挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

善い枝侯国を観光した編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

268/280

266 やっぱり本人だった

 あれ、ハルカラっぽい人がいるような……?

 もっとも、ここはエルフの国と言っていい場所だ。お客さんも大半がエルフなので、見間違いの可能性も高い。ハルカラのような髪の色の人もとにかく多いし。
 でも、後ろ姿が似通っている気がするんだよなあ……。こう、どこか抜けてるところが後ろ姿からも感じ取れるというか……。

 背中で語るという表現があるけど、あの背中は「わたしはよくうっかりミスをしますよ」と語っているように見える。
 回り込んで見てみるか? けど、それで全然違う人だったら変な空気になるな……。

 と、そのハルカラらしき人がちょっとふらついた。
「う~ん。もう限界なんですかね。いや、今のはたんに歩いてて転びそうになっただけです。まだ、酔ってません。わたしはまだまだ飲めますよ、飲めるんです!」
「もう、絶対ハルカラだ!」

 私は後ろからぽんぽんと肩を叩いた。
 くるっと振り返ったエルフはハルカラで間違いなかった。
「うわっ! お師匠様! びっくりしたー! なんでお師匠様がここに!?」
「むしろ、こっちがなんでここにあなたがいるか聞きたいよ。私たちはここで入りびたってたの」

「あ~、わかりますよ。このへんって観光地に乏しいですもんね。わたしもいまいちオススメできるものがなくて、とくに何も言ってませんでした」
「そういや、地元民のあなたからの情報がなかったな……」
「わたしが教えたところがつまならくて、わたしのせいみたいになったら嫌なので、あえて何も提示しないスタンスにしていました。ほんと、がっかり観光スポットが多いんで」
 地元民だったからか、容赦なくディスってくるな!

 ハルカラは当然、私たちのテーブルのほうに連れていった。
 これで宿に早く戻る理由もまったくなくなった。

「ハルカラが来てるってことは、もしかして商談が失敗に終わって、ヤケ酒とか……?」
 失敗したからといって、ハルカラ製薬に損害が出る話ではないだろうが、気分の悪い終わり方になったとしたら、酒も飲みたくなるかもしれない。

 今回の会議の相手はこの土地の領主らしいし、やけに高圧的な態度だったとか理由はいくらでも考えられる。

「いえ、その逆です。話が無事についたので、お酒をしっぽりやってから帰ろうかなと」
「祝い酒のほうか!」
 お酒を飲む人はどんな時でも理由つけて飲むからなあ。

「でも、よかったですぜ、ハルカラの姉御。里帰りもできて、商談も成立したなら最高じゃないですか」
 ロザリーが上手くまとめてくれた。そうだよね。ハルカラにとったら言うことなしだよね。

「はい。まず、この善い枝侯国のフースミー地区に新工場を作ります。その土地も建物の候補もちゃんとついてます」
 そのあたりは手際がいいな。やはり、ハルカラは経営の才覚はある。

「でも、そこまではとくに何も悩むことはないだろうなって思ってたんです。こっちのほうが強気に出れる立場ですし、向こうも利益になることなんで。それだけだったら、一仕事終えたって気にもならなくて、今の半分ぐらいしか飲んでなかったでしょうね」
「結局、飲みはするんだ……」
 やっぱり、ハルカラってお酒好きだな……。
 だが、地元がお酒の産地ならそうなるのも当然のことかもしれない。私でもはまってしまいそうだ。

「じゃあ、何が上手くいって成功した気になったわけ?」
 肝心の答えがまだ聞けていない。

「わたし、昨日、帰省していろいろと感じたわけです。お師匠様にはちょっと話しましたけど」
「うん、まあ、そうだね」
 ハルカラが家族に対してどんな気持ちを抱いているか、ベッドに腰かけながら聞いた。

「わたしが見ても問題のある人たちで、仕事とかクビになってもしょうがないんですけど、それでも愛すべき家族ではあるんですよね。それで、ちょうどいい方法を考えたんです」

 ハルカラはにっこりと笑った。

「新工場に家族を全員雇います。新工場で働かせます!」
 そう来たか!

「あの一家、遅刻とかも多くてそのあたりが会社の成績にも響いてたわけですけど、家のすぐ近くに職場があれば、そういうリスクも減るでしょう」
 家庭問題を解決する力技を出してきた!

「ぶっちゃけ、管理とかは任せられないので、そこは別の人にやらせますけど、悪人ではないので仕事を与えればそれはやりますよ。それならハルカラ製薬が軌道に乗ってるかぎり、一家の生計も成り立ってるってわかりますから、わたしも気楽です」
「そっか、そっか……。そういう方法で来たか……」

 わたしは反対する立場にいないので、ただ、受け入れるだけだ。ハルカラのことだから会社が傾くような決定はしていないだろうし。

「というわけで、今回のミッションはすべて完了しました! なので、ここに来てお酒を飲んでから宿に帰ろうとしたというわけです!」
 理由はわかった。理由については何の問題もない。

「よーし! もっと飲みますよー!」
 問題があるとすれば、すでにハルカラがかなり酒が進んでいて、足下とかふらついていたってことだ。

 そのあと、ハルカラはきっちり飲みすぎて、吐きました。
 そこはマジで学習しないな……。



『善い枝よいどれ酒蔵』には湧水を使った小川も建物の中に流れていて、そこに足をつけて休むこともできる。
 酔い覚ましのためにハルカラは足を水にひたしていた。

「あ~。また、飲みすぎてしまいました……。これというのもお酒が悪いんです……」
「いや、あなたが悪いでしょ」
 私も横に並んで、酔っ払いが変なことをしないか監視する。水は冷たくて、私の酔いはすっかり飛んだ。

「けど、今回の件で、あれが証明されましたね」
 ハルカラはやけにドヤ顔だ。
「あれって、一体何のこと?」

「わたしは幸運だってことですよ。ランダムに引いた書類がここだったじゃないですか」
「ああ、事の発端はそんなことだったね……」
 これでハルカラが運がいいという結論になるのは、釈然としないところもあるけど――家族の問題が解決したなら些細なことにこだわるべきではないな。

「そうだね。ハルカラは幸運だよ。うん、それでいいよ」
「ありがとうございます! それで……ちょっとお願いがあるんですが……」
 そこで、ハルカラが私に寄りかかってきた。

「トイレまで連れていっていただけませんか……? うぇっぷ……第二波が来ました……」
「少なくとも私は不幸に巻き込まれてる気がする!」

 家族をまとめるのって大変だなと改めて実感しながら、私はハルカラを抱えて、トイレに行きました……。
善い枝侯国観光編はこれにて終了です。次回から新展開です!
おかげさまでコミックス1巻、いまだにkindle少年コミックスランキング3位に残っていました。ありがとうございます!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ