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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

善い枝侯国を観光した編

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265 お酒のテーマパーク

『善い枝よいどれ酒蔵』はお酒のテーマパークで入館料を払って中に入ると、あとはいくらでもお酒を飲んでよいという、お酒好きには夢のようなところだった。

 果物の絵が試飲コーナーの前にいくつも並んでいる。その果物の果実酒が飲めるということだろう。
「これは素晴らしいところかも……」
「我もいろんな果実酒が飲めるのは楽しみです」
「全種類制覇なのだ!」

 お酒が飲める私とドラゴンの二人は飲む前から笑顔になっている。
 ファルファとシャルシャも各種ジュースがちゃんと果実酒の横に置いてあるので、こちらもテンションが上がっていた。
「シャルシャ、ここってとってもいいところだね!」
「入りびたりたいかも。でも、ごはんが食べられなくなるので、ほどほどにしないと……」

 ただ、サンドラだけは少し様子が違った。期待と不安が半々といった表情でいる。

「お酒、お酒……。どんなものなのかしら……」
 まさに初体験だもんな。ある種、初々しくもあるけど、サンドラ本人にとったら、そんな他人事で片付けられることではないんだろう。

 まずは、イチゴ酒、ブドウ酒、リンゴ酒、カキ酒、アケビ酒、グミ酒を試す。「まずは」って言って試す数じゃないけど、飲み放題なのでどんどんとってきてしまった。小さな器をトレーに載せていける。バイキング方式に近い。

 家族全員が座れるテーブルを確保すると――
 みんなで「かんぱーい!」と木の器をこつんと合わせた。

「おっ、癖がなくて飲みやすい。これは女子受けする味だな~」(私)
「芳醇な香りが口いっぱいに広がりますね。のどごしもさっぱりとしていて、食事中でもいけそうです」(ライカ)
「美味いのだ!」(フラットルテ)

 感想でキャラの違いが明確に出た。
 少なくともフラットルテに食レポの仕事が不可能なことはよくわかった。

 娘二人も
「とってもおいしいね~♪」(ファルファ)
「控えめに言って至福」(シャルシャ)
 と、キャラの差がよく出るコメントをしていた。満足していることは間違いない。

 そして、一番私が気になっていたのが、サンドラだ。
「も、もしダメだったら吐き出せばいいだけだし……この程度で、どうこうなるものじゃないし……」
 木の器を持って、ぶつぶつとサンドラは言っていた。
 そして、ちびちびと舐めるように飲んだ。表情はいぶかしげと言うべきだろうか。なんだ、これはといった調子で空になった器を見ている。

「どう、最初のお酒の味は?」
「案外と苦いものね。あと、体があったかくなる感じがあるわ」
 このあたりの感想もいかにも飲みはじめですってものだ。

「そういうものだよ。でも、なぜか一部の人はそれにはまっちゃうんだよね~」
「ふうん。動物って不思議なものね。でも、悪くはないかも」
 次の木の器にさっと手を伸ばす。あれ、意外といけるクチなのかな?

「アズサ様、まだまだ種類はあります。どんどん行きましょう!」
 ライカもお酒のせいか、どことなくハイになっている気がする。でも、ここで浮かれてしまうのはしょうがない。
「そうだね。体調を壊さない程度に飲んでいこうか」
「フラットルテはリンゴ酒をヘビーローテーションなのだ!」

 私たちは思い思いのお酒を選んで飲んでいった。いやあ、大変よいところだ。へべれけ、へべれけ……。

 もちろん、お酒しかないわけじゃない。お金を出すと、おつまみのようなものも購入できる。エルフの土地ならではの珍しい酒のさかなが各種揃っていた。

「この豆のエルヴィン漬けってしょっぱいのだ。でもお酒にはいいのだ」
 フラットルテが食べているものの味は、この土地の豆をしょうゆっぽいものにつけた味である。

 そういえば、エルヴィンというのはしょうゆみたいな味のソースだったな。ちょこちょこと和の要素に近いものがエルフの世界には見え隠れする。

 日本も山が多い土地だった。つまり森も多かった。もしかして、エルフの世界と国土が近いせいなんだろうか。さすがにそれはこじつけかな……。

 ちなみにシャルシャとファルファはパンを買ってきて、酒の肴各種をパンに載せて食べていた。
「これ、パンとよく合うよね~」
「どの料理も、まるで魔法のようにパンがほしくなる。傾向として塩気が多いが、それがパンの上だとちょうどいいものになる」
 これは、酒の肴がごはんのお友としても力を発揮する的な現象なのでは……?

 日本でも漬物はお酒にもごはんにも合ったし、そうおかしなことではないんだろう。

 なお、サンドラは食事はしないので、ひたすらお酒を飲んでいた。飲みすぎではという気もしたが、本人は平気らしいので、止めなかった。

「エルフの土地っていいなあ。これなら、ハルカラには二か月に一回ぐらい里帰りしてもらってもいいかも……」
 おなかがふくれたら、酔い覚ましも兼ねて、資料館エリアも見学する。フラットルテはやっぱり説明を読み飛ばしまくって、ライカはじっくり読んでいた。
 ただ、お酒を実際に作っている様子も見られるようになっているので、そこはさすがにフラットルテも興味深そうに眺めていた。

 ちなみにライカは施設の公式ブックみたいなものを買っていた。本当に真面目だな……。
 フラットルテはお酒そのものを家で飲む用に買っていた。当初の予定より散財している気がするが、旅行でぱーっと使うのは普通なことなのでいいだろう。

 リフレッシュにはちょうどいい環境だ。本当に一日中いられると思う。
 実際、もう夜になりかけていた。
「私、年間フリーパスがあったら買っちゃいそう……」
「アズサ様、そういうのも一万五千ゴールドで買えるそうです」

「うわあ……本当に買うか悩むな。そこは我慢するか……」
「さてと、そろそろ宿に戻るべき時間かもしれませんね」
 やはりライカはよく気配りのできる子だ。

「だね。ハルカラのお仕事ももう終わってるかな。…………夕飯をみんなで食べるにはおなかがふくれてるんだけど」
「ご主人様、もう一杯だけお願いします!」
 フラットルテは完全にはまっているな……。

「わかった。じゃあ、もう一杯だけね。私も行こうかな、飲み納めに……」
 そして列に並ぼうとしたところで、ふっと見慣れた後ろ姿を見た。

 あれ、ハルカラっぽい人がいるような……?
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