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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ハルカラの里帰り編

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261 鍋をつつく

「冷静に想像してください。わたしよりいいかげんでテキトーな人ばかりが周囲にいるんですよ。そんなところで暮らすの、まあまあストレスたまるんですよ……」
 どうにも情けない告白だが、本人にとっては深刻らしい。

「しかも、わたしがまだ一番まともだから、とばっちりが来るんです! お兄ちゃんの忘れた弁当、過去に何度も持っていきましたからね! 住民税とかの支払いも納付期限のギリギリまで放っておくから、わたしが行ったこともあります。そういうの、親がやってよねと思いません?」

「あなた、大変だったのね……」
 サンドラが腕組みして、うなずいていた。
「私、これまでエルフは草を好き勝手に扱うからいけすかないと思ってたけど、あなたには同情するわ……」
「同情、感謝します」
 そこは感謝するんだ……。

「なので、わたしが以前工場をこっちでやってた時の貯金もあるはずなんですが、自由に引き出せないようにしてます。こういう家族に金だけ与えると、何をしでかすかわからないんで。悪い人間ではないので、悪用はしようと思いますけど、しょうもないものを買います」
 すっごく、想像がつく。
「たとえば、ヘビがいないのに、ヘビを入れるツボを買うとか。家族が幸福になるツボを買うとか」

 こっちの世界でも、霊感商法みたいなのあるのか……。魔法が実在する世界だからこそ、ややこしいな……。

「ハルカラ、あなたが工場を経営できるような人間に育ったわけがわかったよ」
 実家に来て、ハルカラのルーツを見た気がした。
「あなた、家では思ったより真面目にやってたんだね……。だから、経営者もやれたんだ……」

「そうなんですよ、お師匠様!」
 ハルカラが抱きついてきた。おいおい、抱きつくほどのことじゃないだろと思うけど、まあ、これぐらいならいいか……。
「子供心に『わたしぐらいはしっかりしないと、この家族、一家離散とかするぞ』って思ったんです! お父さんも仕事のミスとか多くてちょくちょくクビになりますし、お兄ちゃんはそもそもずっとバイト生活ですし! みんな、ふわふわしてるんですよ!」

 どの家庭にも、それぞれの事情や悩みがあるものだなと私は思った。
「とにかく、みんな、隙が多いんですよ。しかも、家族がみんなそうだから、誰も直そうとしないわけですよ! ミスをしてもごめんって言ったら全部許される家庭なんですよ! 家族がよってたかって相互にみんなを甘やかしてるんです!」

 ぽんぽんとハルカラの背中を叩いた。
「苦労してたんだね、あなたも」
「わたしも同類と言えば同類なんですけどね」
 その点は認めるんだな。

「このあと、家族が帰ってくると思いますけど、そこで本領が発揮されるでしょう。覚悟しておいてくださいね」
 一時間後、お母さんより先にハルカラ兄が帰ってきた。こちらもまだまだ若く見える。けっこうイケメンだけど、全体的にチャラいというか、人生を深く考えてないキャラの印象がある。

「あっ、ハルカラ、帰ってたんだ」
「お兄ちゃん、今は何の仕事してるんですか? 前はバスターミナルのスタッフのバイトでしたよね?」
「ああ、あれはクビになったわ。違うところにお客さん、何度か誘導して怒られたの。それで、町でチラシを配るバイトしたんだけど、こっちもほかの奴と比べてノルマが低かったのと、きれいな子を見かけるたびに話しかけてったら、普通にクビになった」

 その話を聞いていたライカがどうしようもないバカを見る目で、ハルカラ兄を凝視していた。これはライカが一番嫌いそうな男のジャンルだ……。

「今は喫茶店のバイトしてる。でも、店長に全然信頼されてないっていうか、嫌われてるのを感じるし、いつまでもつかな~」
「あの、いいかげん定職についたらどうですか? 彼女にも定職つけって言われてたでしょ?」

「あいつとは別れた。というか、フラれた。見た目がチャラいのはいいけど、生き方がチャラいのは我慢できないって。生活力がなけりゃ、顔がよくてもダメだってさ」
 理由がせちがらい。
 ここ、ファンタジー世界なのか……? 実はみんな二十一世紀の東京二十三区の住民ってことはないよね……?

 そのあと、お母さんが帰ってきて、料理にとりかかった。それから今度はハルカラパパが帰ってきた。この人も家庭を持ってるにしては若く見える。エルフが長命なことも家族として見るとよくわかる。

「おお、ハルカラか。いやあ、上司に何度もダメ出しされて嫌になっちゃうよ」
「まさか、パワハラじゃないですよね?」
「いや、父さんが帳簿の数字を思いっきり間違えて、他社に迷惑をかけたせいだ」
 弁解の余地のないやつ!

「このままだと、ボーナスも出ないよなあ、いやあ、大変だ。はははっ」
「はははっ」ってノリじゃないぞ。

 そうか、ハルカラが毒キノコをうっかり入れちゃうノリで、このハルカラパパも帳簿の数字を間違えたのだろう。

 妹さんは帰りが遅いらしいので、ハルカラを含んだ家族四人と私たちでごはんをいただくことになった。

 ちなみにごはんは鍋料理だ。沸騰したスープの中に野菜をどんどん入れていくスタイルで、味付けもどことなく和風に近い。

「アズサさんでしたっけ。妹は頭はいいんですけど、チェックとかをろくにしないんで、キノコとか食べる時は気を付けたほうがいいっスよ。毒キノコが入ったままになってることがあるんで」
 ハルカラ兄、ちゃんとハルカラの弱点をわかっている。さすが家族!

「実際、毒キノコでひどい目に遭ったことが何度かあります……」
「やっぱりっスか。俺たちも一度、毒キノコで家族、全滅しそうになったことあったよな。なあ、親父?」
「ああ、あの時は家族揃って、トイレの奪い合いになったよなあ。はははっ」
「あれから三年はキノコを食べようと思わなかったわよね。ふふふっ」
 両親はちょっとした笑えるエピソードとして扱っているけど、かなり重いやつだぞ、それ。

 でも、いいかげんな家庭だけど、こうやって鍋を囲んでいる様子を見ると、みんな楽しそうでそれなりに満たされているようにも感じるから不思議だよね。
 経済的にも、社会的にも成功してるけど、家族仲が冷めてるところなんてたくさんあるはずだ。
 それと比べると、もしかしてこの一家のほうが幸せなのかな?
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