す計画立ててるでしょ! だから、今日は門出をお祝いするの!」

 なんかハルカラが急激に青ざめていた。

「何? あなたも泣きそうなの? 別に泣いてもいいよ。ここには家族しかいないんだし」

「明らかに誤解されてます! わたしは引越す予定なんてどこにもありませんからっ!」

 その絶叫に『ハルカラさん、これからも頑張ってください』の『ください』の部分が落下した。

 私達はぽかんとした。

「はい? でも、ナスクーテ町の不動産屋には行くんでしょ?」
「行きますけど、出ていく予定はないですよ」
「じゃあ、何? いい家が見つかった場合だけ出ていくことにするってこと?」
「いえ、だーかーらー、出ていく意志自体がないんですって! 不動産屋に行くのはナスクーテ町に薬や飲み物の工場を作るためですっ!」

 そういえば、ずっと前に工場を検討しているといったような話をしていなかっただろうか。

「あれ……だとすると、すべては私たちの誤解……?」
「そうなりますね。少なくとも、私はこの家に住み続けるつもりですが」

 つまり、お別れ会ではなくなったということだ。

「な~んだ、心配して損した」
 私は肩を落とした。気が抜けたのだ。
「飲み物代だけで八十万ゴールド飛んだよ……」

「アズサ様、すいませんでした。我ももっとウラをとっておくべきでした。飛んだ茶番になってしまいましたね……」
「皆さん、なんかわたしが悪いみたいな空気になってませんか!? おかしくないですか!?」

 だが、こんな時、子供はやっぱり純真だった。

「出ていったりしないでね! ファルファ、うれしい!」

 ファルファがハルカラに抱き着く。
「あっ、ありがとうございます! やっと喜んでもらえた気がします!」
 そうだ。喜ばしいことには違いないのだから、そういう会にシフトすればいいのだ。

「それでは、今から『ハルカラ残留おめでとう会』を開催します! みんな、乾杯用のお酒とジュースの準備!」

 こうして、その日はとにかく豪華な夕食になったのだった。
「あ~、この葡萄酒、実にまろやかで芳醇でたまりませんね~」
「そりゃ、そうだよ。涙して飲んでね。こんな値段の、ほぼ飲んだことないよ」
 せいぜい村での行事に招かれて高い酒を開けてもらった時ぐらいだ。

「料理も無茶苦茶おいしいです。これ、全部わたしが好きなもので統一されてるんですか?」
「ハルカラさんの嗜好に合うように意識して作っていますからね。個人的にはもう少し肉類もほしいのですが。余っても困るので、しっかり食べてくださいね」

 ライカは次から次から料理を持ってくる。一つ一つの皿はそこまで大きくないなと思ったら、数で勝負する作戦だったらしい。

 ハルカラいわく、ナスクーテぐらいなら、どうにか往復で徒歩で通える範囲だし、あくまで自分は社長なので軌道に乗れば自分が毎日行く必要もないのだという。

「ところで、工場を作るってそれって莫大な額がいるんじゃないの?」
「これまでに稼いだ額を投資します。ただ、失敗しても借金は出ないようになってるので、そこは安全ですよ。新天地でやるので上手くいくか不安な要素もたくさんあるんで」
 そこはハルカラは堅実そうだから大丈夫だろう。

「ナスクーテという町は山のふもとにあるんです。なので、地下水がちょうどそこに流れこんでくるから、湧き水が豊富なんです。ということはその水を使えば、『栄養酒』みたいな健康ドリンクを大量に売り出すことが可能になります」
 やはり、そのあたりのことはちゃんと考えていたな。

「それに、フラタ村だと労働力に限界があるんですけど、ナスクーテなら十人ぐらいは社員を雇えそうだなと。最初は慣れてるエルフを連れてくるつもりですが、そのうちナスクーテの人を中心に働いてもらえれば、雇用創出にもなるし、悪くないかなと」
「そっか。町の名物になるぐらいのつもりで、しっかりやってね」
「はい! ばりばり働きますよ!」

 それから三分後にはハルカラは酔いつぶれて、もう建設的な話にならなくなってしまったが……。

「おそらく上手くいくでしょうね」
 ライカが見守るように笑って言った。
「そうだよね。経営は得意そうだから」
 家族の門出を祝うこと自体はできたので、よかったな。
ハルカラの残留が無事に決定しました。さあ、次は幽霊問題ですね。

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