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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

喫茶『魔女の家』編

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46 新しい店員大活躍

ベルゼブブ、キャラを演じます。
「ところで、給仕服はあるのか? この格好でもやれんこともないが、どうせならそういうひらひらした服を着たほうがよかろう」
 やたらと乗り気だな。もしかして、着てみたかったのだろうか。

「汚した時用の予備が一着だけあるから、それを着て。今回用に作ったやつじゃなくて、お店から借りてきたやつだけど」

 空いている部屋で着替えてもらうことにした。
 待つこと数分、ベルゼブブが「大丈夫じゃぞ」と言ってきたので、部屋に入った。

 なるほど、しっかりと給仕服を着こなしたベルゼブブがそこに立っていた。
「サイズ的にはぴったりじゃったぞ。なかなかよいではないか」

 本人も姿見で服装をチェックしていた。やっぱり、この人、楽しんでるな。

 ただ、一点、何か違和感があった。

「あっ……羽が服から出てる……。それ、借り物なのに穴空けちゃってる!」
「いや、これぐらいの穴、修繕の魔法で回復させられるじゃろう」
「えっ、そんな便利な魔法あるの? 聞いたことないけど」
「おぬしが知らんということは、魔族の中でしか伝わっておらんのか。じゃあ、今度本を持ってきてやろう」

 魔族ってなにげに進んでるな。そんなことまでできるのか。修理業者は商売あがったりな魔法だけど。

 ベルゼブブは腕まくりをした。

「さてと、まずは何をやればよいのじゃ? 上級魔族の接客術を見せてやろう!」

「ええと、じゃあ、お客さんのメニュー取ってきてもらえる? テーブルごとに小さく番号の紙貼ってるから、それでテーブルナンバーはわかるし」

「うむ、任せよ。十人分の仕事をしてやろうではないか」

 颯爽とベルゼブブは戦場(あくまでも比喩表現です)に突っ込んでいった。

 新たな店員の登場にお客さんの視線がまた集中する。

「し、新人さんが登場した!」
「これまでの店員さんの中で最も気品にあふれているんじゃないか」
「いや、むしろ軍人みたいな凛とした空気が出ている!」

 たしかに上級魔族のベルゼブブはとにかく歩き方一つとってもサマになっている。動きにまったくの無駄がないし、背筋もぴんと伸びていて、とてつもなくできるビジネスマのようだ。

 事実として、魔族の中ではキャリア官僚みたいなポジションのはずなので、そんなに間違ってないはずだ。

 しかし、一点、不安なところもあった。

 普段から偉そうなベルゼブブが接客なんてことができるんだろうか? お客さんに「おい、お前」なんて言ったらまずいことになるぞ。

 ベルゼブブがつかつかと水の入ったグラスをトレーに載せて、入店したばかりのお客さんが座るテーブルにやってくる。
 大丈夫か? ちゃんとやれるか?

 お客さんも妙に偉そうなオーラの店員が来たぞとちょっと構えていた。子供なんて怯えている。

 けれど、そこから予想外のことが起こった。

 ベルゼブブの表情が、とてもにこやかでフレンドリーなものに変わったのだ。

「いらっしゃいませ~♪ お水です! 本日は『魔女の家』をご利用いただきありがとうございます! ご注文の品はお決まりになりましたでしょうか?」

 見事な対応! 別に練習とかしたわけでもないはずなのに!

 さらに、「その甘いお菓子ならこちらのお茶が合うかと思いますよ」などとちゃんと提案もしているレベル。ベテラン店員さんの技術だ。

「はい、では、ご注文うけたまわりました! 少々お待ちくださいませ! 本日はご利用いただき、ありがとうございました!」

 ついに子供のお客さんが「お姉ちゃん、きれい~!」と好意まで示しはじめた。

「ありがとうね。君も大きくなったらかっこよくなれるよ。じゃあね! また料理を持ってくるから待っててね!」

 自分は夢を見ているのだろうか……。
 てっきり、わらわは偉いのじゃ。わらわの負担にならんようなシンプルなものを注文して、とっとと帰るのじゃとか言うかと思って心配していたのだが……杞憂も杞憂だった。

 しかも、~~のじゃっていう口調すら変えて、やり手ファミレス店員みたいなものにしている。そこのアイデンティティまで変えてしまえるのか……。

「厨房さん、ハーブティーとニンジンのシフォンケーキセット、果実ミックスジュース、ツー、入りまーす!」
「わ、わかりました……」
 厨房のハルカラがビビっていた。

 そのあと、ベルゼブブと顔を合わす機会があった。

「どうじゃ、なかなかよく働くであろう?」
「あなた、店員の時は口調まで変わるんだね……」
「わらわが偉そうにしておるのは、偉そうにして当然の立場である時だけじゃ。店員が客より偉そうにしてどうするのじゃ? そんな道理もわからぬほど、わらわは愚かではないぞ」

 ものすごい正論が来たので、とくに何も文句を言うこともない。

「おっと、また果実のクレープ包みのオーダーがあったの。さて、チョコレートソースを使って、イラストでも描いてやろうかの」
「あなた、そんなこともできるの!?」
「わらわに不可能はないのじゃ」

 ドヤ顔でベルゼブブは言った。

 そのあとも、ベルゼブブはものすごく高いところからカップにお茶を注いだりとか、カップの上で泡をいじって絵にしたりとか、ばしばしパフォーマンスを見せていった。

「アズサ様、とんでもない助っ人が入りましたね……」
 ライカはベルゼブブが手を大きく上げてティーポットからカップにお茶を淹れているところを見ながら言った。
「いや~、やっぱり、困った時はお願いしてみるもんだね……。一人で抱え込んだらダメなんだね……」

 十人分の仕事をするっていうベルゼブブの言葉はまったくもってその通りだった。

 おかげさまで、喫茶『魔女の家』のお客様満足度はさらに上昇したのだった。

「ハーブティーですね! どうも、ありがとうございます!」

 またベルゼブブの明るい声が聞こえてくる。

 冷静に考えたら、上級魔族が普通に接客してる喫茶店って前代未聞だな。

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