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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

喫茶『魔女の家』編

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47 喫茶打ち上げ

無事に喫茶店終わりました。
 こうしてベルゼブブが協力してくれたおかげで、喫茶『魔女の家』の稼働にもようやく余裕が出てきて、どうにか閉店時間の夜七時を迎えることができたのだった。

 最後のお客様が帰っていくのを店員全員で見送った。

「「本日はご来店ありがとうございました!」」

 そして、終わったあと、私はベルゼブブに抱きついた。

「ありがとう! ものすごく助かったよ!」
「ああ、おぬしがわらわに感謝しておることはよく知っておる。その感謝の印として、メニューを注文させよ。そもそもわらわは客として来たんじゃからの」

 たしかにそのとおりだった。ずっと客を働かせてしまっていた。

「ああ、もちろんそれぐらいいいよ。じゃんじゃん注文してよ。当然すべてタダね」

「そうじゃな、じゃあ、フードメニューのこのページのやつ全部と、ケーキをこれとこれとこれ、ドリンクをこれとこれとこれ、それにこっちも」

「食べすぎだろ」

「あれだけ働いたんじゃから腹も減るのじゃ。あと、『栄養酒』も二本持ってくるのじゃ」
 そんなのメニューにないが、すぐにハルカラが取りに行った。なんか怖いOGに対するような反応だった。

 フードメニューはライカと私が準備した。その間、ベルゼブブは娘二人と楽しく話していた。

「ほら、ファルファよ、微分と積分について書いてある本じゃぞ」
「わーい! ベルゼブブさん、ありがとう!」
「シャルシャには魔族の歴史についての本じゃ」
「ありがとう、ございます……」

 日本でも姪をやたらにかわいがわるおばさんっているけど、それに近い心境なのだろうか、ベルゼブブはファルファとシャルシャに甘い。いや、私のお願いもかなり聞いてくれてるので、誰にでも甘いのかもしれないが。

 ただ、娘二人は慣れない接客業で疲れが出たのか、本を開いている間に途中で眠りに落ちてしまった。ベッドに運ぶ間に起こしてもかわいそうなので、タオルケットをかけて代わりにする。

 そして、ベルゼブブの前にずらっと料理が並んだ。ついでに私たちの食事用の皿も並べている。食べる暇もろくになかったからな。

「うむ、店を出してもいいだけの味にはなっておるの。洗練されてない部分もあるが、喫茶店で宮廷料理を出してもしょうがないし、これはこれでよかろう」

 ひとまず合格点はもらえたらしい。

「もともと、この近所にある村で祭りがあるというから、見に行くつもりじゃったのじゃ。そしたら、前日に喫茶店を開くというから、そっちもひやかそうと思ったわけじゃな」

「なるほどね。完全に働かせちゃってごめんね」

「あの調子だと、そのうちパンクしそうじゃったし、ちょうどよかったわ。物珍しいのとお祭り気分で村人が来まくったのじゃろう」

「そういうことなんだろうね。想定人数の四倍ぐらい人が来ちゃったよ」

 さっき、ハルカラが売り上げを計算したら想定の四倍だったのだ。会計のことは多分ハルカラが一番明るいから、やってもらった。

 ちなみに会話しながらベルゼブブは黙々と食べている。なかなか元気な魔族だ。

「ちなみに、わらわがここに来たのはほかにも訳があるのじゃ」
 そう言うと、魔族語で書かれている紙をベルゼブブは出してきた。

「私、魔族語、全然読めないんだよね……。しかも、これ、文字がびっしりだし……」

「要約するとこうじゃ。魔族褒章の授与者として高原の魔女アズサが選ばれたので、日程が合えば是非出席をお願いしますということじゃな」
「ああ、魔族褒章ね――ってなんだ、それ!?」

 初耳の単語だぞ。

「そもそも、私、魔族じゃないし! 不老不死で三百年生きてるけど、人間だし!」
「ああ、魔族褒章というのは、『魔族に渡す褒章』ではなく、『魔族が渡す褒章』じゃ。おぬしが何者かは問わん」
 なるほど。日本でも外国人を評価してあげる賞とかあるしな。

「今回のおぬしは平和部門じゃな。ほら、ドラゴンの揉め事を解決したじゃろ。ただ、敵をやっつけただけではなく、恒久的な平和状態を事実上約束させたことが評価された。まあ、推薦したのはわらわじゃがの」

 この人、知らないところでなんかやってた!
 しかし、平和のための活動を魔族が評価してくるって、魔族のイメージからはずれすぎてるな。

「時期はもうちょっと後じゃが、せっかくなので、魔族のところに遊びに来るがよい。嫌になるほど歓待してやろう」
「じゃあ、行きます。いくつか恩もこうむってるし、断るのも悪いし」

「うむ。それはよかった」

 ただ、ライカは慎重な性格なので何か懸念点があるらしい。顔にそう書いてあった。

「あの、魔族の国家に行って、我々は安全なんでしょうか? 全員がベルゼブブさんみたいな方ならいいのですが」
「人間と戦争をしようという連中は現在ほとんどおらんから大丈夫じゃ」

 ベルゼブブの口ぶりだと何も心配いらなそうだ。気分転換にはちょうどいいだろう。
「わかりました……。ただ、けっこうアズサ様は巻き込まれ体質ですので、ちょっと不安ではありますが……」

「ええっ! なんでライカ、こっちにダメ出ししてくるの!?」
 ライカが反抗期だよ!
「ダメ出しではありません。我はもちろんアズサ様を信頼しております。でも、巻き込まれ体質なのは事実です。事実は事実なんです」
 こう、きっぱりと言われると反論も難しいな……。

「それに、やらかし体質の人もいますし」
 ライカがちょっと冷ややかな目でハルカラに視線を送った。
「えーっ! 今度はこっちに火の粉が飛んできました!」

「ハルカラさん、魔族の方を怒らせたりしないように、ちゃんとやってくださいね。とくにあなたはアズサ様と違って、自分の身を自分で守れないんだから注意してくださいね」
 なんか、ライカが保護者みたいだ。

「大丈夫ですって。私、旅行慣れしてますし~。最初に違う州に行った時も途中で旅費盗まれましたけど、アルバイトして路銀貯めてちゃんと帰りましたし~」
「盗まれたんかい!」
 思わず、突っこんだ。

「いえいえ、はした金ですから。その次に長期旅行に出た時も、ちょっと怖い人たちの集団に囲まれただけで、ちゃんと警備の兵士さんたちに助けてもらえて何もされずにすみましたし~」

 ライカが、私のほうを見て「ほら、心配するべきでしょう」と言った。

「そうだね……。その時は注意するよ……。主にハルカラを……」

 たまに今まで無事だったからきっと次も無事であるという論理展開をする人がいるんだけど、明らかにハルカラはそういうタイプだった。

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