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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフ卒業疑惑編

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50 卒業疑惑

今回から新章に突入です! ハルカラに異変が!? あと皆様の応援で50話まで来れました。ありがとうございます!
「すいません、二日後の食事当番、今日のお師匠様と交換してもらっていいですか?」

 お祭りも空けて、平穏が戻ってきた五日目。そんなことを朝からハルカラに言われた。

「それ自体は別にいいけど、何か二日後にあるの?」

「はい。フラタ村の隣町であるナスクーテ町に行くんです」

 ナスクーテ町はフラタ村から一時間ちょっと歩いたところにある隣町だ。私もたまに行くことはあるが、あくまで「たまに」だ。買い物に行くには遠すぎるし、ものすごく大きな町というわけでもないから、そこでしか買えないものもそんなにあるわけじゃない。

 端的に言って、フラタ村を一回り大きくしたというぐらいの感想しか出てこない地味なところである。
 そりゃ、フラタ村からその程度しか離れてなかったら、独自色があるほうがおかしいので別に何の問題もないけど。

「でも、なんで、そんなところに行くの?」

「ああ、それは下見ですよ。じゃあ、お花に水やってきますね~」

 それだけ言うと、もうハルカラはさっと席をはずしてしまった。
 結局、何の下見か聞きづらくなってしまったな……。

 翌日の昼休み。
 ハルカラはダイニングで何やら紙をぱらぱらめくっていた。
「そうですね~。これぐらいの広さはほしいですね~。いや、いっそのこと、もう一回り大きくてもいいかな~。でも、やっぱり不動産屋さんと直接交渉するしかないですね~」
 そんな声が聞こえてきた。

 あれ、不動産? 土地や建物を買う?
 もしかして――
 ハルカラって、家を買って独立する気なの!?

 実は心当たりがなくはなかった。ずっとハルカラってネタキャラとして相当派手にいじられてたもんな。ぶっちゃけ、その原因を作ってたのはハルカラなわけだけど、そうはいってもいじられる側は楽しくなかったかもしれない。

 とくにハルカラの場合、もともとかなり商売でも成功した社会人だ。しかも、調薬師としても優秀だ。半人前扱いするのなら、出ていくという結論に達してもおかしくない。

 いや、調薬師という点に関しては半人前扱いはしてないはずだよ……。でも……私生活その他が雑なんで、結果的にダメ出しするケースも多いんだよな……。

 どうしようか。
 出ていかないでくれと言ってみようか。
 でも、はっきりと出ていきますと一言も言われてないのに、慰留するのもおかしいんじゃないか?
 それに、社会人が自分の将来をどうしようと、それはその個人の自由だ。大学生になる子供に自宅から通えと言うのとは訳が違う。

 一人で悩んでる間にハルカラはどこかに行ってしまっていた。

「落ち着け、落ち着け……。まだそうと決まったわけじゃないし、何かの勘違いかも……」

 ハルカラが置いていった紙はもろにナスクーテ町の不動産情報だった。しかも、赤でチェックまでつけている。

「うわ! ガチっぽい!」

 と、そこにライカが少し慌てたようにやってきた。しかも、きょろきょろ周囲にも気を配っている。

「あの、アズサ様、少しお時間、よろしいでしょうか?」
「うん、いったい何?」
「まだ確定ではないのですが、ハルカラさん、この屋敷から出ていこうとしていませんか? もし、詳しくご存じでしたら教えてほしいんですが……」
「ライカもそう感じてたの!?」

 ここでする話ではないと思ったので、私の部屋に移動した。

「なんで我がそう思ったかというと――先日、あの人が薬を作る仕事をしている部屋に入ったんです、そしたらそこで、こんなことを言ってたんですね。『次の場所だと、もっと広い面積が取れますね~』と。次の場所ってやはり新居という意味ではないかと……」

「そうだね……。やっぱり、彼女、ここから出ていく気なんだ……」

 調薬師としてはすでに一人前だから、そんなにこっちが教えることもなかったしなあ。師匠らしきことをしてたかというと、怪しい部分も多い。

「少々、ナスクーテ町についても調べてみたのですが、このあたりより土地が低い分、町の近くにある森も深くて、いろんな薬がとれそうなんです。あの人はそれを狙って、ここに引越すつもりなのでは……」

 しばらく、私とライカは黙りこんだ。

「やめないでって言うべきかな……?」
 どうするべきかわからないから、ライカに尋ねる。

「どちらでもいいと思います。そこはアズサ様がお決めになるべきかと。ただ――最終的な決定権はハルカラさんにあります。我々は家族のように生きてきたと思っていますが、本物の家族ではありませんから」

 そのとおりだ。

 しかも、ハルカラは出ていこうと思っているだなんて直接の相談は私にもライカにもしていない。
 つまり、悩んですらいないということだ。意思もそれなりに固いということだ。

「うん、ありがとう、ライカ。私の中で答えが出たよ」
 私は少し寂しげな笑みを見せた。
「それで、その答えというのは……?」
「ちょっと、ここに残ってて。娘二人を呼んでくるよ」

 私は自室で難しい本を読んでいたファルファとシャルシャを連れてきた。

「ええと、まず、今からする話は絶対にハルカラにしてはいけません。いいね?」
「はーい!」「うん」

 娘の同意は得た。

 私はハルカラがこの家を出ていくつもりだろうということを告げた。

「えーっ! ハルカラのお姉さん、いなくなっちゃうの!?」
 ファルファが泣きそうになる。
「ファルファ、静かにして。残念ながらその可能性が高いの。すでに新居にする候補も決めてるみたいだし」

「シャルシャもそうかなって思ってた。ハルカラさん、『わたしもそろそろ心機一転やらないといけないですしね』とか言ってた」
 やはり、再出発を目指しているのか。

 だったら、私達ができることも限られてはいるし、限られていることを全力でやるべきなのだ。

「みんな、これはあくまでもハルカラが自分の幸せのために決めることだから、そこに邪魔するべきではないと思うの。でも、ここから出ていくとしても、いい思い出を作ることはできるよね?」

 ファルファがうんうんとうなずいた。

「だから、明日の夜、サプライズで盛大にお別れ会を開いてあげよう!」

「ちなみに、どうして明日の夜なのですか?」
 ライカ、今のはいい質問だ。

「その翌日に、ハルカラは町の不動産屋さんに行くからだよ。もし、私たちの趣向に感激したらやっぱり残るって選択肢をとるかもしれないでしょ」

 つまり、お別れ会であると同時に、ハルカラを引き止めるラストチャンスなのだ。

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