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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

喫茶『魔女の家』編

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41 祭りの準備

 私達はいつものようにのんびり歩きながら村を目指した。

 ただ、途中で一仕事することにした。
 この家族の仕事と言えば、ずばりスライム退治だ。

 村に行くまでの道中にもスライムが出てくるので、これをきっちりと倒す。

「みんな、スライム見つけたら、倒して魔法石ゲットしてね」

 五人分の外食費用を考えると、最低でもスライム二十五匹は倒しておきたいところだ。一匹あたり二百ゴールド、日本円で約二百円の魔法石が出る。
 村のお店はそんな高級店ではないので、一人頭千ゴールドぐらいで外食はできるが、飲み物代などを考えると、もうちょっと倒しておきたい。別にお金に困ってるわけでもないけど、どうせなら、その日使うお金はその日のうちに稼ぎたい。

「スライムならわたしでも倒せますからね~」
 ハルカラも運動みたいな感覚でスライムをぼよんぼよん殴っている。

 ただ、ファルファからストップがかかった。

「ハルカラのお姉さん、それはいいスライムだから倒したらダメだよ」
「え、これはそうなんですか……?」
「そうそう、あっちにいるスライムは悪いからやっつけないとダメだよ。ほら、あっちに二匹いるうちのぶよっとしてるほう」

「ええと、こっちですか……?」
「そっちじゃないよ! それもいいスライムだよ!」
「区別が難しいですよ……」

 私も善と悪のスライム、どこがどう違うのかまだあまり自信がない。

「ハルカラさん、色が薄いスライムは悪。色が濃いのは善。そう覚えればいい」
「シャルシャちゃんの言葉はわかるんですけど、濃さの区別も難しいような……」

 それでもスライムはけっこう駆除できて、合計三十八匹やっつけることができた。
 これで料理店で食べるお金もだいたい足りるな。

 そして、フラタ村に着くと、なにやら各所で飾りつけをやっていた。
 カラフルな布を壁に貼り付けたりして、村の通りもなかなか派手な感じになっている。

「あっ、そうか、もうすぐ踊り祭りか」

 ちょうどそういう時期だったなと思いだした。

 踊り祭りというのはフラタ村で行われる伝統的な祭りのことだ。ただ、伝統的とはいっても、私がここに住み始めた頃はまだやってなかったが。
 だいたい二百五十年ほど前から開催されるようになって、そのまま定着した。普通の人の感覚からすれば、二百五十年続いていれば、それは伝統的だということになる。

「アズサ様、それはどのようなお祭りなんですか?」
 ライカもまだ見たことがないからわからないよな。

「村の広場や高原でね、自由参加でどんどん踊っていくの。そんな難しい振付とかはなくて、音楽に合わせてフリースタイルでいいんだけど。もちろん踊らなくても出店もけっこう出たりしてるから楽しめるよ」

「ほう。そういう民俗があるのですか。なかなか興味深いですね」

「民俗というとやけに堅苦しくなるけど、気楽なお祭りだよ。元は収穫を大地の神様にお供えして、また来年もよろしくお願いしますって言うものらしいんだけど、そんなことを気にしてる人はほぼいないしね」

 運動ってストレス発散になるし。一日中踊って、また頑張るぞーって英気を養うのだ。

「あっ、魔女様ご一行じゃないですか」

 いつもバターを買うお店のおじさんが声をかけてきた。おじさんもカラフルな布を壁につける作業中だった。

「もうすぐお祭りですね」
「そうですよ。そうだ、魔女様も何かお祭りでやったりしませんか? 魔女様のイベントも大歓迎ですよ。もちろんこれまでみたいに見物だけでもうれしいんですけど」

「あ~、なるほどね。でもね~、お祭りそのものに関与するのは、ちょっと控えてるんですよね。それをやると私主導の祭りになりかねないから……」

 一言で言うと、村の自主性が失われる危険がある。

 だって、こちとら祭りが始まる前から住んでいる魔女である。そんな存在が何か祭りでやると、村の人も何も言えなくなる可能性が高い。
 そうなると、魔女がやる祭りに村の人が従うという構図になりかねないのだ。

 自分が村に君臨するようなのは嫌だから、祭りの運営には参加しないスタンスを貫いていた。もちろん、出店を見たり、人が踊ってるのを見たり、ちょっと踊ったりとか、そういうのはやっていたが。

 でも、今年は少し事情が違った。

「お祭り、楽しそう! 甘い飴の屋台も出るかな!?」
「祭礼から村人の心性を探ることができる。祭礼の研究は歴史学的にも重要なもの」

 ファルファとシャルシャが関心を示しているのだ。関心の対象に大幅なズレがあるが。

「お祭りですか。エルフの祭りでは祭り専用ドリンクを売って、稼いでましたね。二日酔いを防止する植物ドリンクを出したら、飛ぶように売れたんですよね。また売ろうかなあ。祭りだから値段高めでも売れるし、あれ、けっこうボロい商売なんですよ」

 ハルカラも微妙に記憶が不純だが、それなりに祭りに気は向いているらしい。
 あと、ライカも祭りの準備風景をいろいろと眺めていた。

 家族が急激に増えたもんな。
 せっかくだし、祭りへの関わり方も変えてみようかな。

 とはいえ、家族で出し物をやりますというのはハードルが高いし、そっちにかかりっきりになると、家族がごく普通に祭りを楽しむ余裕がなくなってしまう。それは本末転倒というものだ。

 何かいい落としどころはないものだろうか。

「魔女様、前日祭もありますし、そっちで何かというのでもよいですよ」
 バターのおじさんが言ってきた。
「そうですねえ、たしかにそれなら祭りのメインとはかぶらないけどなあ」

 すぐに答えは出ずに私は行きつけの料理店、『冴えた鷲』に入って、みんなでちょっと豪勢な夕飯を食べた。

 今の時期はカモ肉のローストが出ていて、これが塩加減も絶妙だ。そんなにお酒を飲まない私でもついつい飲んでしまう。ハルカラもやたらと酒を飲んでいた。

「ハルカラ、飲むのはいいけど、前の結婚式みたいに酔いつぶれないでよ」
「つい、果実酒があると飲み比べちゃうんですよね。植物のドリンクは自分でもたくさん作るんで」

 ハルカラはエルフの調薬師だけあって、そのあたりの知識はかなりのものがある。薬用でないものでも、相当なんでも作れる。

 と、その時、ひらめいた。

「ねえ、ハルカラ、ドリンクってお酒じゃなくても何種類も準備できる?」
「はい、このへんの森にある果実だけでも、いくつか試作してますし、もっと健康志向のキノコのエキスを抽出したものも出せます」

 じゃあ、できそうだな。

「前日祭に喫茶『魔女の家』をやろう!」

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