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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔王のお誕生日会編

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267 魔王が一人でやってきた

 ある日、ペコラが高原の家にやってきた。
 いや、魔王がやってきていいのかという気もするけど、実際に来てしまった分にはしょうがないだろう。

「こんにちはー。お姉様、お元気ですかー?」
 ちょうど、私が外で洗濯物を干していた時にペコラが顔を見せた。洗濯物といっても家族の数が多いので、意外と大変だ。

 ペコラは背中にいろいろと荷物を背負っている。それも魔王に不似合いだけど、魔王らしく振る舞う気はペコラにはないのだろう。

「調子はほどほどってところだね。我が家は病気とかとくに心配ないしね」
「今日はいろいろとお土産を持ってきましたよ。まず、サンドラちゃんにはとてもいい土です」
 すると、土を耕すようにサンドラが地中を移動してやってきた。

「どんな土? ぜひ試させてちょうだい」
「はいはい、これです。やわらかさも栄養分も最高レベルですよ。ヴァンゼルド城の庭師が文句なしと言ってるものですから」
 サンドラは土の袋をペコラからもらうと、手(といっても全部本来は根だけど)で触って、確かめていた。
「あ~、これはいいわね。こう、根と根の間に自然と入ってくるわ。味も実に濃厚ね」

 味なんだ……。まあ、そこは植物なりの感じ方があるんだろう。

「本当にいろいろ持ってきましたよ。これはロザリーさん用の呪いの指輪です。ロザリーさんにぴったりです」
「女子が持ってくる土産感がない」
 ペコラが出してきたのは、たしかにどこかおぞましさの漂う指輪だった。まあ、ロザリーは一種の悪霊だから問題ないだろうけど。

「この写本は魔族の間でもほとんど残っていない、かつて滅んだ人間の古代文明について記した書物です。当時の科学技術についての論文もついてますから、シャルシャちゃんだけでなくファルファちゃんも興味津々ですよ」
 説明からして、子供に渡すものじゃないけど、それは喜びそう!
 ペコラは外で、どんどん荷物を出して見せてくる。部屋に入って出せばいいのにと思うが、私に紹介したいのだろう。

「これは好きな山を一つ活火山に変えるマジックアイテムですね。ライカさんが火山をほしいと思った時にどうぞ」
「へえ、それは便利――って危ないわ!」
 活火山ってそんな気軽に作ったらダメだろ! 私でも責任とれないぞ!

「それと、吹雪を起こす呪符ですね。フラットルテさんがこのあたりの州を氷で閉ざしたい時に使ってください」
「使えるか!」
 どんどんえげつなくなってきた! 人類の存亡に関わるようなアイテムが列挙されている……。さすが魔王!

「あとは、ハルカラさんには魔族の土地でお店を出していいという権利書ですね」
「私が言うのもなんだけど、本当に土産に女子力がないな……」
 どれもいいものには違いないんだろうけど、特殊すぎる。

「それと、お姉様にはこのお菓子を差し上げます」
 最後にペコラが出してきたのは、かわいい袋に入った、いかにもなお菓子だった。

「急に女子っぽいものになった…」
「だって、わたくし、女の子ですからね。どこにでもいる女の子ですよ」
 それ、ツッコミ待ちで言ってるだろ。
「でも、ありがとう。おいしくいただくよ」

「はい、変なものは一切入れていませんから安心して食べてくださいね」
 この世界、変なものがちょくちょく混入している危険があるので、この情報は割と重要だ。

「なんだか、もらってばかりだと悪いな。とはいえ、あなたって魔王だから、ほしいものなんてないよね。ほしいものはほぼすべて手に入っちゃってるよね」
 相手が極端な金持ちだと、何をプレゼントしたら喜ばれるかよくわからなくなる問題。

 しかし、そこでペコラはどこか含みのある笑みを浮かべた。何か策を用意していますという顔だ。私もかなりこの妹役の腹黒さに慣れてきた。

「実は、今度、わたくしの誕生日があるんですよ~♪」
「なるほど。その時に何かお返しで持ってこいってことか……」
 とんでもなくハードルの高い代物を用意しろとか言うつもりじゃないだろうな……。かぐや姫が求婚者に持ってこいって言ってきたようなやつ。

「いえ、お姉様からは何もいりません。その代わり、誕生日の祝賀会に出席していただければけっこうです」
 だから、わざわざお土産を順番に見せてきたわけか。これでは断りづらい。もっとも、まったりスローライフを送っているから、よほどのことがないかぎり、出席するけど。

「はいはい。そんなことでよければ参加させてもらうよ」
「――あと、できれば、お姉様お一人でお願いいたします」

 参加表明をしたあとに余計な条項がついてきた。

「え……? 私だけ……?」
「はい、すいませんね。実は送迎用のワイヴァーンが一人乗りなんですよ~。宿泊していただくお部屋も一人部屋しか空いてないんですよ~。いや~、うかつでした~」
 無茶苦茶わざとらしい……。

 あなた、魔王なんだから絶対にそれぐらいどうとでもなるだろと思うが、もう、これはとにかく一人で来いということだ。

「まっ、お姉様と呼ばせてるわけだし、妹の誕生日を祝うぐらいはしなきゃダメか。そこにぞろぞろ家族がついてくるのも変と言えば変か」
「ですです~。そういうことです~」
 本当に楽しそうにペコラに言われた。これもペコラのいたずらの一環なのだろう。何か余計なことをしないと気がすまない性格なのだ。

「はいよ。万事心得た。私も空気は読むほうだから、一人で行かせてもらうよ」
「ありがとうございます。やっぱり、お姉様は妹のことをよくご存じですね!」

 洗濯物を干してる最中なのに、ぎゅっと腕を絡められた。

 ペコラはそのあと、部屋でお茶を一杯だけ飲むと、すぐに帰っていった。なんだかんだで多忙らしい。それなのに、この高原の家には来るんだな。ベルゼブブの頻度ほどじゃないが。

 私の手元には「魔王様 お誕生日祝賀式典のご案内」と書いてある招待状が残った。
今回から新展開です。よろしくお願いいたします!

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