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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔女、レベルMAXになってた編

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4 冒険者が来てしまった

初日から59位とランキング入りしていました! 本当にありがとうございます!
 いったい誰だ……?

 私の家をノックする人はほとんどいない。

 まず、立地条件が悪い。村からもしばらく歩いたところにある高原なので、来るのが面倒だ。何かの施設の通り道でもないから、ついでに寄るということもできない。

 それに私は村では高原の魔女として尊敬されているため、村人から気楽に遊びに来るということはない。
 王国の将軍様みたいな扱いをされたら、さすがにそれはそれで嫌だけど、ほどよく敬意を示してもらえる分には静かな生活も送れるのでそのままにしていた。
 毎日、誰かが遊びに来るようなことになったら、落ち着いて暮らせないからな。

 社会人だって毎晩のように大学のサークル感覚で友達が来たら、けっこう鬱陶しいと思うが、それと似たようなものだ。ほどほどの距離感が大事なのだ。

 そういった理由から私の家に誰かが来るということはまずないのだ。

 もちろん、子供が急病なので薬を分けてほしいといった理由もあるかもしれないし、そんな時はすぐに駆けつけるけど。

 もし急病人だったら大変なので居留守を使うわけにはいかないから、読んでいた魔導書を閉じて、玄関のほうに向かった。ドアを開ける。

 そこにいたのは四人の冒険者パーティーだった。

 ドアを開けたのは若い剣士といった雰囲気の男性。二十代前半だろうか。

 そのほか、筋肉ムキムキの男剣士に、いかにも魔法使いといったローブの女性、まだ二十歳いかないぐらいの聖職者の合計四人。

「はい、いったい何でしょうか?」

 このへんに強いモンスターでもいないか聞きに来たんだろうか?
 本当に雑魚モンスターしかいないから、熟練の冒険者が来る場所ではない。どこかの宝の地図にこのあたりの洞窟でも書かれていたのかもしれないが。

「あなたが高原の魔女アズサさんですか?」

 リーダーらしい若い剣士が言った。

「はい、そうですが」

「あなたと腕試しをさせていただきたいんですが」

「…………はぁ?」

 私の声が裏返った。

「私、ここで薬草をとったりして細々と暮らしてる魔女ですよ? 私なんかと戦っても何の武勇伝にもなりませんけど?」

「それが、ここにレベル99の魔女がいると聞いたんですが」

 噂広がってた!

 やはりギルドにいた冒険者に聞かれたんだな。地域密着型の冒険者でさえ、このあたりの村や町は巡回するから、そりゃ、広まるか……。

「あぁ、それは誤解ですよ。石板が壊れてて変な数値が出ただけです。私の実力はせいぜいレベル10ぐらいですって」

「ウソをつくのはよくないわ」

 魔法使いの女性が言った。この人は二十代後半ぐらいだ。

「私も近い立場だからわかる。あなたの体からマナの気配があふれんばかりに漂ってるわ。とんでもない大物なのは間違いない」

 げっ! そんなことでわかるのか!?
 なんだ、そのスタンド能力者は惹かれあうみたいな設定……。

 でも、私は絶対に戦わないからな。絶対にだ。
 一回戦ったら歯止めが利かなくなる。

「仮に私が実力ある魔女だと仮定したとしても、あなたたちと戦う理由がどこにもありませんよね?」

 まったくもって正論だ。道場じゃないんだから道場破りされるいわれはない。

「俺達は強くなりたいんです。そのために、ぜひ手合わせを!」

 丁寧な態度ではあるけど、そんなのに付き合う必然性もないぞ……。

 困ったな。この人たちに帰ってもらえないと平穏が崩されてしまう。

 こうなったら、ウソをついて誤魔化すか。

 コホンと咳払いをしてからはじめる。

「実は、私も昔は自分の力に溺れていた時期があったんです」

「そんなことが……」

 思ったより真剣に聞いてくれているな。

「ですが、そこでたくさんの人を傷つけてしまった。私と勝負を挑む人も何人もいて、私と戦って大ケガをした人も命を落とした人まで出た。だから、もう戦わないことに決めているんです」

「やはり、偉大な冒険者にもつらい過去があるんですね……」

「だから、あなたたちと戦うことはできません。わかってください……」

 これでこの人たちは諦めるだろう。

「アズサさんのお気持ち理解しました。これからも俺達みたいな冒険者がよくやってくると思いますが……俺たちは引き下がります」

「えっ……。ちょっと待って……。そんなに私の話、拡散してるんですか?」

 嫌な話を聞いた。

「はい。この地方の冒険者の間ではもう知らない人はいないかと。それにこの土地の冒険者からしたら、高原の魔女アズサさんが最強ということは誇りにもなりますし」

 なんで勝手に郷土の誇りにしてるんだよ……。私のスローライフの邪魔をしないでほしい。

 やむをえない。作戦を変更するか。

「わかった。あなた達とだけ一度手合せしましょう」

「本当ですか!」
 すごくパーティーが湧きたつ。こっちがタレントみたいな扱いだ。

 ただし、交換条件がある。

「でも、そちらが負けたら、高原の魔女はたいしたことなかったと言って回りなさい。私はできることなら戦いたくないんです」

 こくこくと魔法使いの女性がうなずいた。

「さてと、戦うといってもあなたたちに大ケガをさせるのは嫌だから……」

 私は外に出ると、畑仕事用のクワで地面に大きな円を描く。

 厳密な円じゃなくてかなり楕円だが、別にこれでいい。

「ここからはみ出たほうが負け、ということにします。それでいいわね?」

 もちろんノーと言われることはなく、話は決まった。

 これなら風を起こして勝負をつけることができる。
 勿論、その条件は向こうも同じだ。

「私のほうは私が円から出たら負け。そちらは全員が円から出たら負け。そういうことにします。ちなみに一回外に出た人は退場ね」

 向こうに有利な条件だから文句も出ないだろう。

「では、早速はじめ!」

 先手必勝とばかりに魔法使いの子が杖を前に突き出して、何か唱える。

「風よ、今こそ我の下僕しもべとなりて、吹き荒れよ……」

 まあ、風で飛ばしてしまえという発想になるな。私も同じだ。

 ブオオオオッ!

 こちらに渦を巻いた風がやってくる。かなりの威力なのがわかる。どうやら、それなりにハイクラスの冒険者達らしい。

 竜巻の魔法ってこうやって使うんだな。私もステータスの中に持っていたけれど、使い方がよくわからなかった。まあ、氷雪の魔法も適当なことを言ったら発動したので、厳密な決まりはないのかもしれないが。

 対策はないこともない。

 眼には眼を作戦。

「風よ、今こそ我の下僕しもべとなりて、吹き荒れよ!」

 相手と全く同じ言葉を発した。
 ぶっちゃけパクった。著作権は異世界にはない!

 ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!

 相手の数十倍はあるかというような竜巻が発生した。

 そのまま彼らのほうに向かっていく!
 まず魔法使いの子の竜巻を飲み込んで吸収して、そのままさらに加速する。

 相手はみんな驚いていた。それだけ巨大な竜巻ということだろう。
 もう、私が魔法を使った時点で戦意を喪失していると言ってよかった。かわす時間もないだろうし、円の外に逃げれば失格だ。

 よし、これでみんな円の外に出せるな。

 パーティーは全員、その竜巻に飲まれていった。よし、成功した!

 ただ、ちょっと勢いが強すぎたかもしれない。

「きゃああああああ!」
「うあああああああ!」
「助けてくれえええ!」

 パーティー一行が竜巻に巻きこまれたまま――どんどん遠くに飛ばされていく。

 しまった! レベル99の威力を舐めていた……。
 円の外に出せばいいだけなのに、やりすぎた……。

 ただ、竜巻も少しずつ力が弱まってきたようで、パーティー一行はゆっくりとソフトランディングしていった。

 ふもとのフラタ村のあたりに。

「あっ、ヤバい……」

 はっきり言って、一番都合の悪いところに落下した。

 そのあと、確認のため、村に向かった。

「いやあ、熟練のパーティーを竜巻一つで吹き飛ばすだなんて、さすが高原の魔女様です!」
「高原の魔女様の実力をはっきりとこの目で知りました!」
「この村はこれから数百年は安泰ですね! やっぱりレベル99というのは事実なんですね!」

 もう、すっかり私がパーティーを蹴散らしたことが話題になってしまっていた。

 それはそうだろう。あの大竜巻、絶対にふもとの村からも見えたはずだからな……。

 まあ、飛ばされた彼らが全員命に別状なかったのが救いと言えば救いだろうか。
次回は最強の魔女がいると聞きつけて、冒険者よりもっと厄介な何かがやってきます。

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