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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

地方の婚活パーティー?編

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244 最高の結婚式

 ファルファがメッセージカードのようなものを取り出した。

「シャルシャへ。シャルシャがファルファをお姉ちゃんだって言い出したのはいつ頃だったかな。もう、ずっと前のことだから思い出せないよね。シャルシャは昔から一途になりすぎるところがあって、それしか見えないところがあるんだよね。なかでも、ママを倒すって言い出した時は、とってもびっくりしたよ」

 ああ、これは姉から妹への手紙だ。
 シャルシャはうつむいたまま、涙をうっすらにじませている。

「でもね、シャルシャがママのところに攻め込んだりしなかったら、二人とも森の中でひっそり暮らしてるだけだったかもしれないよね。シャルシャが幸せを届けてくれたって、ファルファは信じてるよ。これからもよろしくね。ファルファより」

 ベルゼブブが声を上げて、泣きまくっていた。ここまで冷静じゃないベルゼブブは初めてかもしれない。

 今度はシャルシャがメッセージカードを出す。

「姉さんへ。シャルシャはいつも姉さんに見守れていたんだなと、ふっと思う時があります。おそらく、これまで生きてこられたのは姉さんのおかげです。恩返しの方法はわからないけど、それでも一緒にいたいです。よろしくお願いします。シャルシャより」

 シャルシャのメッセージカードはファルファと比べて短いな、性格出てるなと思ったら、不意打ちが来た。

「それと、ここで読むのはおかしいんだけど、母さんへ。過去にはいろいろあったけど……母さんの娘でよかったと思ってます……ありがとう……これからもふぇんひで、いふぇ……」
 シャルシャは、最後のほうはもう嗚咽でしゃべれてなかった。

 でも、私も同じぐらい泣いていたからおあいこだね。

 娘の成長をこういう場を借りて知ることができた。
 ありがとうって言われたけど、こちらからもありがとう。
 ありがとう、姉妹結婚式。ありがとう、ミスジャンティー。

「素晴らしいごあいさつでしたっス。では、誓いの証しとして、お互いにほっぺにキスをお願いするっス」

 姉妹だし、ほっぺだから抵抗も小さいのか、二人はそこは戸惑ったりせずに、ちょこんとキスをした。
 まず、ファルファからシャルシャに、続いてシャルシャからファルファに。

「シャルシャ、ちょっと塩辛いよ」
「涙のせい。スライムの精霊といえども、塩分は涙で分泌する」

 シャルシャもこれだけ泣いては涙を隠すことはできない。

「ご来場の皆さん、お二人に盛大な拍手をお願いするっス!」
 私はできるだけ力強く手を叩いた。

 でも、もう一つ仕事が残っていた。
 ファルファとシャルシャがまた私の両側にやってくる。

「ママ」「母さん」
 二人が上目づかいで私のほうを見ている。なぜか、司会者のミスジャンティーも楽しそうだ。

「この誓いのキスはお母様にもお願いいたしますっス!」
「ああ、そういうことね……」
 前のほうでは、「きゃー! お姉様! 破廉恥です!」とか「くそー! うらやましいのー!」と魔族の王と大臣がなんか言っている。

 私も恥ずかしさがないわけじゃないけど、これは大事な式典だしね。

「それじゃ、お願いします」
 二人からほっぺにキスをもらった。
 私もいつまでも、二人の母親であり続けないとね。
 立派な母親になれるよう、精進します。

 ぱちぱちぱち。大きな拍手が鳴り響いた。
 娘のウェディングドレス姿が見たいという魂胆でやったイベントだけど、私まで涙ぐんでいた。

「これで私の松の精霊としての仕事は終わりっス。立会人はしましたっスけど、結局は二人が仲良く、末永くやっていけるかどうかは、二人にかかっているっス。もし、ケンカするようなことがあったら、その時は今日のことを思い出してほしいっス。今日、二人が相手を思いやっていたという事実は誤りではないっス。精霊として保証するっス」
 ミスジャンティーが上手に締めた。

「引き続き、お食事を楽しんでほしいっスが、その前に二人に渡しておきたいものがあるっス。まっ、記念品っスね」
 ミスジャンティーがファルファに渡したのは、松の小さな苗木だ。

「よかったら、これを家の近所にでも植樹してほしいっス。それはそれは立派な木に育つっスよ」
「ありがとう、ミスジャンティーさん! また世界精霊会議で会おうね!」
「はい。その時までには、もうちょっと全国のミスジャンティー神殿の復興を進めておきたいっス」
 ぺこりとミスジャンティーが頭を下げた。
 この松の精霊が長らく仲人のような存在として信仰された理由もわかる気がする。

 私は席を立って、二人のほうに向かった。
「よかったよ、二人とも」
 そっと、二人を腕で包んだ。最高の一日だった。



 そのあと、タジン村も高原の魔女の娘が姉妹結婚式という形で、絆を深めましたといったことが宣伝されて、以前よりは観光客が来るようになったという。ミスジャンティー神殿の参拝者も増えてきたとか。
 村の復興に尽力したと言ってはおおげさだけど、プラスになったのなら、それはそれでいいことだ。

 ちなみにミスジャンティーからもらった松の苗木は家の横に植えたところ――
 三日ほどで大木と言えるまでに成長した。

「いや、精霊の力が宿ってるのかもしれないけど、育つの早すぎるでしょ……」
 私はその大木を見上げながらつぶやいた。自然界の法則をかき乱してないか……。

「何よ、この偉そうな木……。新人のくせに生意気だわ」
 マンドラゴラのサンドラが文句を言っていた。
「植物の中にも新人とか、そういう概念あるんだね……」

「あと……この木、ものすごく栄養を吸い取ってるの……。私が取れる栄養が減っちゃう……。ちょっと移動すれば問題ないけど、本当に迷惑だわ……」
 たしかに、これだけ成長してるってことは地面の養分もいただいてるよね!

 これは、また肥料でも買ってこないといけないかもしれないな……。
松の精霊の結婚式編はこれにておしまいです。次回から新展開です!

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