挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ハルカラの里帰り編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

259/282

257 新しい工場の場所

今回から新展開です! コミカライズ発売日の12日(ほぼ同時にGAノベル5巻も出ます)が迫っているので、少しの間、毎日更新にチャレンジしたいと思います!
 ある日の夕食後。
 ハルカラはダイニングのテーブルで、やたらと書類を真剣に読んでいた。
 これは経営者の顔だな。いつもはいいかげんなように見えても、この子はハルカラ製薬の社長なのだ。

 これが下っ端社員なら仕事を家に持ち帰っているような状態だからよくないけど、社長が大きな問題に頭を悩ませるのはしょうがないので、そこは大目に見よう。
 過労死も基本的に使われる側の人間に起きるものだが、あれは仕事をやらされる側と好きでやっている側(つまり、経営者側)ではストレスの量が全然違うかららしい。

 そりゃ、好きでやっていることならストレスも小さくなるから、リスクも減るのだろう。それで睡眠時間を削りまくればもちろん健康面に悪影響が出ちゃうからダメだけど。

 頑張っているようなので、キッチンでお茶を作って持っていってあげた。
「はい、ハーブティーをどうぞ。ずいぶん、熱を入れてるね」
「あっ、お師匠様、ありがとうございます。大きなプロジェクトになる仕事なんで、家でじっくり考えようと思いまして~」

 お茶を出されると、ハルカラはまたいつもの、のほほんとした顔に戻る。

「ちなみに、どんなプロジェクトなの?」
「今の工場も軌道に乗っているので、そろそろ本格的にほかのところで第二・第三の工場を作ろうと思ってるんですよ」
「なるほど。それは大きな話だね」
 工場を作るとなると、莫大な額のお金がいるし、規模が大きいとリスクも大きくなる。赤字続きになったらシャレにならない。慎重さは求められる。

「すでにいろんな町のほうから、新しい工場を作りませんかというオファーが来てるんですよね。なので、そういう資料を集めて、検討を開始しているんです」

 そのあたりは世界が違っても同じだな。
 儲かっている会社の工場ができれば、町の雇用も増える。税収も増える。いいことだらけだから、そりゃあ、ぜひとも我が町にと言い出すだろう。

「数が多いので、今はまず書類審査の段階ですね。条件に難があるものをはじいていきます」
「なんか、アイドルオーディションみたいだな……」
「たとえば、この町は近くにいい街道が通っていないので輸送コストがかかりすぎます。そっちの町は水質が向いてないんです。『栄養酒』その他にはほどほどに硬水でないといけないんですが、軟水なんですよね」

 おお……見事な仕事モードだ……。
 ぶっちゃけ、社畜であっさり過労死した私なんかより、社会人としては今のハルカラのほうがはるかに偉い。なので、とくに言えることはない。

「まあ、いざとなったら、『どれにしようかな。森の精霊の言うとおり』で決めますからいいんですけどね」
「雑! そんなの運任せにしていいの!?」
 オファーを出してる町の側が聞いたらショックを受けるぞ。

「とはいえ、こういうのって一種の履歴書じゃないですか。つまり自己アピールばかり書いてて、欠点は書いてないわけですよ。どこかに決めても実は重大な問題があるなんこともないとは言い切れないんで」
「最後は運の要素が消せないってことか。そりゃ、三十箇所に同時に工場作って、選抜するわけにもいかないしな」

 これが日本のコンビニみたいな規模なら、片っ端から作って、不振だったら切り捨てるみたいなこともできるだろうが、工場となるとそういうわけにもいかない。

「当然、視察はさせてもらうつもりですけど、それだけふるいにかけても残ったところからは、なかば運試しになりますね」
「言いたいことはわかるけど、ハルカラが運に頼ったら、ろくなことにならなそうだな……」
 数々のピンチを見てきているので、まったく安心ができない。

「ちょっと! わたしは運がいいほうですよ! でなきゃ、工場なんて一年で倒産してますよ!」
「うん……経営手腕はあると思うよ。でも、運は、悪いんじゃないかな……」
 むしろ、まだ本人にそこまで自覚がないことが驚きだ。あれだけひどい目に遭って幸運と思えるって、ある種、ものすごくポジティブなのかもしれない。
 だったらいいことだな。成功する人の秘訣にも「ポジティブであること」が含まれていた気がする。そういうの前世のライフハック記事で読んだような。いや、でも、注意力はもっと高いほうがいいでしょ……。

「まだお師匠様は信用なさらないようですね。ならば、わたしが運がいいことを証明してみせましょう!」
「どうやって証明するの?」
 運のよさを測定する道具でもあるんだろうか。

「今から目をつぶって、このオファーの書類から一つ選びます! それがいい条件のものだったらわたしの勝ち、悪いものだったらお師匠様の勝ちです!」
「なんで勝負みたいになってるの!?」

「弟子はいつか師匠を抜かなければいけないものなんです!」
「いや、あんまり師匠の自覚もないけどね……。あなた、もともとプロだったし……」
「あと、その書類のところには絶対視察に行きます。きっと、そこで即決できるぐらい、素晴らしいものでしょう!」

「そのあたりのことは、ハルカラの好きにやって……」
「とにかく、いきますよ! 何が出るかな、何が出るかな、何が出るかな~♪」
 なんか歌い出した……。
 なぜか私の脳内にはサイコロを転がす人の光景が頭に浮かんだ。

 ハルカラは目を閉じて、書類をがさがさ探し出した。
 カタッという硬い音がした。
 私の入れたハーブティーのカップに手がぶつかっていた。
 湯気の出ているお茶がハルカラの手にかかった。

「あつつつつつっ! こんなトラップがっ!」
「すでに不運じゃん! 不運確定じゃん! やるまでもないよ!」
 自分でルール決めて、勝手に火傷してるし……。論外だろ……。

「いえ、今のはノーカウントです! 何が出るかな、何が出るかな、何が出るかな~♪ いけ~! これですっ!」
 そしてハルカラは書類の中から一つを選び取った。

「さあ、どんないい町ですかね。ええと、町の名前はと――」

 ハルカラは名前のところを確認した。
 そして、小さな声で「げっ……」と言った。
 どこかわからないけど、その声が出た時点で、私の勝ちだな。

「フラント州のえだ侯国ですね……。王国内部にある小さなエルフの国家で……わたしの生まれたところです……」
「ハルカラってフラント州出身だったよね」
 この場合の侯国というのは、近代の国家とは意味が違ってその領主が治めてるところ程度の意味だ。
「しかも……よりにもよって、わたしの生まれ故郷の町です……」
11日になりました! 12日にはコミカライズが出ます! 詳しい特典情報の詳細は活動報告に書いてあるURLをご参照ください!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ