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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔王のお誕生日会編

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269 お誕生日の会食

 まさかの超短いあいさつでペコラは本当に退場していってしまった。

 周囲からは「いや~今年もすぐに終わったな」「先代の魔王様はやたら長かったからな。よくなってる、よくなってる」といった声が聞こえた。本当に好評らしい……。

 しかし、直々に呼ばれた私としては、いまいち得心がいかない……。

 こんなもののために来いって言われたの……?

 と、そこにリヴァイアサンのファートラが足早にやってきた。
「アズサさん、失礼いたします。ごきげんいかがでしょうか」
「お久しぶり。世界トップレベルでの手短なあいさつで衝撃を受けてるところだよ」

「今からアズサさんを会食の席にお連れするようにとの魔王様のご命令です。よろしくお願いいたします」
 ファートラに手を引かれる。
 私の返答も聞かずに、ファートラは私を引きずっていった。

 そして、連れていかれた部屋には――
 二人でちょうどぐらいのテーブルにペコラだけが座っている。
 向かいの椅子は空席だが、ナイフやフォークが置いてある。

 つまり、ここに座れということだろう。

「ああ、そういうことね」
 私が招待された意味がわかった。メインはあくまでもこちらだ。ここでペコラと会食をしろということだ。

「では、私はこれにて」
 ファートラは役人らしい慇懃いんぎんなおじぎをすると、退出していった。

「姉役として、妹をしっかりと祝いなさいってことか」
「そういうことです。ここでお姉様からお誕生日おめでとうと言ってもらわないとはじまりませんから」

 ペコラははにかんだように笑った。見た目相応の少女のような笑みだった。

 考えてみれば、あんな盛大な祝賀式典をやられても本人はそこまでうれしくないのかもしれない。私も逆の立場になったら、おおげさなことはやめてよと思うかも。
 少なくとも、州をあげての高原の魔女の式典とか実行しようとする人がいたら止めに入る。フラタ村でもそんなことはしないようにと昔から言ってある。

 人が本当に求めてるのは、こんなお誕生日会のほうなんじゃないだろうか。

「ペコラ、ほかの偉い魔族たちと会食はしなくても平気なの?」
「立食形式にしてるので問題ありません。それと違和感がなくなるように、直近で会食を多めにスケジュールに入れておきました」
 そのあたり、ペコラはバカじゃない。ちゃんと手を打ってある。

「よし、妹の誕生日をとことん私が祝おう」
 ちょうど、水の入っているビンが置いてあるので、それをペコラのグラスに入れてあげた。
 お返しにペコラのほうも私のグラスに注ぐ。

「ペコラ、お誕生日、おめでとう」
 私はペコラのグラスにかちんと自分のグラスをぶつけた。

 一応、お姉様という立場は認めていたけど、ずっとお姉様らしいことをしていなかったものね。今日ぐらいはとことんお姉様として振る舞ってあげようか。それが私からの誕生日プレゼントだ。

 ヴァーニアが出てきて、料理を一品ずつ置いていく。
黄泉菜よみな煉獄菜れんごくなのスムージーですよ」
 魔族の料理に詳しくなくても、これが最高級のものだということはわかる。

「何か困ってることとかあったら、相談していいよ」
「ないことはないですけど、お姉様、本格的な政治の話はわかりませんよね?」
 いたずらっぽくペコラが言った。
「それ、意地悪じゃない? しょうがないよ。魔女は魔女。政治家じゃないんだから」
「お姉様はこうやってわたくしと一緒に時間を過ごしてくれればそれでいいです」

「それなら、おやすいご用だよ」
「それでは、三日とか五日とかでもいいですか?」
 急にずうずうしくなったな……。

「五日か……。高原の家に連絡をしてくれるなら、いいかな……。音沙汰がないとみんな不安に思うかもしれないし……」
 何日に帰るか伝えてないからな。このあたりはメールがない異世界は不便だと思う。

「五日ですね。わかりました。シェフのヴァーニアさん、メインの料理をお願いします」
 ペコラに呼ばれたヴァーニアが肉料理を持ってきた。横には強い芳香のキノコのスライスが添えられている。トリュフ的なものだろう。

「このキノコ、絶対に高級なやつだよね」
「はい。人間の土地で出すと一皿五万ゴールドはくだらないと思います」
 あ、それ、レストランで芸能人が値段を当てるゲームで使われるようなタイプのアレだ……。

 言うまでもなく、前世ではそんなグレードの店を使ったことはなかったので緊張してきた。
 だが、緊張を通り越しておいしいというか、高級な味ということはわかった。
 トリュフとかキャビアとか別に絶品だから高いというより、珍味だから高いはずだしな。庶民の舌だから、まだこれをおいしいものと認識しきれてない自分がいる……。

「どんどん食べてくださいね。お姉様にはとくにキノコ多めにしてもらってますから。もしお店で出したら、普通のお皿のさらに三倍ぐらいの値段はするはずです」
 ということは、十五万ゴールド! 自腹で払うことになったら泣きそうな額だ!

「遠慮したくなってくるけど、魔王の前で遠慮するのもおかしいか」
 スライム何匹分の魔法石の値段だろうと思いながら、口に入れる。肉もキノコも舌に乗ると、さっと溶けていくようだ。それほどにやわらかい。

 それにしても、こんな料理を作ってくるヴァーニア、マジですごいな……。おっちょこちょいなところを差し引いても余りある能力だぞ。

「ちなみに一時期、ヴァンゼルド城下では、超高級店で値段を見ずに料理を注文して、一番予想額がずれた人が全員の分をおごるというゲームが流行っていました」
「どこの世界でも考えることは一緒か!」
「お金がないのに美食が食べられると参加して、一年間、使用人として働く羽目になった人もいるほどです」
「リスクもえげつないな……」

「あと、毎年の頭には、一流のものとしょぼいものを比べて当てるゲームも流行っていますね。最高級の葡萄酒と激安の葡萄酒を当てるとか」
「それもなんか似たようなの、あった気がする……」

 とはいえ、今回は間違いなくペコラのおごりだ。安心して食べられる。何の憂いもない。

 でも、私は油断をしすぎていたかもしれない。

「さて、お姉様。わたくし、誕生日にほしいものがあるんです。でも、なかなか手に入らないものなんです」
 デザートが出てくる前あたりでペコラが切り出してきた。
「ふうん、いったい何?」

 キスしろとか言われるのかな……。それはちょっとなあ……。

 しかし、にた~とペコラの表情が変わった。
 まんまと罠にはまったなというような顔だった。

 これ、絶対にキスとかロマンチックな系統じゃないな……。
「わたくしがほしいもの、それは――モフモフできるお姉様です」
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