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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

スライム使いライカ編

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247 スライム使い、やっぱり強い

 そのあとの予選二試合も似たような感じで、ブッスラーさんは下段を攻撃して、浮かせてその間に攻撃を立て続けに決めるという戦法を繰り返した。

 三回戦の相手などはすでにこの攻撃をしてくるとわかっていたので、最初からしゃがんで、攻撃に備えていたが――

「うっ……スライムでは、そもそもどこが足かわからん! 気配も読めん!」

 それはそうだよなあ……。だいたい、足って概念があるのか。ブッスラーさんは腰を痛めたらしいから、足もあるのかもしれないが。
 防御のしようがないまま、その対戦相手もあっさりと下段強キック? の餌食になっていた。

「なんだ、あの選手……」「これまでにないジャンルだな……」「新星登場か?」
 観客席に座っていた武術大会マニアみたいな人たちがそんなことを話していた。なんと、本人がまったく戦わずにすべてスライムにやらせるというスタイルだからね。おそらく武道家ではない。



 あとで合流したが、ブッスラーさんはなかなか意気盛んらしく、その体を動かしていた。ただ、あまり人前ではしゃべらないが。

「『今日はスライムらしい攻撃がしっかりとできた。後ろに下がることなく、休まず前に出ることができた。明日もこの調子でいきたい』とブッスラーさんは話していました」
 通訳をライカがする流れになっている。

「あれってスライムらしい攻撃なんだろうか……。ところで、夕飯はどうする? スライムの姿だと普通の食事はできないよね?」
「『明日に備えて、今日は早めに寝て、コンディションを整えたい。一戦一戦全力でやりきるだけ』と先ほどブッスラーさんが話していました」
「いい言葉なんだけど、スライムの形状で言われてもいまいち説得力に欠ける……」

 その日は一度、スライム状態のブッスラーさんを宿に置いてきて、食事に出かけました。
 ブッスラーさんは、部屋のほこりとか道端の砂などから栄養を吸収したらしい。もし、人間の姿でそれを食べさせたら虐待でしかないが、本人がやってるので別に構わないだろう。元がスライムなので抵抗もないのだと思う。

 なかば部外者の私はとくに緊張もなく、宿のベッドでごく普通に寝た。ブッスラーさんは緊張して寝れなかったのかどうか、スライムなのでよくわからなかった。大会には慣れているだろうし、寝たと思う。

 そして、本選当日。
 三十二人のトーナメント戦だ。この日は観客席も満員になっている。大半は今日初めてスライム使いを見る人たちだ。

 スライム使いということになっているライカが登場すると、今日も会場がざわめいた。「なんだ、あれ……」「スライムがいるけど……」「もしや、スライムが本体でそっちを倒さないと永遠に復活する的な奴か?」

 いや、そんなボスキャラみたいな設定はないよ。

 この日のトーナメントでも、ブッスラーさんは凶悪だった。とにかく触手なのか鞭なのかわからないような突起物を出して、下段攻撃を繰り出し、相手がバランスを崩したところを、集中的に攻撃してKOしていく。
 もし、これが格ゲーだったら絶対嫌がられるだろうけど、勝利にこだわるなら正しい戦術だな。これなら、まず負けることはない。
 なお、その後ろでライカは腕組みして、じっとブッスラーさんを見守っているので、オリンピック選手のコーチ感がある。いや、スライムのコーチとかおかしいだろと思うが、そういう空気は出ていた。

「結局、あの少女は何者なんだ?」「角生えてるから、ドラゴン族なのか?」「だったら自分で戦ったほうが強くない?」

 おっしゃるとおりです。
 かといって、ライカはこの武術大会で腕試しをする気持ちはなかっただろう。
 おそらく、実力的にライカが本気になったらこんな大会の参加者では勝ち目がないのだ。なにせドラゴンだしね……。

 しかし、さすがは本選トーナメント。ついにブッスラーさんの攻撃に耐えられる選手が出てきた。
 相手は背が低いドワーフの選手だった。
「ふん! 下段ガードはワシは得意じゃ!」
 そのドワーフは小柄なのでたしかに足を狙われても防ぎやすい。鞭みたいなブッスラーさんの攻撃を毛むくじゃらの手でパチン、パチンとはじいていた。

「おっ、ブッスラーもこれではどうしようもないな。さて、ブッスラーはどうするのかな」
 フラットルテは名前のごとく純粋にフラットに観戦してるな。

 ライカもどうしようかなという顔をしていたが、あくまでも戦うのはブッスラーさんだ。
 すると、ブッスラーさんのスライムの鞭みたいな部分が一気に長く伸びて、ぐるっとドワーフの真後ろに回り込んだ。
 で、後ろから下段キックを繰り出した。

「そんなの、ありかよっ!」とドワーフが叫んだが、気持ちはわかる。あんなに体が伸びるとか思わないもんな……。
 あとはまたバランスを崩したところを下段キックの連続で攻略するだけだ。ドワーフがギブアップを宣言したところで、ハメ技は終了した。

「あのスライム使い、非道だ……」「勝負に勝つこと以外何も考えてないわ……」「ルール上はアリだけど、ちょっと……」「勝負の鬼だな……」「かわいい顔して、とんでもない奴だ……」

 なんかライカの評判、悪くなってるんじゃない!? まあ、テレビで全国中継されてるわけではないし、影響は知れてるとは思うが、これでいいのだろうか……。

「ご主人様、ライカの人気が落ちるんじゃと懸念してるようですけど、それは気にしなくていいですよ」
 フラットルテが私を安心させるように声をかけてきた。
「だって、フラットルテが武術大会に出てもあれぐらい徹底して戦いますから。人気取りのために手を抜くなんてことをするわけないですし、勝負の鬼と言われたらむしろ喜びますよ」

「あっ……」
 言われてみれば、そうだ。ライカはとにかく意識が高いのだ。自分を高めることが第一目標であって、他人にどう見られているかなんてことは二の次だ。
 仮に本当にライカがスライム使いで、スライムに攻撃命令を行ったとしても、同じようなことをさせるだろう。

「やっぱり、同じドラゴンだね。フラットルテ、ライカのこと、よくわかってるね」
 私がこう言うと、フラットルテはやりづらそうに目をそらした。
「あのライカが単純なだけです……」

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