挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ドラゴンの結婚式に行った編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

41/282

39 ゆったり家族温泉

一仕事終えたので、今回はゆっくり温泉に入ります。
「いいよ。膝枕ぐらいいくらでもしてあげる。はい、頭載せなさい」

「変なことを申してすみません……」

 遠慮がちにちょこんとライカは私の膝に頭を置いた。

「昔から運動は姉より我のほうができて、ケンカも我のほうが強かったんですが、何かあると姉の膝枕で寝ていた気がするんです。ちょうどよい硬さというか……」
「なるほどね。それで、お姉さんはもう結婚しちゃったし、奥さんにそれをお願いするのは夫にも申し訳ない、そんなところ?」

「そうですね……。それがかなり答えに近い……です……」
 ライカは気恥ずかしさに答えた。

 いっつも気丈に真面目に生きていても甘えたい時もあるよな。

「師匠じゃなくてお姉さんと思ってもらってもいいけど」
「いえ、あくまで、今は特例ということで……」
「じゃあ、ゆっくり特例を満喫して」

 そういえば、娘はいたけど、妹はいなかったからな。ライカを妹みたいに思うのもいいかもしれない。

 しばらく私とライカは不思議な時間を過ごした。

 三百年生きているんだ。こういう、どこに分類していいかよくわからない時間があってもいいだろう。

 ――と、なんか会場の奥ががやがやしていた。

 よく見ると、ハルカラが会場の床で寝ていた。
 何してんだ、あの子……。

 ファルファとシャルシャが声をかけているが、目を覚ます様子はないらしい。

「ハルカラのお姉さん、起きてー!」
「ハルカラさん、汚いよ」
「うい~、わたしの果実酒が飲めないって言うんですかぁ~うい~」

 会場で今一番目立っていた。確実に新郎新婦より目立っている。
 おいおい、あんまり恥をかくようなことしないよ……。

「ったく、世話の焼けるエルフじゃのう」
 すると、そこにベルゼブブがやってきて、ひょいとハルカラを背中に担いだ。
「どっか、ベッドかソファのあるところまで運んでやろう」

 あの人、本当にいい人だな……。魔族ってあんなにいい人で許されるのだろうか?

 しかし、ハルカラはそんな善意で話を終わらせないほどに、ぽんこつだった。
 ハルカラの顔が急に青くなった。

「うっ……気分が悪……吐きそうです……」
「なっ! おい! 背中に吐くでないぞ! 絶対に吐くでないぞ!」
 ベルゼブブのほうもかなり青ざめた。

「そんなこと言われても、確実に上がってきてます……」
「吐いたら、八つ裂きにして魂まで焼き尽くすからな!」
「こ、殺されますっ! あ、まずい、まずい! うっ、うっー!」
「トイレは! トイレはどこなのじゃー!」

 結局、二人はトイレに消えていった。
 ハルカラが殺されなかったから、おそらく間に合ったのだろう。

 二次会は最後に新郎新婦を祝福する歌をみんなで歌って終わった。ドラゴンの民謡で、なかなか陽気な歌だった。

 さて、もう帰る頃合いかなと思ったのだが――

「せっかくじゃから、お前ら、火口の宿に泊まっていけばよいのではないか」

 そんなことをベルゼブブが言った。

「あれ、そういえば温泉もあったんだっけ?」
「うむ。というか、温泉があるから、わらわは泊まりに来ておるんじゃぞ」
「よし、泊まる!」

 ライカに家族全員で泊まりたいと言ったらすぐに手配してくれた。

 私は今回の騒動を解決した英雄ということで宿代もタダにしてもらえた。



 そして私たちは現在、温泉にどっぷりつかっている。
 火山があるだけあって、宿には露天風呂がいくつもあった。しかも、部屋専用の立派な露天風呂があるという豪華仕様だ。

「ファルファ、平泳ぎが得意だよ~!」
「犬かきしかできないよ……」
 娘二人は広いお風呂でかなりはしゃいでいた。
「こら、お風呂で泳いじゃダメ――ってこともないのか。これ、部屋風呂だしな。泳いでもいいけど、のぼせないぐらいにしなよ」
「はーい!」「うん」
 了承したという返事が来たので大丈夫だろう。

 お子様でないグループはみんなのんびりと湯につかっていた。

「ドラゴンにとってはあまりこういうお風呂も珍しくないのですが、みんなで入ると楽しいものですね」
 ライカは私のすぐ右隣に座っている。

「そうだね。本当にいいお湯だね」
 私も今日は戦闘ではりきったので、こうして疲れを癒せるのはありがたい。

 ちなみに左隣のほうにはハルカラが座っている。
「酔い醒ましには熱いお風呂がいいですね~。気持ちいいです~」
「ハルカラも何度もひどい目に遭っていたみたいだけど、終わりよければすべてよしってことで、プラスに考えなさい」

「はい、わかりました~。あれ…………どうやらわたし、のぼせてきたみたいです……」
「終わりもとくによくなかった!」

 ――と、後ろから何者かがハルカラを引っ張り上げて、岩場に寝かした。
「ったく、そこで涼んでおれ。露天じゃからじきに楽になるじゃろう」
 やっぱりベルゼブブだった。

「部屋は別なはずだけど、今更そんなこと気にしてもしょうがないよね。横空いたからどうぞ」
「うむ。そうさせてもらうぞ」

 ハルカラが抜けたところにベルゼブブが収まった。

「おぬしらのそばにおると、面白いことが起こりそうで楽しいのう」
「一概に楽しいと言いづらいことも多いけどね。でも、今回はあなたのおかげで助かったよ。こっちの町が守られたのはベルゼブブのおかげだし」
「何度も言うが、ブルードラゴンを退治したのは、おぬしらのためにやったんではなくて、結果論じゃぞ。感謝の意を示すのは勝手じゃがな」

「じゃあ、勝手に感謝するよ。それに頼んだらどうせ手伝ってくれただろうし」
「ま、まあな……。それより、また一対一で勝負させるのじゃぞ」
「うんうん、わかってるよ、お姉ちゃん」


 変な間ができた。


 私も言ってから、あれ? と思った。
「なんで、わらわがお姉ちゃんなのじゃ……?」
「いや、あなたって頼んだらいろいろ手伝ってくれるし、世話焼きだし、なんというか、お姉ちゃんぽいから……お姉ちゃんって……ぷっ、ぷぷ……」

 それから、私は声を出して笑った。
「そうだ、そうだ。娘二人がいて、ライカが妹で、ベルゼブブがお姉ちゃん、そんな家族もいいよね」

 長らく一人でスローライフを楽しんでいたが、家族でのスローライフも悪くないじゃないか。むしろ、すごくいい。

「我は妹ですか……わかりました……ね、姉さん……」
「こう、ライカに呼ばれるのもなかなかオツだね」
「手がかかるということでは妹じゃのう。間違いではないな」
 ふうとベルゼブブもため息をついてうなずいた。

「ママ、すごく楽しそう!」
「母さん、いい笑顔になってる」
 娘も私がうれしい気持ちなのがわかるらしい。

「おぬしよ、しかし、そうなると一人、残っておるのではないか……?」

 ベルゼブブが後ろに目線を向けた。

「は~、夜風が酔いものぼせたのも冷ましますぅ……」

 あっ、ハルカラが残っていた。

「ハルカラは……ええと……手のかかる後輩……?」

「お師匠様、それはないですよー!」

 ハルカラ以外のみんなが爆笑した。
 笑いが絶えないのはいい家族の証拠だ。
ドラゴンの結婚式編はこれで終わりです。次回から新展開に入る予定です!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ