挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

スライム使いライカ編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

250/279

248 ついに決勝

 大会前までまったく注目されてなかった(だって、そもそも存在してなかったし)謎のスライム使いライカは危なげなく勝ち続け、ついに決勝までコマを進めた。

 勝っていくうちに人気も出てきたのか、「ライカ、頑張れー!」という声も聞こえてくる。全体的に男の声が多い。
 どうやら容赦のないスライム使いだということだけじゃなく、ライカが美少女だということにも意識が向きだしたらしい。

 こうなると現金なもので、「あの冷静なところがかっこいい」「反則なんて何もしてないからな。それを文句言う奴がいたら、そいつのほうがおかしいんだ」と、ハメ技も肯定されていった。ライカが悪く言われる不安はもう消えた。

 やっぱり古今東西、かわいいということは強いらしい。もし、これで見ただけでぞっとするような容姿の人間が同じスライムを使っていたら、絶対評判はもっと悪いだろう。

「ブッスラーの奴、きっと準優勝までが確定して、喜んでますよ。かなりの賞金がもらえますからね」
 フラットルテは売店で鶏のから揚げみたいなのを買ってきて、つまみながらしゃべっている。
「ああ、準優勝でも儲かりはするよね」
「ですが、その気のゆるみが負けにつながることもありますよ。決勝ともなると、敵もなかなかやるはずですから」
 決勝まで、この調子でハメ技だったらつまらないしね。

 そして、決勝の時間となった。
 ライカというかブッスラーさんの敵は全身フルプレートの剣士だった。

「ワシは人呼んで血染めの甲冑こと、この州最強の剣士ドムレミだ! スライムの攻撃程度、この高額な甲冑の前では無力! こけることなどありえん! 仮にこけたとしても、甲冑は重いから下段攻撃で浮かされることもない! よって、キックで浮かして、無防備になってるところをキックしてまた浮かすという連続攻撃は不可能!」

 観客からも「そうか、こけなきゃ大丈夫だ」「これはスライム使いもピンチだな」といった声がする。いや、ハメ技以外にも何かあるでしょ。

「しかも、この武術大会、刃物の使用は禁止だが、出場者本人以外にはどんな攻撃も可能! つまり、スライムには木の剣ではなく、鋼の剣で攻撃できるのだ! どうだ! ピンチだろう!」

 げっ……。これ、ブッスラーさん、下手すると大ケガするんじゃ……。

「さあ、ブッスラーはどうするかですね」
「ブッスラーさんってあくまでも武道家だよね。じゃあ、パンチやキックを繰り出して戦うしかないでしょ。基本は変わらないと思うよ」
 なんか、どうしても連続下段キックばかりが目立ってしまっているが、ようはキックで敵にダメージを与えているからこそ決まるわけで、そこは日々の修練で鍛えている成果のはずだ。

「私が出場した武術大会でも、ブッスラーさんはまともに戦ってたはずだし、私に弟子入りしたいって言い出したぐらいだし、武道家としては真面目だよ。お金にもうるさいけど」
「ということは、ようやくブッスラーの武道家としての本質が見られるというわけですね。さあ、しっかり見させてもらいましょう」

 ああ、これまでは実力もよくわからなかったもんな。
 ベルゼブブの弟子になってブッスラーさんがどれほど強くなったかわかるいい機会だ。

 敵方のドムレミという剣士がごちゃごちゃ弁舌を振るった一方で、ライカとブッスラーさんは黙して語らない。ライカはこれまで同様腕組みしたままだ。
 もう、何をするかは決まっているということか。

 審判が試合開始を告げる。

 ブッスラーさんはぴょんぴょん跳ねて、甲冑剣士のほうに寄っていく。
 移動方法がいまいち間抜けだけど、距離を詰めているわけだから、やる気だ。

 激しい戦いになるかとみんなが固唾を呑んで見守る。

「スライム使い、悪いがお前のスライム、真っ二つにしてやるぞ! てぇぇぇい!」
 甲冑剣士ドムレミが剣を振り下ろす。

 ぴょーん。
 また、どこか脱力するような音とともにブッスラーさんのスライムは跳ねて、これを回避した。
 否、これは回避ではない。
 そのまま、甲冑のほうに突っ込んでいく。

「突撃か! やはり武道家だ!」
 私も思わず声を上げた。

 だが、ちょっと様子がおかしかった。
 そのスライムの体がするすると甲冑の隙間から中に入っていく。

「あれ、あれ……? なんだ、これ……」
 やがて、スライムの体がすっぽり見えなくなったあたりで、甲冑騎士が苦しみだした。

「うっ……息が……息が……あっががががが…………」
 そのまま甲冑騎士がばたりと倒れた。

 そして、甲冑の隙間からまた、うにょうにょと形状を変形させながらブッスラーさんのスライムが出てきた。

 審判が呆然としつつも、ライカの勝利を宣言した。それに合わせて、会場からも歓声が上がっている。

「なるほど。ブッスラーはおそらく騎士の顔にへばりついて、呼吸困難にさせましたね。見事な作戦勝ちです」
 フラットルテはやるじゃないかという顔をしていたけど、私は納得いってなかった。

「武道、関係ないじゃん!」



 十日後、人間の姿に戻ったブッスラーさんはやたらと高そうな服を着て、高原の家にやってきた。首にもなんか高そうな毛皮みたいなのがついている。

「いや~、その節はライカさんにお世話になりました。おかげさまでなかなか儲けさせていただきました。あっ、これはつまらないものですが、純銀のスプーンセットです。よろしければ、お納めください。はっはっは~」
「武道家として、世俗に染まりすぎでしょ!」

 一方でライカのほうはいつもと変わらず、真面目な顔をしている。
「ブッスラーさん、また特訓に付き合っていただけませんか?」

「あ~、でも、高級なフルーツ盛り合わせも持ってきたんで、それを食べながらお茶でもどうです? 特訓はそのあとに五分ほどやりましょう」
 ダメだ! 表情がもう道を志してる顔をしてない!

「私には座右の銘があります。『金を求めよ、さすればおのずと力も手に入る』」
「かっこよさそうに言っても、最悪だ!」

 もしライカがブッスラーさんに弟子入りしようとしたら、その時は全力で止めよう……。
スライム使いライカ編はこれでおしまいです。次回から新展開です!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ