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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフが来た編

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27 ベルゼブブはすでに来ていた

ベルゼブブが来たというかいました。
「もしかしてだけど…………………………………………そのハエじゃない?」

 私はそのハエを恐る恐る、指差した。

「ま、まさか……ただの小汚いハエですって。馬の糞にたかるような下等な生物ですよ……そんな身の毛もよだつ悪魔なんかじゃ……」

「誰が下等な生物じゃと?」

「お師匠様、変な声真似やめてくださいよ! 驚くじゃないですか……。冗談はもっと平和な時にお願いしますよ!」

「えっ? 私、何も言ってないよ。そんな器用に声出す技能なんてないし」

「だったら、今の声は、そ、そんな……」

 ハルカラの目もハエに向く。

 といっても、そのへんを飛び回ってるからじっと見つめづらいけど。

「そうじゃよ。わらわじゃよ」

 わずかに白い煙が出たかと思うと――
 そこに出てきたのは女騎士をとことん偉くしたような見た目の女の子だった。

 スカートみたいなのを着ているのだが、スリットが入りまくって、結局レオタードっぽい。革のベルトで、帯剣もしているから、貴族のお嬢様という雰囲気でもない。
 なんだ、この悪の女幹部のコスプレをしてますみたいなキャラは……。

 容姿のほうは、長い髪は美しい白銀で、肌の色は対照的に褐色だ。

 見た目は私と同い年ぐらいだから、女子高生ぐらいの年か。でも、もう見た目で実年齢を判断するの無意味な世界観なので、年下かどうは不明。

「わらわの名はベルゼブブじゃ。それ以上の自己紹介は今更いらんであろう?」

 本人がやってくるとはな……。
 しかし、ベルゼブブって女だったのか。ここまで変な名前だと、女っぽさも男っぽさもとくにないが。

「ああ、ハエに姿を変えることができるので、ハエの王と呼ばれておるぞ。下等な生物で悪かったのう。ここで謝罪させてもらおう」

 ベルゼブブは胸に手を当てて、慇懃に頭を下げた。
 話せばわかるタイプだろうか? いや、これ絶対に皮肉だよな。それに、こういうのは態度が丁寧な奴ほど邪悪で強いと相場が決まっているのだ。油断してはならない。

「ひっ、ひぃぃぃ……下等な生物というのは言葉の綾です……おおいなる存在のベルゼブブ様にそのようなことを申すようなつもりは……、み、みじんもありませんので……」

 ハルカラはもうショックで倒れそうになっている。というか、腰が抜けたらしくて、その場にへたりこんでいた。

「いやいや、別に下等な生物と言ってもらってもかまわぬぞ。では、その下等な生物に怖気づいておるエルフはどんな存在なのかとは思うがのう」

「エ、エルフなんてホコリみたいなものですぅ……せ、生物の餌になるような価値さえ持ち合わせておりませぇぇぇぇん……」

 生き残るためだからって、エルフの存在をボロカスに言ってるな!

「そのホコリを追いかけるためにここまで来たのじゃがのう」

 ぱたぱたと、やたらと羽のついた豪華な扇を出すと、ベルゼブブは自分に風を送った。
 果物の甘い香りが部屋中に広がる。あの扇みたいなアイテムのせいか。

「わらわは爛熟した果実のにおいが好きでな、そんな香料を染みこませたこの扇子を使っておるのじゃ。ちなみに腐乱した果実のにおいではないぞ。腐敗臭は好まんからの。ハエではあるが、そこいらの汚いハエと一緒にするでないぞ」

 ハエにアイデンティティがあるのかないのかよくわからない奴だな。

「あなた、私が結界張る前からこの家に潜んでたんだね」

 こうも早く侵入を許しているとは計算していなかった。とはいえ、結果的に娘二人とライカを避難させられたわけだから、そこはよかったが。

「そういうことじゃ。ここにエルフがいるという噂はすぐにわらわの元に届いたぞ。ハエは人の噂とかぐわしい果実が大好きじゃからの。……決して腐敗臭が好きなのではないぞ」

 腐ったものが好きと言われるの、気にしてるのか……?

「さてと、高原の魔女よ、おぬしにはとくに用はない。せっかく出向いてきたのじゃから、お茶でも馳走してもらえるとうれしいがの。もっとも、おぬしはわらわの下僕でもなんでもないから、判断はお前に任せる。わらわが用があるのは――」

 じろっと、ベルゼブブは視線を腰を抜かしたハルカラに向けた。

「ハルカラよ。ずっと逃げられたので探すのに手間取ったぞ。しかし、それをするだけの価値はあるからのう」

「ひっ、ひっ! た、助けてください! な、何でもしますからっ!」

「うむ、何でもしてくれるのか。そう聞いたぞ」

 くすくすくすと扇で口を隠してベルゼブブが笑う。

 あっ、これは「じゃあ、死ね」とか言う流れだ。

 しょうがない。かりそめのものとはいえ、弟子は弟子だからな。

 私はハルカラの前に両手を広げて割り込む。

「弟子とのやりとりは師匠を通してもらえますかね?」

 私は不敵に笑った。笑いたくなるような状況じゃないけど、だからこそ、もう笑うしかない。

 一方で、ベルゼブブはちょっとむすっとした顔になる。

「わらわの邪魔をするというのか? わらわの行く手を遮るのか? よくそんな覚悟があるのう」

「弟子はあなたに会いたくないようですから、帰っていただけませんか?」

「帰れと言われると、帰りたくなくなるのがさがではないかのう?」

 ベルゼブブの背中から透明な羽が生えた。
 美しいが、形状的には虫っぽい羽だ。

「ちょうどよいわ。長らく戦っておらぬから腕もなまっておった。お前、なかなか腕に覚えがあるようではないか。わらわと勝負してみよ」

「三百年ほどスライムを倒して鍛えてきてますから」

「たったの三百年か。なんじゃ、わらわが生きてきた十分の一程度ではないか」

 敵は三千年生きているらしい。それでも三千年だ。中国四千年の歴史よりは浅い。なら、きっと、どうにかなる。

 私と戦うように持っていけたな。
 よし、あとは私が勝てばすべて丸く収まる。

 上級魔族と戦うことは初めてだけど、やるしかないか。

「あ、あの、高原の魔女さん、いえお師匠様……い、いいんですか……」
 ちらっと後ろを見た。
「弟子は弟子らしく、じっとしてなさい。部下の失敗した責任をとるのも上司の役目だから」

 ただ、謝罪では納得しないお客様だから物理で解決するしかないってだけだ。

「あの、ベルゼブブさん、もし、私が勝っても腹いせに部下とか送らないでくださいね?」
「そんなことはせぬわ。これはわらわの個人的な趣味の領分での話じゃ。じゃから、わらわが直接こんな辺境まで足を運んだのじゃぞ」
「あ~よかった。じゃあ、何も心配はなくなりました」

 ここでベルゼブブに勝って、めでたしめでたしだ。

「おぬし、わらわと戦って勝つ前提なのが気に入らぬな……。ここでやると建物が傷む。外に出てやろうではないか」

 おっ、気づかいしてくれた。ありがたい。
 もう、失うものは何もなくなったな。

「承知しました。お互い、正々堂々とやりましょう」
次回、ベルゼブブと戦い?ます。

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