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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔王のお誕生日会編

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272 魔獣とは一切関係ありません

「油揚げをお供えしなさい。油揚げを姉である私に! 稲荷寿司も可!」
 日本人の狐感が私の行動に影響を与えている。これはまずい……。

「お姉様……わたくしに興味を持ってくださるのはうれしいのですが、イナリズシって何ですか……? あと、お供えって、まるで神格みたいな発言ですね……」
「ペ、ペコラ、どうも体が落ち着かないの……。狐獣人になった影響みたいなんだけど……」

 体が、というか足が勝手に動き出した。
 これは油揚げを求める旅に出ようとしている!
 理性は油揚げはこの世界にはないのに……。ないと知ってるのに、本能が油揚げを欲している!

 私はぴょんとベッドからジャンプした。こころなしか、ジャンプ力が増している気がする。
「ペコラ、悪いけど、体の制御が上手くいかない。しばらく、油揚げ捜しに出かけるから」
「だから、アブラアゲって何なんですかー?」

 私はペコラの部屋を飛び出ると、廊下を走った。
 意識はちゃんとある。が、体のほうは好き勝手に動いている。なんて、迷惑な体だ……。

 そして、鼻がきく。これまでにないぐらい、遠くのものの匂いがわかる。
 こちらが厨房だな。

 厨房にたどりつくと、ヴァーニアがお皿を洗っていた。
「いや~、お皿の枚数が多くて、てんてこまいですよ~。今度からワンプレートにたくさん料理を載せて洗う時間を節約しましょうかね~。――あれ、狐獣人になってるアズサさんじゃないですか」
 私はすぐさまヴァーニアに詰め寄った。

「油揚げを出しなさい。油揚げ。油揚げ」
「アブラーゲ? どこの地方の料理でしょうか?」
 ヴァーニアも当然理解してない。
「油揚げがほしいの。この際、厚揚げでもいいよ。福井とか新潟とか、やたらと分厚い油揚げ売ってるし」
「フクイーに売ってるんですか? でも、ヴァンゼルド城からは遠いですよ」
 偶然、福井はこの世界にもある地名だったらしい。いや、そんなことはどうでもいいな。

 なんとか理性のほうで説明を試みる。
「ヴァーニア、私は狐獣人になったせいか、油揚げが食べたくてたまらないの。しばらく、お城の中を走り回るかもしれないけど……意識混濁の魔法を受けたわけじゃないから……。多分、そのうち元に戻るから……」

「よくわかりませんが、トラブルが起きていることはわかりました」
 あまり頼りにならない発言だが、何もわかってないと言われるよりはマシだろう。
「高級食材のキツネニナルダケを食べすぎることはまずないですからね。そのせいで意識に一時的な興奮状態を引き起こしているんでしょう。一時間もすれば収まりますよ」

 そんなもの食べさせまくるなよと思ったが、魔族の価値観からするとどうということはないんだろう。こっちとしては大迷惑だけど……。
「じゃあ、狐らしく油揚げを探してくるよ」
「はい。いってらっしゃい!」

 それから、私はヴァンゼルド城を走り回った。
 で、魔族を見つけるたびに、「油揚げない?」と聞いた。
 何それ? という反応をされるので、また次の魔族を探した。

 どこかから「狐獣人の悪霊みたいなのが出るぞ!」「アブラーゲを出さないと呪われるらしい!」「そんな謎のアイテム、持ってねえよ!」といった声が聞こえてくる。
 魔族の城で悪霊の噂を広めている……。人間として、これでいいのだろうか……?

 だが、油揚げを食べたいという気持ちはなかなか収まらない。
 脳内には無数のこんがり茶色に上がった油揚げが浮かんでいる。

「ダメだ、ダメだ! なかなか制御できない!」
 尻尾をぶんぶん振り回しながら、私は走った。
 もう、ヴァンゼルド城を完全攻略できるのではというぐらいに走った。

 警備兵みたいなのに止められそうになったけど、押しのけた。
「どいて、どいてー! 私も止まれないの!」
 そのあたりはレベルMAXのため、止められることもない。

 こころなしか、警備兵の姿が増えてきている気がする。
「軍隊を動員しろ!」「異常事態だ!」
 そんな声まで聞こえてくる。

 次第に騒動が大きくなってきたな……。でも、これは私のせいではない……はず。キツネニナルダケを食べさせたペコラに責任がある……はず。

 庭に出ると、魔族の軍隊が大軍で目の前に集まっていた。
「お前、何をしている!」「そこの狐獣人止まれ!」「止まらぬなら攻撃魔法を使う!」

 くそっ! 完全に不審者扱いをされている!
「油揚げを出せー! 出さなきゃ、イタズラするぞー! トリック・オア・アブラアゲ!」

「やはり、謎の言葉を使っているぞ!」「気をつけろ! 古代文明の古代魔法かもしれん!」
「油揚げがないなら、割って突き進むまで!」
 私は魔族の軍隊にぶつかって、みんなを一斉に吹き飛ばした。
 ボウリングのピンに突っ込むボールの感覚だった。

 ううむ……。被害が着実に拡大している……。
 そして、これまで以上に屈強な体つきをした男の魔族が出てきた。

「そこの不埒者、止まるがいい! 我こそはヴァンゼルド城四天王最強の男、セルヴァンである」
 ついに中ボスクラスが来ちゃった。
「城の安寧秩序を乱す者を放っておくわけにはいかん! ここがお前の墓場となるであろう! 地獄で後悔するが――」
「油揚げよこせー!」
 私はその魔族にぶつかった。そのまま、魔族も吹き飛んだ。

 もう、城を攻略できそうだぞ、これ……。
「くっ……なかなかやるな、狐獣人よ……。しかし、魔王様の力はこんなものでは……」
 その魔法のせいで、こうなってるんですけど。

「四天王最強の男がやられた!」「魔王様に連絡だ!」「学者を集めろ! アブラアゲについて知ってる学者はいないのか!」「狐獣人について詳しい学者も呼べ!」「みんな、魔族が一丸となってこの難局に対処するのだ!」

 私は怪獣か。

「アブラアゲについて知ってるという学者がおりました!」「おお、でかした!」

 むっ、本当に油揚げあるのか?
 あの、こんがり香ばしい味噌汁に入れてよし、からっと焼いてよし、しょうが醤油で食べてよしの油揚げがあるの? お豆の濃厚な味が広がる油揚げがあえるの?

「古文書にアブランゲという魔獣が地下に封印されていたという記述があるそうです!」「では、あの狐獣人は古代の魔獣と関係が?」「それなら、あの力もつじつまが合うな!」

 それ、絶対に無関係な奴だ!
 ちなみにアブランゲとかいう魔獣を召喚されたけど、一撃で倒しました。


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