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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ドラゴンの結婚式に行った編

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34 高原の魔女がキレる

魔女、久しぶりにレベルMAXの本領発揮です。悪い奴は許さない!
 ドラゴンの抗争はすっかり激戦になった。
 互いに息を吐きあったり、手や尻尾をぶつけて物理的にダメージを与えにいったり。図体が大きなもの同士なので、どことなく泥仕合の雰囲気もあるが、破壊力のほうはすさまじい。

 私は娘二人の手を握って、ゆっくりと戦場の中心部からの離脱を試みる。私だけなら加勢してもいいところだけど、さっきみたいなコールドブレスが直撃すると、娘やハルカラの命にかかわることになる。

 時々、流れ弾みたいなコールドブレスがぶつかりそうになるので、火炎を発して食い止める。

「本気の殺し合いって様子じゃなくて、イヤガラセみたいだけど、それにしてもドラゴンがやってるから規模が大きいね。普通の人間が入れば、普通に死ねる」
「あぁ……わたし、もうダメです……足がふるえて動けなくなりそう……」
「動けなくなったら死ぬよ。無理矢理でも歩いて」
「わ、わかりました……」
 ハルカラは半泣きだが、ここは我慢してもらうしかない。

 さてと、どこが安全かっていうことだけど、ひとまず前に出るよりは後ろに下がるほうがいいか。
 とはいえ、後ろのパーティー会場のほうもブルードラゴンが突っこんでいるところがある。相手は空を飛べるわけだから、背後から回りこむようなことも当然できるわけだ。

 パーティーの皿がひっくり返ったり、踏まれたりしている。
 う~ん、これはなかなかイライラするな。人の幸せを妬みたい気持ちだけなら理解できなくもない。聖人君子じゃなければ、そういう気持ちも抱く。でも、本当にぶっ壊すことは許されない。
 ふざけたことするんじゃないと叫びたくなる。もっと言うと、参戦したくなる。

 だけど、今は非戦闘員を守るのが先だ。血と暴力の世界に踏み入るべき時じゃない。ゆっくり、ゆっくりと撤退戦略をとる。

 ライカは新郎新婦と炎を吐きながら戦っていた。
 私に勝負を挑んできたことがあるだけあって、ライカは善戦している。レッドドラゴンの中では最強だったんだろう。女のドラゴンは男のドラゴンよりひとまわり小さいのに、男のドラゴン二体とも渡り合えているぐらいだ。

「我が弟子よ、しっかりやるんだぞ」
 まだ、被害を受けてない、ちょっとした木立のほうに移動する。
「ファルファ、シャルシャ、ここなら、まず大丈夫だから、もう少し待ってね。絶対、お母さんが助けてあげるからね」
「うん、ファルファ、我慢する……」
「いい子だね、ファルファ」
 ファルファは泣きそうになるのを必死にこらえている。

「母さん、心配かけてごめんなさい……」
「シャルシャ、謝るところがおかしいよ。シャルシャは何も悪いことしてないでしょ。謝らなくていいところでは謝らなくていいんだよ」
 少しシャルシャは真面目すぎるところがあるな。でも、今は助かることのほうが大事だ。

 ハルカラは何やらぶつぶつ、変なお経みたいなものを唱えていた。
「ハルカラ、それは何?」
「これはエルフに伝わるおまじないです……。森の中で獣に襲われることなく絶対に無事にたどりつけるというものです。お祖父さんの話だと、これを唱えて森で危険な獣にあった者は誰もいないんだとか」

 わあ。なんか、フラグっぽい……。

 私たちの真ん前にブルードラゴンが降り立った。
 それも、ひときわ大型の奴だ。視線もこころなしか鋭くてなおかつ冷たいものに見える。

「お前たちもロッコー火山のレッドドラゴンの仲間だな」
「仲間だったらどうだって言うの?」
「ここで足の一本でも引きちぎってやる。お前らが傷ついたら、レッドドラゴンの結婚式もいよいよダイナシになるだろうからな」

 その言葉にカチンと来た。

「悪いけど、ここで大ケガしてもら――」
「あんた、イヤガラセのために、こんな小さな子(五十年生きてるけど)を怖がらせるつもりなの? いい歳してその精神構造、ヤバくない? どれだけしょうもない人生送ってるの? あなた、何のために生きてきたの? 小さな子怖がらせましたーって言って誰に胸張るのよ!」
 あまり、私は熱くならない性格なのだが、久しぶりにキレたかもしれない。

「えっ、だってそのためにわざわざこんな遠方の山まで――」
「そんなの、何の理由にもなってないだろ!」

 私はそのドラゴンにさっと近づくと、ドレスなことも構わずに足を振り上げて、蹴った。
 ドゴッ!

 明らかにドラゴンが痛みで顔を歪ませた。
 そんなんじゃもちろん収まらない。なぜなら、こいつは娘を傷つけると自分から申告したからだ。そんなものを母親として許してやれるわけがない。
 今度は右手でパンチ。
 バギッ!
 反撃の隙も与えずに連続攻撃。もう、攻撃のチャンスをやるつもりはない。

「い、いたっ……な、なんだ、この女……どういうトリックなんだ……?」

 トリック? そんなものはないさ。レベルが99なだけだ。

 空中浮遊でドラゴンの顔まで浮き上がると、顔を目がけて連続して蹴りを加えた。
 最後に鼻の横からアッパーカット。

 どうやら脳震盪を起こしたらしく、そのドラゴンは地面に倒れていった。
 ひとまず、非戦闘員を危機から救うことには成功した。
 このドラゴンはもうよだれ垂らして気絶しているし、しばらくの間は戦闘もできないだろう。

「ママ、強い! すごーい!」
「母さん、尊敬する……」
「ありがとう、二人とも。二人が応援してくれたら母さん、もっとはりきっちゃうよ!」

 そこで、ふっと思いついた。
 ここから木立のほうに敵のドラゴンは来ていない。
 つまり、ここから敵がいるほうをすべて制圧すれば、絶対に娘に被害は及ばない。

 よし、暴れてやるか。
 敵の目的がイヤガラセなら、それを叩き潰してもなんら心も痛まないし。
 百年、二百年忘れられない心の傷を残してやる。高原の魔女を怒らせた報い、受けてもらう。

「ハルカラ、ファルファとシャルシャを連れて、どこかに隠れてて」
「わ、わかりました! あれ、お師匠様は出ていっちゃうんですか……?」
「大丈夫、こっちには敵のドラゴンが一匹も来ないようにするから」

 私は倒れているドラゴンの尻尾をつかんだ。
 こいつが目を覚ます可能性もゼロじゃないから、あっちまで運んでいくか。
 私はそのドラゴンを引きずりながら、戦場のほうに駆けていった。
次回もアズサが暴れます。

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