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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔王のお誕生日会編

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270 モフモフな魔女

「わたくしがほしいもの、それは――モフモフできるお姉様です」

 ペコラははっきりとそう口にした。
 とびきりの笑顔で。

 でも言われたほうの私は最初、意味がわからなかった。

 モフモフするというのは、猫とか毛がたくさんついてる動物に対して使う動詞だ。
「私をモフモフするのには向いてないでしょ。頭ぐらいしか毛がないわけだし」

「お姉様、この高級なキノコの名前、なんと言うか知っていますか?」
 あっ、この質問、とても嫌な予感がする……。
「キツネニナルダケと言うんです。ちなみに食べると――」
「言わなくていい! もう名前を聞いた時点でわかったから!」

 すると、私の頭とお尻のあたりが急にむずむずしてきた。
 やたらとこそばゆいというか……。
 でも、それは長くは続かなかった。
 その代わり、何かが生えてきたような感覚が体にあった。

 私は恐る恐る、頭に手を当ててみる。
 やけにやわらかいものが二つある。
 それとお尻のほうにも手をやってみる。
 やはり、何かがある……。

「ヴァーニアさん、姿見の鏡を持ってきていただけますか?」
 ペコラの命で、ヴァーニアが縦長の鏡を持ってきて、私のほうに向けた。

 そこには狐獣人になっている私がいた。
「うわああああ! 変な属性が付与されてるっ!」

「お姉様、とってもかわいいです! かわいさというジャンルでも妹のわたくしを飛び抜けてかわいいです!」
 ペコラはやたらとガッツポーズみたいなしぐさをしている。
 完全に悪だくみにはまってしまった。

「これ、元に戻すのにはどうしたらいいの?」
「時間が経てば自然と元に戻りますよ」
「その時間はどれぐらい?」

「お姉様が召しあがった量だと五日間ぐらいでしょうか?」
 何もかもペコラの計画どおりだったというわけだな……。

 しまった。どこかでペコラも普通の誕生日会をしたいんだろうとか想像してしまっていた。勝手に自由がきかなくて退屈している魔王像を作り出していた……。
 それは一言で言って虚像だ……。ペコラはそんな殊勝な子じゃない。もっとどす黒い何者かだ……。

「今すぐ帰りたいというなら、高原の家まで直行便を出しますが、どうします?」
 この姿を見られたら、私の培ってきたイメージが崩れる……。
 まだ子供になってしまった時は見た目が小さいからよかった。今の私はこれまでの要素を残したうえで、子供っぽいのだ。
 最低でも長期にわたって、ネタにされるのは確実だ。

「効き目が消えるまでこっちに残る……。それでいいでしょ! この魔王め!」
「はい、わたくしは魔王ですから♪」
 そうだよな。悪魔でイメージ検索しても、やたらかわいい悪魔っ娘のイラストが上がってきたリしてたもんな。
 醜悪な化け物とかより、人間を騙すにはかわいいほうが正しい。どこからどう見ても性格悪そうとか、信用できなそうとかって奴だったら、誰も騙されない。

「それじゃ、お姉様はわたくしの部屋をお使いください」
「別室は貸してくれないの?」
「だって、わたくしがほしいと思っていたプレゼントはモフモフできるお姉様ですから。それを手にしないとダメですよ」
 さも当然のように言われた。
「なんて身勝手な論理だ! この魔王め!」
「ですから、魔王ですよ♪ あと、お姉様、尻尾がぶんぶん動いてますよ」

 鏡を見たら、たしかに左右に動いてる。これは怒った時に動くのか。それとも興奮状態にあると動くのか。そのあたり、狐要素を持ったことがないので、わからない。
 もう逆らう気力もなくなった。

「好きなようにしなさい……。はいはい、誕生日プレゼントだよ……」

 そのあと、ファートラに姿を見られたが、いつも落ち着いているファートラが顔を背けて、明らかに忍び笑いをしていた。

「もう、いっそ爆笑してくれたほうが救いがあるわ! あるいは私がいないところで笑ってよ!」
「いえ、ご本人を前にして笑うのは失礼なことですから……ぷっ……」
「すでに十二分に失礼だから!」

 これは絶対に元に戻るまでは高原の家に帰れないな……。

「お姉様、ちなみにまだこのことはベルゼブブさんにはお伝えしていません。隠しているほうがいいですか?」
 脳内に、私を見て爆笑しているベルゼブブが浮かんだ。
「隠して」
 私は即答した。
 うん、忍び笑いじゃなくても、やっぱり爆笑は爆笑でイラッとする。

 それにベルゼブブに知られたら、確実にその情報は家族にも届くだろう。スマホで撮影したりできないだけマシであるが、一度知られたらまたキツネニナルダケを食べさせられるおそれもある。

「しばらく、あなたの部屋にいる……。緊急事態だからしょうがない……」
「ですね。緊急事態ですものね」
 あなたのせいでそんなことになったんだけどね……。

 どうやら私の狐獣人生活がはじまるようです。
 いやあ、三百年も生きてると、本当に、本当にいろんなことがあるね。

 なお、部屋を出る時に、尻尾を扉にはさんだ。

「痛っ! かなり痛っ!」
 たとえると、小指をタンスにぶつけたぐらいに痛い! きっちり痛覚も共有してるのか、この尻尾!

「あっ、狐お姉様、後ろに気をつけないといけませんよ。当たり判定が広くなってますから」

「くそっ……。狐獣人であるメリットっていったいどこにあるんだろ……?」
 私は涙目になりながら、自分の尻尾を撫でた。
 自分の正面に持ってこれる程度には尻尾が大きくて長いのだ。そりゃ、はさむこともあるよ。
 じっと尻尾を見ていると、我ながらいい毛並みだなとちょっと思ってしまった。
 ……いや、そんなところで優越感を持っても意味ないぞ……。変なところでプラス思考になってるぞ……。
なんや、狐になっちゃいましたね。次回に続きます。
そして、ガンガンGAさんにてコミカライズ9話が更新されました! ベルゼブブと対決いたします! 活動報告のほうをご覧ください!

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