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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔王のお誕生日会編

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271 狐の好物

 私はペコラとともに、とっとと彼女の部屋に移動することにした。
 できるだけ知っている顔には見られたくない。といっても、魔族の官僚で顔見知りなのはベルゼブブだけなので、事実上、ベルゼブブ対策のみだ。

 途中、通りかかった魔族が「あんな職員、いたっけ?」と話しているのが聞こえた。狐獣人は魔族の中にいても浮かない存在らしい。なにげに魔族って多民族社会だよな。

 そういえば、人間の世界で狐獣人を見た記憶がほとんどないので、それなりにレアな存在なのだろうか。

 ペコラの部屋は、さすが魔王らしく広々としているし、中にいくつも別の部屋がある。隠遁生活自体はできそうだ。
 でも、部屋の主であるペコラが協力してくれるかどうかは別問題というのが難点だけど……。

 あと、それ以上に気になるものがあった。
 テーブルに狐の絵が表紙の本が置いてある。

「やはり、計画的犯行か……」
「いえ、お姉様、偶然という可能性もありますから~。妹を疑ってはいけないですよ」
 したり顔でペコラが言った。
「こいつめ……。能力をイタズラに全振りしてるだろ……」

「あっ、お姉様、また尻尾がぶんぶん動いてますよ」
 言われて後ろを見ると、本当に動きまくっていた。
「どうも落ち着かないな……」

「慣れる頃にはキツネニナルダケの効果も切れて、尻尾も耳もなくなりますよ。さ~て、お姉様、尻尾のブラッシングをしましょうか」

 ペコラは棚から櫛を出してきた。
「ブラッシングって……。別にこのままでいいし、やるとしても自分でやるよ……」
「そんな! ペット…………お姉様のブラッシングは魔王といえども自分でやります」

「おい! 今、ペットって言ったな! ペットって言ったな!」
 お姉様って言ってるけど、敬意が一切感じられないぞ!
「気のせいです。お姉様ですよ。ほら、お姉様の髪を梳くのも妹のお仕事というか、なんというか、かんというか」
 言い訳も雑だ……。だいたい、さっきまでブラッシングって言ってただろ。ペットに使う表現だよね、それ……。

「いいじゃないですか、減るものじゃないですし。それと、狐獣人用の服に着替えてもらったほうがいいですね。今のままだと尻尾を無理矢理出してる状態ですから、あまりよくないです」
 たしかにそれは言える。かなり尻尾が窮屈なのだ。

 現状、尻尾はドレスの腰あたりの調節用の隙間から生えている。ちなみにここに隙間があること自体、尻尾とか生えてる種族でも対応できるような意味合いもある。猫獣人とかも住んでるからね。
 だが、獣人用の服というわけではないので、ゆったりとはしていない。圧迫感はある。

「たまには狐獣人としてのんびりしても罰は当たらないと思いますよ。一切のお世話はわたくしがしますから、ご安心ください」
 もう、逆らうのも面倒なので私は首を縦に振った。

「はいはい。私は狐獣人のアズサですよ~。コーン、コーン」
「コーンって何ですか? 狐ってそんな鳴き方しませんよ」
 そんなところはリアル志向なのか。

 そのあと、着替えた私はペコラに尻尾のブラッシングをされた。ベッドに横になって、その間に尻尾に櫛を当てられている。

「ふふふ、モフモフしてて気持ちいいです。お姉様、素敵です」
「モフモフされる側はそんなに楽しくもないな」
 私は無抵抗状態で好きにやらせている。

「この尻尾に抱きつきながら眠っていいですか?」
「別にいいけど、ブラッシングした毛並みがまた乱れるんじゃないの?」

 自分の尻尾という意識もほとんどないので、どう扱われようと構わないと言えば構わない。どうせ、数日だけの付き合いだ。

「ところで、お姉様、狐獣人になって、何か変化とかってないんですか?」
 ペコラが櫛を当てながら聞いてくる。
「変化? 尻尾と耳が生えた――ってことは見たまんまだから、それ以外についてのことだよね」

「です。耳の数が増えて、ものすごく遠くの音まで聞こえるとか」
 質問内容が科学的なものになってきた。愛玩動物から実験動物に変化した感覚だ。
「そういうのは、とくにない。そもそも、この耳って機能してるのかな……。ついてるだけじゃないの?」
 猫耳カチューシャをつけた人間が頭に浮かんだ。

「でも、尻尾をはさんだら痛かったわけですよね。尻尾も感情に反応して動いてますし。なら、ほかにも身体的変化があってもおかしくないんじゃないでしょうか」
「言われてみれば」
「実はキツネニナルダケで狐獣人になったケースの報告はほとんどなくて、詳しいことがわかっていないんです。ぜひとも、普段との違いを教えてください」

 学術的な意味合いが急についた。

「今のところ、何もないよ。自分で意識してる範囲だと何も――」
 ふと、奇妙な感覚に襲われた。
 なんだ、これは……。食欲か……?

「食べたい……」
 だが、単純な空腹感とは違う。

「油揚げが食べたい……」
 まさか、狐としての本能が油揚げを求めているのか!?
 いや、たんなる本能じゃないな。地球の狐だって油揚げを食べたことのない狐のほうが圧倒的に多いだろう。
 つまり、「狐は油揚げが好き」という私の前世の知識が影響を与えているのだ。

「お姉様、アブラアゲっていったい何ですか? そんな名前の動物聞いたことないんですが」
 このペコラの声は素だ。
 そう、異世界に油揚げはない。そんなものは存在しない。

 なのに私は存在しないものをやたらと欲している!

「油揚げがほしい……。すごくほしい……。油揚げ、油揚げ……」
「お姉様、油揚げって何ですか? 教えていただけないと、どうしようもないです」

 油揚げってどうやって作るんだっけ……? 豆腐の副産物? 大豆の加工食品であることは間違いない。

「豆腐屋さんにならありそう……」
「トウフって何ですか?」

 当たり前だが、豆腐もない!
 うわあああ、こんなに油揚げがほしいのに、食べれない!

 私はくるっと向きを変えて、ペコラの両肩をつかんだ。
「油揚げ、油揚げをちょうだい!」
「お姉様、アブラアゲなんてないです!」

 おかしい。理性が油揚げに押し殺されつつある……。

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