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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ハルカラの里帰り編

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258 ハルカラの故郷へ

「しかも……よりにもよって、わたしの生まれ故郷の町です……」
 ハルカラの顔がいつにも増して暗い。

 故郷ににしきを飾るからいいじゃないかと言いたいところだが、ハルカラの場合はそのへんの事情が複雑なのだ。

「あなた、たしかフラント州のそこから追い出されるような形で放浪して、ここに来たんだよね?」
 こくこくとハルカラはうなずいた。
「そうです。誤解だったとはいえ、ベルゼブブさんに命を狙われてると判断した地元から、退去させられました……。そりゃ、町や国ごと報復を受ける危険もあると思ったからしょうがないでしょうけど、わたしとしては、そりゃ楽しくはないですよね」

 だよなあ……。
 いわばハルカラの生まれ故郷は、ハルカラが魔族の大物ベルゼブブに恨まれてると判断した時点で、とっととハルカラを生贄に差し出すことを選んだのだ。
 証拠が出てくるまでは引き渡さないとか、あくまでうちの国の法律で裁くとかいって、ハルカラを守ることをしようとはしなかった。

 そういう姿勢をとっていれば、ベルゼブブがハルカラが恨んでいたというのは誤解だったとわかって、ハルカラがさまようこともなかっただろう。

 魔族の襲撃を守るための苦肉の策だったのかもしれない。でも、ハルカラが不信感を抱いているのは、問題が解決しても地元に帰らずに高原の家にずっと住み着いていることからもわかる。

「エルフの長老格、善い枝侯直々の書類ですね。ったく、よくもまあわたしに新工場作りませんかなんてオファーを出せるものですね。一応、前回はこちらの早とちりだった。ごめん、ごめんって書いてますけど」
 そこは大人の対応で、ちゃんと謝罪はしているらしい。

「昔のことは水に流して、地元に工場をまた建ててくれませんか、地元には以前に働いていた従業員もいますし、効率もほかの町よりいいはずです――だなんてことが書いてます。やはり思うところはありますが、このあたりは一理ありますね……」
 経験者がすでにいるというのは、経営者側からしてもメリットだ。

「工場建設の有無は別としても、久しぶりに地元に帰ってきてはどうですか――なんてことが書いてますね。はあぁ~~~~~~~~」
 ハルカラは長い、長いため息をついた。
 それから、しばらく黙った。

 内容がプライベートなことなので、私としてもうかつなことは言えない。この世界に故郷がない私には何か言う資格もない気がする。

「まっ、一度、里帰りしましょうか」
 さばさばした表情でハルカラは言った。
 それから、いつものゆるい笑みを浮かべた。
「それに、選んだところに視察には行くと言っちゃいましたしね。約束は守ります」

「わかった。これはハルカラが決めることだから、私は何も口出ししないよ」
「というわけで、どうせならみんなで故郷に帰りたいと思うのですが、いかがでしょう? お師匠様たちにとったら旅行気分で来てもらえればけっこうです」

 楽しい帰省とは意味が違うわけだし、家族総出で行くことでハルカラの緊張がやわらぐなら、それにこしたことはない。
 多分、娘たちも旅行は単純に喜ぶだろうし。

「うん! じゃあ、みんなでフラント州に行こうか!」
「ありがとうございます! それではその旨を返信しておきますね!」

 そのあと、ほかの家族に私から事情を話したけど、誰も反対することはなかった。
 唯一の懸念材料があるとすれば、マンドラゴラのサンドラはだ。
 サンドラは調薬師も多いエルフの土地があまり好きではないようだったけど、
「水をくれる人がいないと困るからついていくわ」
 と、例によってツンデレな態度で同行することになった。

「お前なあ、動けるんだから、絶対に水ぐらい入れられるだ――むぐっ!」
 フラットルテが正論を言いそうになったので、私が手で口をふさいだ。
 こういう時、サンドラは絶対に「行きたい」と素直には言わないんだよな。でも、そういう性格の子がいてもいい。ちゃんと受け入れるよ。



 私たち家族はライカとフラットルテという二人のドラゴンに乗って、フラント州を目指すことになった。
 私はライカに乗っている。後ろにはファルファとシャルシャの二人がいる。

「フラント州は森の州と呼ばれている。州の大半が森で、人口の八割がエルフ。そのエルフの土地が通称、善い枝侯国」
 空の上で、シャルシャがフラント州の説明をしてくれる。

「ちなみにエルフの町って、人間の町とどこか違いってあるの?」
「エルフは石造りの家やレンガ造りの家にはあまり住まず、大半が木造」
 そりゃ、森の中に住んでるなら、エルフじゃなくても木で建物を作ろうとするよな。

「食生活は人間とも共通する部分もあるが、エルフ独自の郷土料理もある。ただし、それなりに高度なので、最近のエルフたちはプロの料理人以外はまず作れないらしい」
「ありがとう、シャルシャ。なんとなくイメージが湧いてきたよ」

「それと、伝統的なエルフの住居では、靴を脱いで中に入る。これは靴が泥で汚れやすい土地に住んでいるからだとも言われている」
 そのあたりは日本ぽいな。

「シャルシャちゃん、着陸しやすい場所はあるでしょうか?」
 ドラゴン姿のライカが尋ねる。
「森がどこまでも続くような土地だと我は着陸ができませんので。地図が手元にあるならご確認をお願いいたします」
 ドラゴンは飛行機のようなもので滑走路的なスペースがいるのだ。

「ライカは弱虫だな。フラットルテ様なら森の中でも強引に着陸できるぞ。昔はブルードラゴンの間でいかに危険な場所で着陸できるかの度胸試しをしたものだ!」
「そんな、チキンレースみたいなこと、絶対にしちゃダメだからね!」
 フラットルテの側に乗ってるハルカラとサンドラが死ぬ!

「ご主人様、大丈夫です。今日は安全運転を心がけてます。お酒も飲んでません」
 よしよし。それならよろし――

 フラットルテがライカより前に出た。
「へへーんだ。フラットルテ様のほうがライカより速いのだ!」
「速さを競うのもダメ! 事故の元だからやめて!」
 もし、日本で人間として生まれてもフラットルテは走り屋になると思う……。

 さて、着陸場所のほうだが、シャルシャが地図をぱらぱらとめくっていた。
「フラント州が見えてきたら、西のほうに川が流れていて、付近に平坦地がある。その近くにエルフの町に向けた馬車が出ている町がある。そこに馬車ターミナルもあるらしい」
「わかりました! ありがとうございます!」

 目的地もはっきり決まったな。
活動報告に、12日発売のコミカライズ1巻の情報や、もろもろご報告を追加で書きました。GAノベル5巻ともどもよろしくお願いいたします!

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